第11話 生チチもみ放題チケット デュラン編

「…マリーウェザーお嬢様?!

あっ!待って行かないで下さっ…ぶふぅ」


ズサァー!

と後ろの方で盛大にこけた音がして振り向く

こっちの名前を読んでたから知人かな?

(※港町でヴラドとヨシュアとはぐれて迷子中)


手を差し伸べるくらいは、して上げよう

「大丈夫ですか?」


「ウゥゥ…お嬢様やっと会えましたな、この時を待ちわびておりましたぞ」


メソメソ泣いて立ち上がった

ギョッ!思ったよりタッパあるじゃねーか!

ガッシリしてて筋肉質な体だな、戦っても勝てないな、走っても逃げ切れなさそうだし…本当に知り合いかな?


泣きながらこちらを見下ろす目には懐かしさや思慕の念が見て取れた


知り合いで間違って無さそうだな…

と警戒をといたらガバっとそのまま抱きつかれた

「キャッ!?ちょっと!およしになって!」


「お嬢様、私はずっと待っておりましたぞ!

迎えに来て下さると信じてお待ちしておりました…

まさか我を置いて船に乗って旅立つなどと」


「あの、どちら様?」


「そんなっ…お嬢様!私です貴女のデュランですぞ?!我が君マリーウェザー様!貴女様の最初の眷属の首無騎士デュラハンナイト

あ、レベル上がって今は首無暗黒騎士デュラハンダークナイトですぞ!レベル上げしてロードまではまだですが」


「え?ちょっと一旦離れて下さる?ちょっ手を離しなさい!レディに気安くハグしないで下さる?!」


デュラハンナイトだと?

マジかよ!すげーの来たなこりゃ

え?じゃあこのお兄さんの首って取れるやつ?へぇー

ちょっと首抱えて馬に跨る姿を見てみたい


「あっ!思い出した!あなたは長兄コーネリアスの部下じゃない?

コーネリアスお兄様はデュラハンを従えてたのね…そんなこと私にバラして大丈夫なの?

ってかレベル上げの途中?頑張ってね」


「グッ…あやつめ!いい加減な事をぬかしおって、記憶が戻って来てないではないか!

お嬢様は忘れてるだけですぞ

なぜ皆は言わぬのだ、お嬢様は……クソッ

お嬢様…私と共に過ごした日々を思い出して下さい

貴女の側でともに過ごした日々を…もう思い出になってしまいましたが、貴女はそれもお忘れですか?」


そう言って紙束を出して見せてくれた

何の紙だろうとよく見ると


【生チチもみ放題チケット】


「なんじゃコリャ!おりゃ!」


バサッと紙束をはたいた

パラパラと散らばる


「あっ!お嬢様!約束を反故にするおつもりですか!」


「そんなチケット知らん!

いや、確かに私の書いた字っぽいですけど真似ることなど誰にも出来ます

どうして私が生チチをあなたに、も、揉ませるんです?!」


ガタイの良い男が這いつくばってチケットをかき集めてる。

道行く人に踏まれ汚れてしまったのを一生懸命拾って、大切そうに撫でた


デュランは従者の服装をしてる

わがままな貴族のお嬢様と困った従者のあるあるだと思われ、平民の通行人は関わり合いたくないとばかりに遠巻きに見るか、足早に立ち去ってる


デュランにギロリと睨まれビクッとした


「そ、そんな卑猥な偽物のチケットごときで…」


「これは偽物などではない!我とお嬢様の絆そのものですぞ!」


なんか本気で怒ってる?…そんなチケットが絆とか怖っ!

ええ?オッパイもみ放題チケット?

それ本当に俺が作ったの?信じられないんだけど


「あの、本当に知らないのだけど…」


「クッ……はぁー

いつか思い出して下さると信じてます

我は貴女様の一番の眷属ですぞ?何も思い出せませんか?全てお忘れか?」


「わたくしが…忘れてるのね?

デュラハンナイトが眷属だったの?それが本当なら私はデュランを従えてたのね…めちゃめちゃカッコイイやんか私!」

ダンジョンの話をヴラドからしっかり聞いておけばよかった


その時、後ろからドンッ!と衝撃がきた

ぶつかったのではなく抱きつかれたのだと分かるまで一瞬思考停止した


「キャッ……ビックリした、何です?」


見るとこれまたガタイの良い男が後ろから抱きついてきた

そして肩に頭を乗せて呟いた

「母上…お会いしたかった」


ははうえ?母上?……「は?」


デュラン「斬鉄!離れよ!我が君はまだ記憶が戻っておらぬのだ」


斬鉄と呼ばれた男は目に涙をためてうるうるしてる

「母上…僕です!斬鉄です

本当に思い出せませんか?貴女の斬鉄です…ウゥゥははうえぇ」


ポロポロ涙をこぼしてるこの立派な男の子は、高校生くらいかな?

本気の涙が伝わってくる


「泣かないで…それに母上って私の事でしょうか?

私より年上に見えますけど?

貴族の養子縁組でもしてたのかな?

忘れてたらとんだネグレクトだね、思い出せないけど息子なら大事にするよ」


斬鉄ほら泣かないのって頭を撫でたときに既視感が…デジャヴだ

他人とは思えない


デュラン「我の時と態度が違いますぞ!」


「…オッパイチケット持って来るやつと一緒にしないだけだよ…

それに、私はこうやって頭を撫でたことあるでしょ?」


斬鉄「はい…いつも撫でて下さいました

母上は温かいです…母上の匂い好き、忘れた事はありません

母上はいつだって抱きしめて撫でてくれました

旅に出るなら僕も一緒に行きたいです」


既視感はあるけど思い出せない

でも斬鉄と言う息子に懐かれてるのは、養母としては悪くないんじゃないか?


