#3
一方Connect ONE本部では作戦の準備が整っていた。
TWELVEの隊員たちは重たい表情で待機しており、職員たちはその前を通り過ぎる度に難色を示していた。
「本当に大丈夫なのか……?」
「やっぱ一般人に任せるのはリスクあったって……」
「こーゆー事も想定しなきゃだったよな……」
市民に詳細がバレてバッシングされる事。
それにより士気も下がり心もバラバラだ。
「むむむ……」
名倉隊長はその職員たちの声を地獄耳で聞き悩んでいた。
「俺は賞賛されるのが目的だった、職員たちからもようやくそれが得られて喜ばしいはずだがまた手放してしまう……」
同じTWELVEの仲間たちに向かって自分の気持ちを伝える名倉隊長。
「果たして二度は得られるだろうか……?」
その言葉に更に士気が下がってしまう一同。
名倉隊長は流石にマズいと思い謝罪する。
「すまない、士気を下げるようなこと言って……」
「良いっすよ、今は元気な方が逆に気分悪いっすから」
竜司のフォローのお陰で少し気分が晴れた。
そしていよいよ出撃命令が下る。
『TWELVE各員、出撃用意!』
そのようなアナウンスが流れ一同は兵器格納庫へと向かった。
「(絶対に快の邪魔はさせない……!!)」
瀬川もそう意気込み館内の廊下を走るのだった。
・
・
・
格納庫の中では隊員や職員たちが不安そうに出撃準備をしていた。
「ウィング・クロウ、コックピット装填完了」
「ライド・スネーク、コックピット装填完了」
「タンク・タイタン、コックピット装填完了」
そのような声もいつもより覇気がない。
誰もこの状況で戦いなどやりたくはなかった。
しかしやるしか無いのだ、だから出撃する。
「よぉし……」
陽もアモンへと人格を変化させ操縦桿を握る。
彼も陽の居場所の価値が揺らいでいるため少し緊張しているのだろう。
「ライフ・シュトロームへのドッキングを開始します」
機体のエネルギーと生命を直接繋げる。
心が乱れているのでいつもよりキツく感じた。
「うがががっ……」
しかしここで倒れる訳には行かない。
何とか耐え切った一同は接続を完了させる。
「固定ギミック解除」
「カタパルトへの移動を開始」
そして蘭子の搭乗するキャリー・マザーへ四機は繋げられた。
そのまま出撃ゲートが開く。
「ハッチオープン、全システムオールグリーン」
職員たちは緊張しながら出撃するTWELVEの機体を見守っている。
また少し疑いが生まれてしまったためだ。
「すぅぅーーー……」
そんな中で当の隊員たちは覚悟を決める。
名倉隊長が大きく息を吸い込みハッキリと言い放った。
「TWELVE、出撃!!!」
その言葉と共に四機を繋いだキャリー・マザーは射出される。
勢いよく飛び出し作戦を完了させるため現場へと向かったのだった。
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TWELVEの一同を乗せたキャリー・マザーはザガンの潜伏している群馬県南部の山中へ到着した。
上空から見下ろすと木々の間にザガンが寝ており一見隙だらけに見える。
しかし彼らは身をもって知っている、向こうはこちらから攻撃すれば血相を変えて襲って来るのだと。
「本当のこの一か月何もしなかったよなコイツ」
「しかし近隣住民の不安は高鳴るばかりだ」
「いくら避難が完了してると言ってもなぁ、自宅を追い出された奴らが結構見物に来てるぜ……」
ザガンがここに来た時から近隣住民の避難は完了しているがいつまでも作戦が動かない事に痺れを切らし住人たちは毎日のように抗議をしていたらしい。
今この瞬間も我慢ならず作戦を見物しようとしている住人を職員たちが抑えている。
「通せよ!あんな組織を信頼できるか!」
「落ち着いてください!!」
その様子は無線を通して瀬川たちにも伝えられていた。
万が一住人がそちらへ行ってしまった場合の対処を迅速に行うためである。
『よし、みんな準備はいいか?』
無線で本作戦の立案者である技術主任の時止が話しかけてくる。
一同の重苦しい空気を読まずに元気に話している。
『作戦のおさらいだ。ヤツは自身を構成している鉄分を自在に溶解し変形や再生を繰り返す、だから違う鉄を混ぜてしまえば一時的にだが再生を止められる!』
そのために開発した新兵器がある。
『そこで大型の鉄分拡散弾を撃ち込め、体内に入れば自然と溶解しヤツを構成する鉄分と混ざり合う。再生が止まったら一斉攻撃だ!』
