#4
ゼノメサイアが降臨した山中。
『(ここなら建物もないし戦いやすいな……)』
いつもと違う景色に戦いやすさを感じる。
フォラスと対峙し全身を観察するとある事に気付いた。
「ゴロロロ……」
頂上に聳えるエネルギー体のようなものをこの高さから見ると中に何か入っている。
『ッ……⁈』
よく見るとそれは良とスタッフが乗っていた小型バスだった。
『良っ、何でそんな所に……⁈』
恐らくは車でスーパーに向かっている最中に捕まったのだろうが今はそんな事を気にしている場合ではない。
『助けなきゃ……!!』
気合を入れてフォラスに突っ込んで行く。
するとフォラスも呼応するように走り出した。
「ゴオォォォッ!!」
そしてゼノメサイアにタックルをした。
『オォッ……⁈』
良を救おうとしたゼノメサイアを圧倒的な勢いで突き飛ばす。
流石、山のような大きさで岩のように硬いものとの取っ組み合いは勝てる訳がなかった。
「グゴォッ!!」
吹っ飛ばされて倒れたゼノメサイアに更に迫ろうとするフォラス。
『ウゥッ……⁈』
しかし鈍足であったためギリギリで身体を起こし避ける事が出来た。
避けた勢いでフォラスの横からタックルをし返し突き飛ばそうとする。
「ゴォッ……」
しかし思った以上にフォラスは重く思ったように突き飛ばす事は出来なかった。
すると。
「ゴガァァァッ!!!」
良たちが捕われているエネルギー体の所から電撃のようなものを放つ。
『ウガァァァッ……!!』
全身が痺れて更に後方に吹き飛ばされてしまう。
しかし幸いここは山中なので破壊されるものはなかった。
『グッ……ハァッ』
それより今は良たちを救わなければならない。
その心持ちで立ち上がり構えを取った。
『オォッ!』
良たちの乗るバスを助けようとエネルギー体に手を伸ばす。
しかしそこから電撃が再度放たれる。
『ァガッ……』
このままではいけない。
そこから救うためにはまずフォラス本体を倒さなければと踏んだ。
『ハッ、ハァッ!』
勢いよくパンチを連続で繰り出すがフォラスの表面は硬く逆にこちらの拳がダメージを食らってしまう。
『グゥゥゥ……』
それでも諦めずに攻撃を繰り出そうとするとフォラスは更なる攻撃を繰り出して来た。
「ガブッ」
なんとトンネルの位置にあって口でゼノメサイアの足に噛み付いたのだ。
『グァァッ……』
鋭い牙が食い込んで痛い。
足を振ってもがいてもそちらから離してくれる気配はなかった。
「ガブゥゥゥ」
牙が食い込んだ箇所から血液のような緑色の光が流れる。
『フンッ、フンッ!』
地べたに座り込んで何とか引き剥がそうとするが頭上からまた雷撃が放たれてそれどころではない。
「ビリリリィッ!!」
『グァァッ……!!』
しかし今この雷撃を食らった事で新たな作戦を思いついた。
『(これなら……)』
早速試してみる事にした。
『フンッ!』
思い切りフォラスの頭に覆いかぶさるような体勢になる。
そして口を開こうと力を込めた。
「グゴゴゴ……ビリリィッ!!」
するとフォラスは見事に引っかかったようで覆いかぶさっているゼノメサイアに向かって雷撃を放った。
『今だ!』
雷撃が放たれたタイミングで覆いかぶさっていた身体を離しフォラスの頭部を露わにする。
そのまま雷撃はフォラスの頭部に直撃した。
「ゴガァァァッ……!!」
もがき苦しむ声を上げながらフォラスはゼノメサイアの足から口を離す。
自由になったゼノメサイアはそのままの勢いでフォラスが苦しんでいる間にエネルギー体に手を伸ばした。
『オォォォッ!!!』
先程の様子がフラッシュバックする。
池に飛び込み良を助けようとしたが手は届かなかった。
今度こそ必ず助けるのだと意気込む。
『届けぇぇぇーーーーっ!!!』
そして遂にエネルギー体に触れた。
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「……?」
良はバスの中で目を覚ました。
その周りは全てオレンジ色エネルギーのような空間。
「……っ⁈」
その異様さに恐れ慄く。
それによく揺れるため恐怖は増すばかりだった。
「うっ、うっ……!」
涙が流れ、唯一頼りのスタッフも倒れているため誰も頼れる者がいない。
とにかく心細かった。
すると。
『ハァァァッ!』
どこからか声が聞こえる。
「?」
涙を拭いながら声のする方へ顔を向けると。
『届けぇぇーーー!!』
巨大な白黒の右手が光と共に伸びてきた。
「……!!」
良は無意識のうちに手を伸ばしていた。
その時、良の目には光が宿った。
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ゼノメサイアはフォラスのエネルギー体から良たちの乗る小型バスを救い出す事に成功した。
『デリャァァァッ!!!』
その衝撃でフォラスのエネルギー体は破壊され明らかに苦しそうに絶叫した。
「グギャアアアァァァッ!!!」
じたばたともがき苦しんでいる間にゼノメサイアは救い出した小型バスを少し離れた安全な場所に優しく置く。
「わぁ……!」
窓から見上げた良は歓喜の声を上げていた。
『フンッ!』
そしてもう一度フォラスの方へ向き直りエネルギー体が破壊された痕を見た。
するとそこからは体内へ通じる管のようなものが見える。
『(そこからなら……!)』
チャンスとばかりにゼノメサイアは飛び上がり空中から思い切り降下した。
「グゴッ……⁈」
フォラスが気付いた時にはもう遅い。
ゼノメサイアはエネルギーを既に溜めており破壊されたフォラスの頂上に両手を置いた。
そして思い切り全ての力を注ぎ込む。
『ライトニング・レイ!!!』
神の雷は直接フォラスの管から体内を巡り思い切り内側から硬い表皮ごと爆発させた。
その衝撃でゼノメサイアは少し吹き飛ばされるが滑空し何とか着地。
見事に勝利したのだった。
「わぁ〜〜」
それを見ていた良の瞳には憧れの光が宿っていた。
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その後、巻き込まれた彼らは近隣の小さな学校の体育館に一度避難した。
まだ地崩れの恐れがあるためだ。
「あーゼノメサイア見逃した!何で気絶してるかなぁ⁈」
瀬川は違う意味で嘆いていた。
そんな様子を眺めていた快は立って歩く。
「どこ行くの?」
美宇が心配そうに聞いてくるので少し誤魔化す。
「ちょっとね……」
そのまま快は体育館の端の方で新たなスケッチブックに絵を描いている良の所へ行った。
「ふんふ〜ん」
また鼻歌を歌いながら色鉛筆を走らせている。
「よかったなここが学校で。余ったスケッチブックもらえたんだって?」
今、良が手にしているスケッチブックはここの美術室にあったものを頂いたものだ。
「うん!嬉しい!!」
そう言ってまた絵を描き続ける良を見て快は少し微笑ましくなる。
何を描いてるのかと覗いてみると。
「え、これって……」
そこに描かれていたのは白黒の巨人だった。
良はこう答える。
「ゼノメサイア!ヒーロー!!」
なんとヒーローと言ってくれたのだ。
その正体が快である事は分かっていないだろうがヒーローだと認めてくれた事に少し報われた気がする快であった。
「よかった……!」
これで愛里と良、二人からヒーローになりたいという夢を認めてもらえたと感じた。
つづく
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