デュランが自分も着いてくるとさも当たり前のように言うから


「オッパイチケット持ってる奴は来なくていいですわ」


デュラン「そんな!姫ぇ!」


今度は姫呼びしてる


斬鉄「母上…父上も連れて行ってくれませんか?」


は?

父上なの?どう見ても兄弟とかじゃくて?

デュラン20歳過ぎくらいの立派な青年に見えるよ?


「デュランが父上なら私が何で母上?意味わからないんですけど?」


デュラン「フッ…本当の事を言うときが来ましたね

我らは夫婦ですぞ、息子の斬鉄の世話を私に押し付けてそたなは出稼ぎに…ゲフッ!」


ヴラド「そんな訳ありませんから!

お嬢様ご心配なく…斬鉄は養子です

デュランと同じダンジョンのモンスターです」


急に降って湧いたヴラドがデュランを後ろから蹴り倒した

斬鉄が「父上!」と駆け寄り起こす

首が外れないか期待したけどしっかりくっついてた

ただ、よく見ると薄っすら線が見えたから外せるかも?とか思った


デュラン「ヴラド!お嬢様は記憶が戻っておらぬではないか」


ヴラド「少しづつ思い出してますが…デュランの存在感が薄かったのでは?」


デュラン「そんな事はない!存在感があるほど記憶が追いやられたのだ!」


それからヴラドに勝手に迷子になるなとお説教されながらヨシュア達の泊まってる宿屋に向かった。

デュランと斬鉄も着いてくるようだ


そして斬鉄の正体が明らかになった…バカでかい漆黒の黒馬だった

デュラハンナイトのが進化して擬人化したらしい

何でも幼少のマリーウェザーが力を与えたとか…


ダンジョンの宝箱からドロップした【死者の書】で俺がネクロマンサーになった時に

アンデット寄りの闇妖精だったデュラハンを死霊術ネクロマンスでテイムしたらしい


何そのファンタジー!

でも人通りがいなくなった路地裏で斬鉄が馬になる様を見せられたから

素直に感動した


「斬鉄!凄いわ!」と頭に抱きついた時に既視感が……

あ、知ってる、斬鉄だ、思い出した!


先日のミザリー嬢が針を刺そうとした俺の愛馬だ!

あのクソアマ!

幼いマリーウェザーが乗ってる馬を刺して落馬させようとした極悪女じゃん!

思い出したら腹立ってきた

確か第二王子アイザックにその事をチクったら、アイザックが王様おとうさんに報告して、大事になってミザリーが退学になったんだっけ?

こんな港町でのうのうと暮らしてやがったのか!


ってそれはもう、どうでもいいや


「斬鉄ってジェラルド王杯の競馬に出てなかった?なんか大儲けしたような気がするわ」


ヴラド「そこまで思い出しましたか、金貨1万枚ほど稼ぎましたよ」


「斬鉄は確か優勝したのよね!」


「母上!思い出ししましたか」

斬鉄がヒヒンと嘶いて喜び、ブルンブルンと馬の顔を押し付けてスリスリしてくる

動物臭じゃなくて、シャンプーの匂いがするそれにかすかに香る温泉街の匂いだ

たくさん撫でてあげるとまた人間になりそのままハグをする


「斬鉄も大きくなったわね」


斬鉄「母上の方が大きくなられました…小さな母上も好きでしたが大きくなった母上も好きです

お変わりなくて良かったです…いつでも乗せますから、僕に騎乗して下さい」


斬鉄は馬だけにガッシリした体つきをしていた

馬力が凄いようで、ヒョイッとお姫様抱っこして歩いてくれる


「恥ずかしいけど、凄い安定間があるわ…馬だから?乗り慣れてるのかしら?よくこうして抱えてもらったんだったかしら?」


斬鉄「母上は僕に跨る方が多いです…その、僕も母上に跨って乗ってもらうほうが嬉しいです

また風のように駆け抜けたいです」


卑猥に聞こえない…斬鉄はちゃんと馬してたんだな。

どこぞのオッパイチケットの兄ちゃんと大違いだ。

そして、そして生ちちもみ放題チケットの由来も聞いた

デュランは斬鉄に乗ってレースに出た騎手ジョッキーだった


俺は競馬に全財産を賭けて「勝ったら生チチ揉ませてやる」って叫んだらしい

確かに俺なら言いそうだ…うん、おそらく言ったんだろう


デュランは口約束だと俺が忘れて無かったことにされそうだからって、紙に書いたのが始まり

以後のご褒美は全てチケットにかえて大事に取っておいたのだと言う

あのチケットはデュランが頑張った証らしい


無下に扱って悪かったな…泣くほど悔しいなそりゃ。ってか、忘れそうって俺のことちゃんと分かってるんだな


「いいよ、オッパイくらい揉ませてあげますわ…その痛くしないで下さいまし」


デュラン「我が君!」

ヴラド「馬鹿が調子に乗るので一揉みだけとか言っておいて下さい」


「揉むだけだよな?それ以外はやめてね

グッ…雰囲気にのまれてやってしまいそうだ」


デュラン「もっと仲良くなってからやりましょう…あの頃のようにもっと頼って下され

我は貴女様の一番の眷属です」


ヴラド「一番最初にテイムしただけで、別に一番のお気に入りとかじゃないですから」ボソッ


デュラン「フン!」


最初のポ〇モンって愛着あるよね?

育てる途中で飽きたりせずに最後までレベル上げするよ

まぁ記憶が戻ってきたらまた育ててあげるよ

今のところオッパイチケット片手に力説する変態お兄さんにしか見えないけど


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