第4話模倣酒

 治癒の効果で老廃物が出て、汗や悪い血なども排出して体がべとべとになってので王族のみなさんはお湯を浴びに一旦席を離れた。 

 

 「いつき様、お疲れ様でございます。最初の料理で見事、食の使徒としての職務を発揮なされました。予想以上の効果です。私にはこれから使徒様が忙しく仕事をしているのが頭の中からはなれません。きっとこれから大勢をの人間を救うことでしょう」 

 

 「そんないつき様に仕えられて幸せです。これから末永くよろしくお願いします」 

 

 「セバスさん、リリアさん、あれで完璧だとは僕も思えません。今ある最善を尽くしただけなので、これからもっともっと勉強して使徒として恥ずかしくない様な技術と知識を手に入れていきたいと思います。一般市民向けにお店を開きながら修行した方がよさそうです」 

 

 「それはいい!いつき様の治癒は破格の性能であり、またどこまで治癒するか未知数でもあります。国民達の傷を癒し、更にはこの国はダンジョン国家です。身体能力の向上や潜在能力の覚醒、更にはバフ効果まで追加されればダンジョンでの冒険者の死亡率は下がり、安定的な狩りが可能になります。それだけでも我が国の経済効果は計り知れません」 

 

 「無限庫による下ごしらえなんかも能力も解除されたので、多分それなりにお客様を捌く事もできると思います。それでも僕一人ではお店はできませんが」 

 

 「もちろん、私とリリアもお手伝いさせていただきます」 

 

 「おまかせください!」

 

 「たすかります。ああっセバスさんとリリアさんの分も料理は作ってあるので、王様達が戻ってきて僕たちが下がる事になったら食事にしましょう」 

 

 「ほっほ!これは楽しみですな!この老いぼれの潜在能力がどれだけあることやら」 

 

 「美容効果があるのは嬉しいですね」 

 

 「それと王様がもどってきたら、お酒を出そうと思ってるのですが、如何せん僕はお酒が飲めません。セバスさんにリリアさんはお酒は飲めますか?飲めるなら無限庫で熟成させた地球の模倣酒の味をみてほしいのですが」 

 

 「模倣酒ですか?」 

 

 「ええ、無限庫の能力で一度ストックしたお酒の味を模倣したものを精製する機能で、そこから更に熟成なんかも可能で、凄い機能なんですが、僕には味がわかりませんので」 

 

 「それは・・・・隠した方がいいかもしれませんね。しかも熟成が一瞬で可能というのが脅威です。エルフの千年酒、龍族の万年酒、精霊族の精霊酒、妖精族の果実酒、幻想酒に各種族の秘酒、神々に選ばれた神酒などもありますが、その全てが模倣、熟成まで自由自在ときたら、ただでさえ治癒や能力向上なんて能力もっているのでますます悪人に狙われる事になりますな。それにどの種族も寝かせた酒を早く飲みたいと思っていますから、瞬間熟成が可能となったら大量に依頼が舞い込んでくるでしょうなぁ」 

 

 「ですよね。お酒飲めなくてもなんとなくわかります。とりあえず地球のお酒で作成してみました。味見お願いします。響と言うお酒を熟成機能で50年寝かせました」 

 

 小さめのグラスに綺麗にカットした氷をいれ、トクトクと注ぎ、セバスさんとリリアさんに渡した。 

 

 「ではいただきます。・・・・・・香りがまず素晴らしい・・・・・なんと鮮烈な味か!まろやかさ甘味もありつつ、なんと快感度の高い味か!色々な酒をそれなりにたしなんできましたが、そのどれとも違う、渋みやほのかな酸味、だがそのどれをも凌駕する丸みのある味わい、恐ろしいこれが瞬間熟成された酒とは・・・・・下手をしたらいつき様を巡って戦争がおこりそうですな」 

 

 「つよいのにスルスル飲めちゃいますね。飲みやすく、また華やかな絢爛なイメージが脳内に広がります。感動で震えます・・・・・」 

 

 ふるふると美味しそうな顔を蒸気させ、小刻みに揺れる二人、そんなに美味しいのか!?僕にはその世界がわからないので非常に悔しく羨ましい気持ちになる。 

 

 高級なお酒は限られた人達限定で、政治的取引なんかでも使えそうだし破格の能力だ。 

 

