ハッピー大家族

@wakumo

第1話 ハッピーウエディング

 誕生日と言えばまあるいケーキに年の数だけロウソクを立てて、単純にハッピーバースデイトゥーユーかなんか歌って、つきなみに賑々しく祝ってもらいたいものだけど…私の13歳の誕生日は、予想に反して波乱万丈な奇想天外な日々の幕開けとなってしまった。

 本当に13年間生きて来て、これまでも色々あった、ママの離婚。妹の子育て、忙しいママは家事は苦手、その上お姉ちゃんも得意じゃないときて、私が七転八倒しながら慣れない日々と戦ってきた。と思うんだけど…。

 その日々の一区切り、今がここ、これから先もまだまだ大変の真っ只中が続いていくのかなぁ。

 とにかく私のバースデイケーキが、お父さんとママの為の、三段にピンクのバラの花いっぱいのウェディングケーキに大変身しちゃって、ママと、私と、お姉ちゃんと、妹……。お父さんと、あいつと、お兄さんと、弟……いっぺんに8人の、大家族になってしまったってお話。

 生意気な弟、信じられない同級生のあいつ、お父さんとママは、当然だけど新婚なんで…ベタベタ仲がよくって、お兄さんはすごく格好いい。ここだけはちゃんと書いておきたい。格好良い…私好み…なんだけど、こっちはこっちでお姉ちゃんと同級生で、ゴチャゴチャ諸問題あるみたいだし……。

 それに、この頃、引っ越しの片付けが始まってからと言うもの、おばあちゃんの出没が多くて、この分だと近い内にもう一人、この家に、家族が増えるのかもしれない。もっともっと大人にならなくちゃ、と思う訳、この際、この私が…ね。

「結婚、オメデトウ!」

「ありがとう!」

「これも、理解ある子供達のおかげよー。もう、ママ、絶対幸せになるから、ねー」

「はいはい!」

「このケーキすごいでしょ。おばあちゃまが、焼いてくれたのよー」

「すごーい」

「私ケーキ屋さんに焼いてもらったのかと思った」

「ばあちゃんさ、ケーキ焼くの大好きなんだよ」

「そうなのよ。はい、はい。洋服を作るのも、好きなんだから」

 と、取り出したのは…いや、無理、絶対着れない…私の好みじゃない…

「それ!おばあちゃん」

「今まで家には女の子がいなかったからね。私の趣味が活かせなかったけど、これから楽しみが増えて、バンバンザイなのよー」

「楽しみって、これ?」

「まあ着てごらん。きっとあんた達、似合うわよ」

 おばあちゃまの作ってくれた洋服は、なんとフリル、フリフリ。しかも三人お揃い。

 実依子はともかく、私とお姉ちゃんは、ちょっと…。

 毎日ピアノの発表会でもしてる気分で暮らさなくちゃ、とても似合いそうにない。まあ今日だけはと思って手は通してみるものの…。

「ぷッ…」

「なによ!」

 生意気な顔で…あいつが笑った。


 中学二年と言えば多感な年ごろだから、お父さんとママが何を考えているのか、薄々は解っていたけど、理解できてるとは思っていたけど、そんな簡単に全てがうまくいくとも思えない。なのに二人とも超呑気な親だから、突っ走ってしまって…

 それに釣られて私達まで、二人がいいならいいんじゃない、くらいに思って同居に同意したけど、まさか、こんな大所帯になって、自分達の毎日にまで異変が押し寄せてこようなんて、考えが及ばなかった。


「おっす!」

「何よ!一緒にご飯食べた癖に、かなり出遅れて来たじゃない」

「少しくらい遅くたって、すぐ追い付くだろう。このとうり。ああ、かったるいなー、歩いてくるの。今までは自転車通学だったからな。やっぱ自転車っていいなー」

「あんただけおばあちゃんの所から学校に通ったら?」

「え!それは…」

 何…怯えた顔してる?

「そうしたら家も今までのままだし、学校にも颯爽と自転車で来れるんだし、あのおばあちゃんなら、あんた好き放題出来るんじゃないの?」

「そう思うだろ。そこが甘いんだよなー…。 げッ!」

「やあ、おはよう」

「おばあちゃんどうしたの?」

 つべこべ小競り合いしている私達の前に、あいつのおばあちゃんが突然の出現。大荷物抱えて立っていた。

 私達は、同時に聞いた。

「おばあちゃん!その荷物いったいどうしようっていうの?」

「がたがた言ってないで早く学校に行きな。学校が終わったら急いで帰ってくるんだよ。ケーキでも焼いて待っとくからね」

「ま、待ってるって!!」

「そうさ、最初は一人暮らしも悪くないなって思ってもみたんだよ。うるさい孫からも開放されて、家事からも放たれてさ、でもやっぱり、私も楽しい方が好きなんだよね。かわいい孫三人も増えた事だし。今日から、お前の家に引っ越しするよ」

「僕の家って…」

「私の家よ!」

「え?おい、おい、どうするんだよー!?」

「どうするって、私は、こうなるんじゃないかって予想してたわよ…」

「そんなこと、勝手に予想するなよナー」

「だっていいじゃない、元気そうだし、何でもやってくれるし、結構助かるわよ。家のママあれで何にも出来ないのよ。仕事は超プロなんだけど、家事ときたら丸っきりだめなのよ…。ねえ聞いてるの!」

「あ~あ!」

 なんだか悲劇の主人公みたいじゃない、頭抱えて本気で落ち込んでて。そりゃあ、元気なおばあちゃんだし逆らえない所はあるとして、私は、楽しくていいな、賑やかなの好きだし、ふた家族一緒になることで、思い切って増築した家がうんと広くなって、家にいても学校にいるみたいで伸び伸びしてるし、おばあちゃんがこの上一人増えたってあんまり変わりないって。

 と、なんだかんだ言い合ってる間に、私達の周りにはクラスメイトの輪が出来ていた。

 

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