各機体に鉄分拡散弾は一発ずつ装填されている。
計四回チャンスがあるのだ。
『じゃあグッドラック、信じてるぞ……!』
最後にそれだけ言って無線は切れた。
少なからず組織内に味方はいてくれる、そう感じて作戦を開始する覚悟を決めた。
「よし分離だ。タンク・タイタン、リフトオフ!」
次々とキャリー・マザーから鉄分拡散弾を装填した機体が分離し地上に降り立つ。
「ウィング・クロウ、リフトオフッ!」
「ライド・スネーク、リフトオフ!」
「マッハ・ピジョン、リフトオフ!」
四機は自由を得て作戦通りに動く事を決めた。
まだ攻撃を仕掛けていないため襲われる事はないが嵐の前の静けさと言わんばかりに緊張感が辺りの雰囲気を支配していた。
遂に作戦が動き出すのである。
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ザガンの動きを警戒し最大限に注意を払いながら最後の覚悟を決める一同。
始めてしまってはもう終わりまで心が休まる瞬間はないのだから。
今までもそうだったが今回は特にそれを感じていた。
「じゃあ作戦通り、まずは隊長が撃ってヤツが飛び上がった所で俺らの攻撃だ」
竜司のその言葉に名倉隊長が頷きトリガーに指をかけた。
緊張感が走る、この指に静けさを終わらせる重みが乗っかっているのだ。
「よし、撃つぞ」
そして作戦が開始されたと分かるように目いっぱい叫んだ。
「作戦開始ッ!鉄分拡散弾発射ッ!!」
そして思い切り引き金を引いた。
勢いよく鉄分拡散弾が発射される。
それは一直線に進んでいき眠っているザガンに思い切り命中した。
「キョワァァァアアアアアッ……!!!」
溶けた鉄分がザガンの体に染み込み混ざっていく。
それがあまりに苦しかったのかザガンは絶叫しながら上空へ飛び上がった。
「よし来た!」
必死に体を変形させようとするが上手くいかないザガンに大きな隙を見出した一同。
照準を合わせてしっかり狙う。
そして彼らもトリガーを引いた。
「おらおらおらおらぁ!!」
一斉に弾丸を放ち攻撃する他の三機。
タンク・タイタンもすぐに武装を切り替え多連装ミサイルで応戦した。
「ギギギギギギギギィィッ……!!!」
再生が間に合わずどんどん形を崩していくザガン。
「本当にターミネーターだな!」
竜司はテンションが上がり以前そう言っていた瀬川に話しかけるが。
「ッ……!!」
当の瀬川は必死な表情で弾丸を連射していた。
それに気付いた竜司は自分も作戦にしっかり集中する事を選ぶ。
「このまま終わってくれ……っ!」
破片が飛び散る中で必死にまだ残る大きな個体を破壊していく。
「ピャアアァァァ……!」
叫び声も小さくなっていく。
「あと少しっ!」
上からキャリー・マザーで見守っていた蘭子もザガンのスキャンデータを見ながら祈っている。
そして遂に。
「ァァァ……」
ザガンの体は再生しないまま完全にバラバラとなった。
辺りには必死にもがいた形跡や破片が散らばっている。
「終わった、のか……?」
緊張感溢れる作戦だったが意外とあっさり終わってしまった。
すると一気に疲れがやってくる。
「はぁぁぁ……!」
恐らく一番緊張していたであろう瀬川が一番力が抜けていた。
一同は気を抜いてしまった。
その油断が一瞬の隙を生んでしまう。
「シュルルルッ……」
「え……」
瀬川の視界に映ったもの。
それは破片を飛ばしながら墜落するウィング・クロウだった。
「なっ⁈」
「陽っ!!」
回転しながら堕ちていくウィング・クロウ。
必死に舵を取るアモン。
「おぉぉっ⁈」
なんとか爆発せずに着陸できたもののあまりの衝撃に気を失ってしまう。
「マジかよ!」
一体何が起こったのだろうか。
下を見るとザガンの破片がウネウネと動いている。
「コイツ、まだ生きて……っ」
そのまま体に混ざった鉄分を排出していく。
純粋な鉄分のザガンにまた戻ったのだ。
「まさか元通りになると言うのか……?」
絶望が襲う。
完全に復活してしまったザガン。
対してこちらは三機しか残っていない。
「ピャアアアァァァッ!!!」
そしてウィング・クロウが堕ちてしまったため鉄分拡散弾も一つ失われゴッド・オービスにもなれない。
絶望感の中で一同は立ち上がれるのか。
つづく
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