第24話 襲撃者の正体

王城にて


俺は王城の応接室に呼ばれていた。

(この前の襲撃の件かな。でもなんで俺だけ呼ばれたんだろう?)

そう疑問を持ちつつ案内してくれている近衛騎士についていくと、応接室と書かれた扉の前で止まる。


“コン、コン、コン、コン”

「陛下、お連れしました。」

「入れ。」

応接室の扉を開けると既に中央の椅子にゼルマン国王陛下が座っていて、そのそばには鎧に包まれた1人の騎士が立っていた。


俺は部屋に入り片膝をつこうとする。

「楽にして良い、今日は非公式の場だそこに座りなさい。」

「ありがとうございます。」

俺は勧められるがまま対面のソファに座る。


「バルデニアよ、娘のニーナを助けてくれてありがとう。」

「私からもお礼を言わせてくれ、サリーの父親のマード・ヴァン・アルファーナだ、うちのサリーを助けてくれてありがとう。」

そう言って陛下と騎士は頭を下げる。

「な!へ、陛下!頭をお上げ下さい、僕自身の力だけでは倒せませんでした。ニーナとサリー二人の力があってこそ倒せたのです。」


「そう謙遜するな、そなたはブラックウルフも倒したのだ。それに、学園での出来事もニーナから聞いておる。」

「ニーナからですか?」

「うむ、よく王城に来て学園の事を話してくれる。」

「はぁ。」

「学園に入って……いや、そなたと出会いニーナは毎日楽しそうだ。これからも仲良くしてくれるな。」

「サリーともよろしく頼むよ。」

「こ、こちらこそよろしくお願いします。あとよろしければ僕のことはバルとお呼び下さい。」


「ではバルよここからは本題に入らせてもらうぞ、先日捕縛してくれた襲撃者の尋問で色々と聞くことが出来た。その内容については彼から話してもらう。」

「彼?」

「どうもっす!!」

急に直ぐ側で声が聞こえ横を見ると後ろから黒髪黒目の青年が俺の顔を覗き込んでいた。

「うわぁ!」

俺はびっくりして距離を取った。


(い……いつからそこに居たんだ?魔力反応もなかったはずなのに。)

「今、『いつからそこに居たんだ?』って思いましたよね。」

「な!」

「まあこれは俺の……っと自己紹介がまだだったっすね。俺の名前はジルト・ギルアス、気軽にジル呼んでくださいっす!」

「バルデニア・クリントンです。僕のことはバルと呼んで下さい。」

「了解っす!ではバルさっきの続きっすけど。」

「スキルのことそんな易易やすやすとはなしちゃって。」

「バルから悪意は読み取れないので大丈夫っす。」

そう言ってニコッっと笑った。


「スキルの前にまず俺の所属について話すっす。俺は王家直属の部隊

シャドー騎士団ナイツ』の団長を務めてるっす。」

「『シャドー騎士団ナイツ』?」

「王家を守る裏の騎士団みたいなのもんっす。例えば王家を狙う暗殺者の排除や謀反を起こしそうな黒い噂がある貴族の諜報活動だったりしてるっす。」

「特にギルアス家は代々王家に仕えてくれている。だが、内容が内容だけにこの存在を知っている者は一握りだ。」

「それを僕に話していいんですか?」

「もちろんこのことは俺が実際に見て話していいか決めてるっす。」

「そういえばスキルの話でしたよね。」

「そういいえばそうだったすね、話がそれたっす。俺の家系ギルアス家の当主はだいだいサブスキルが継承されるっす。そのスキルが記憶メモリー真髄ビジョンというスキルで相手の目を見ると脳を通して相手の記憶や思考を読み取ることが出来るっす。」


「なるほど、尋問には最適ということですか。」

「それだけではない、ジルトのジョブは暗殺者アサシンだからな。」


暗殺者アサシンか、気付かないわけだ。でもそう聞くとだんだんジルの周りに不気味なオーラが見えてくるような………。)

「今変なこと考えてたっすね。」

「いえ、そんなことありませんよ。」

「『なんか俺の周りから不気味なオーラが見える』みたいな。」

「ワ、ワァースキルッテシッパイスルコトアルンデスネー。」

(やばい、目を合わせると心の声が駄々漏れなんだった。)

俺は急いで目をそらす。


「カタコトになってるっすよー、目もそらしてるしやっぱなんかやましいことでもあるんじゃないんですかー。」

「き、気のせいですよ。」

俺は全力で目をそらすしているが、いつの間にか近づいてきていたジルにほっぺたをつつかれている。


「ゴホンッ!仲が良くなったことは良いことだが、ジルよ何のために今日ここに呼んだと思っている。」

「え!?バルを紹介するためじゃないんすか!?」

「襲撃者の件であろう。」

「あ、あはは……冗談に決まってるじゃないすか。」

(尋問のこと全然話さないなと思ってたら、絶対途中から忘れてただろ。)


「それじゃあまずは、襲撃者の素性についてっす。名はセルク『死神の陰』という戦闘特化の闇ギルドに所属、おそらく幹部クラスっす。リーダーと呼んでる存在からバルデニア・クリントンを学園ダンジョン内で暗殺する依頼を受けたっす。得意な戦闘方法は魔石を利用し魔物を召喚、使役をして間接的に殺すっす。戦闘は魔物任せで本人は姿を現さないのでダンジョン内であればダンジョンモンスターの仕業にして完璧な暗殺が出来てたみたいっすね。」

(ジョブが召喚師ということは、隠密があまり得意ではないはずだが、一体どうやって学園に侵入したんだ?)


「学園内には依頼者の手を借り侵入。その依頼者のことを『獅子の子』と呼んでるみたいっす。そして闇ギルドの多くは本部の場所を治めている領主のことを『獅子』と呼んでいる。そして依頼はパーキンソン辺境伯領の本部から通信魔道具で王都の支部に送られていることから今回の依頼者はダリマ・パーキンソンだと思われるっす。」


「ダリマ・パーキンソン………ダンジョンに入る前に絡んできたやつか。それに俺に対して敵意があったしな。」


「となると動機はそれっすね。」


「これから処分を考えなくてはならないのだが、余としては実家で3ヶ月の謹慎をさせようと思っておる。命を狙われたバルとしては不服かもしれんが、一応パーキンソン辺境伯の後継ぎであり、まだ子供だということもあってな王族が危険にさらされたとしても即処刑はできないだろう。」


「僕もそれで構いません。僕達は無傷でしたのでそれで反省してくれればいいのですが………。」


「まあそれは辺境伯次第だろうな。」

「それもそうですね。」

(まあ、あの感じじゃ反省しなさそうだけど。)


「さて、今日はもうおしまいだ。また何かあったら使いの者をだそう。」


「今回は本当に感謝してるよバル君。」

マードさんが改めてお礼を言ってきた。


「いえ、何度も言いますが僕だけの力じゃないので。………では僕はこれで失礼します。」

俺はそう言って応接室を出るとすぐそばに近衛騎士に連れられて王城をあとにした。





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次回からファンタジーの学園によくあるあのイベントが始まります。


一応新作を明後日位に出すつもりなのでそちらも見てくれると嬉しいです。








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【10万PV突破感謝】貧乏男爵家の嫡男ですがアーチャーで近接最強になりました。………なんで? ながながし @SHOW0701

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