 一般に振舞うとしたら、普段飲みの安価なお酒かな?それでも地球産のお酒は高品質だとおもうんだけどな。 

 

 お店を開くにしても、どんな料理を出そうか?普通の料理屋の様にあれもこれもメニュー盛りだくさんで何品も出す事は多分僕には無理だ。 

 

 どれだけお客さんがくるかにもよるけど、メニューを絞ってハンバーグセットならそれだけを出し続ける方が安定しそうだ。 

 

 全然知識はないけど、王様達に出すようなコース料理なんての勉強しなきゃいけないんだよね?各国からお客様を呼んだ方がいいとか言われてたし。 

 

 一般のお客様に出す普段の料理とコース料理、どちらも勉強しないと、そう言えばウナギが邪魔者とかいわれてたな。 

 

 うまく活用できないかな?ブリタニアにいる日本人はレシピも公開してるのにあまり広まってる感じはしないし、こっちからも援護の様にウナギの美味しさをわかってもらえたらもっと扱いも変わるかもしれない。 

 

 でも明日、明後日でいきなり店をオープン!なんて思い切りのいい事はできないかな?一週間?一か月ほどちょっと時間が欲しいかも、こっちの世界にきてまだ二日目、生活にも慣れなきゃいけない。 

 

 そんな事を考えていると、王族のみなさんがお風呂から戻ってきた。 

 

 「ふぅさっぱりした。おまたせしてすまない。セバスとリリアは??ずいぶんと機嫌がいいが何かあったのか?」 

 

 「僕の能力で、僕の世界の高級酒を模倣したお酒の味を見てもらってました。結果やばい能力だってわかりました。王様と王妃様も飲みますか?」 

 

 「いつき殿の世界の高級酒!それは興味深い!」 

 

 「私もいただきたいです!」 

 

 「大人ばっかり!ずるいよ!」 

 

 「シルフィ様とレオナルド様にはジュースを用意しますよ」 

 

 二人には月の実の果汁を炭酸で割ったものを。 

 

 「これがいつき殿の世界の酒・・・・・いい香りだ。んむ・・・・・・ハァ・・・・・なんとなんと・・・・・美味な酒だ」 

 

 「夢の様な味わい・・・・幻想酒に似てるかも?凄いわこれ・・・・・・」 

 

 お酒を味わっている二人に、一か月間時間をもらって店を開こうかとおもっている事を説明した。 

 

 「なるほど、一般庶民向けに飲食店を、修行の為にと?」 

 

 「いいことではないかしら?きっと治癒を望む人達は多いわ、それに体も強靭になる。冒険者達は大喜びよきっと」 

 

 「うむ、それ以外にも使徒様の素晴らしさは各国に報告しなきゃいけない。使徒様が降誕した事は各国には通達しているが、その後どうなったかきっと質問されるだろう。中には使徒様といっても食の使徒様と言う事であなどる輩もおるかもしれない。いつき様の素晴らしい能力は招集した国が挨拶の使者を送ってきた国のみに正式に伝えよう。挨拶にこないような無礼な国にいつき殿を行かせるわけにもいかない。風の噂でいつき殿の能力を知り、精々慌てる事だ」 

 

 「正直な話、いつき様の料理は毎日でも食べたいくらいだけど、私達王族で独占する事はよくないわ。それに今まで仕えてくれた王宮の料理人を無碍に扱う事も出来ないし。いつき様の料理を食べたくなったら、私達がお店までいけばいいのだし」 

 

 王族が食いに来る飯屋って・・・??? 

 

 「貴族や身分が高いお客様向けの料理も考えなければいけませんし、こちらの国であまり好まれていない食材や安い食材も積極的に活用して新たな利用方法をみいだしたりしたいです。その為にまずはブリタニアって国で流行ってる。うなぎから手を付けようかと思ってます」 

 

 「ウナギ???あの貧民食いを使うのか!?確かにレシピもあって、食えるって話も聞くが・・・・・あのへびをか・・・・・」 

 

 「ブリタニアのその店では魔物の内臓や魚の内臓など他にも肉や魚を生でも食うらしいが・・・・・まさか?」 

 

 「ああっ全然食えますよ」 

 

 全員が俺から顔を反らした、その表情は嘘だろ!?って顔をしているのがしっかりと見えた。

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