第6.5話 倫子と響
二人にとって、相手が隣にいるのは自然であり、幽霊騒ぎが落ち着いたことで親元を離れる決意をした時も、当然のように同居することになった。
久坂響は困惑していた。
親友が連れてきた男によって、アパートに憑りついていた存在は除霊された。それはいい。恥ずかしい姿を見られてしまったのも、不幸なアクシデントだ。だが、親友がオカルト探求部なるものに興味を持ち始めたことは理解できなかった。
「ねえ、倫子。オカルト探求部に入るつもりなの?」
「面白そうじゃない?」
「興味深い内容ではあるよ。助けてもらったしさ。でも、あの先輩」
「
響は思わず顔を歪めた。
霞という名は中性的だが、本人に愛称ほど可愛らしい印象はない。
「私は犬みたいだなって思ったけど。今日、部室に入った時も子犬みたいに尻尾振って近寄ってきたし」
「あ~、確かにそうかも」
「あの人、絶対倫子のこと好きじゃん。超好きじゃん。サークル入ったらアピール凄いと思うよ」
「響ちゃんも仲良さげだったよね?」
響は激しく首を横に振った。200%ありえない。お互いが少し乱暴な口調で話したのを、倫子がそう感じとっただけだろう。
「ないないない。絶対倫子だって。それで、告白されたらどうするの?」
「う~ん。まだちょっとしか経ってないから分からないよ」
普段おっとりしてるが、好き嫌いははっきりと言う。それが梶中倫子という人物だったはずだ。なのに、曖昧な答え方をしてくる。響の不安は増大していった。
「他に誘ってきたナンパなサークルの連中よりかは全然マシだと思うよ。テレビで聞かないような話もあったから新鮮だったし。でもさ、断ったら居づらくない?」
「確かに。まだ付き合うとかは早いかなぁ」
「でしょでしょ。だったら、明日も一緒に行ってあげようか?」
「駄目だよ。除霊のお礼ってことになってるから、ちゃんとデートしてくるよ」
「ホント、そういうとこは頑固なんだから」
だが、それでこそ自分の知る親友だ。仮に困ったことになったら、自分が助けてあげればいい。響はそう考えて、倫子を送り出すことにした。
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