16 そんな風にして日々は過ぎていく。

 朝、明希と一緒に家を出て高級マンションに向かい、ダニエラを叩き起こす。

 そして三人で登校し、同じクラスへ。そこでまだなんだかんだ騒がれた後ダニエラわっしょいが始まり、それをただ傍観しながら時間が過ぎていき、放課後は料理部でダニエラの悲鳴を聞く。


 そんな、平凡なようで全然平凡でない毎日が過ぎていった。

 しかし人間というものは環境に慣れるのは早い。一週間ほどでそれが当たり前に感じられるようになり、半月もすればそこまで違和感を抱かなくなってしまうのだから不思議だ。


 休日は近くのショッピングモールに行ってダニエラを連れ回したりした。ダニエラは何にでも興味を持ちたいへん楽しそうにしていた。俺にとって彼女はもうわけのわからない異世界人ではなく、少し変わった友人になっていた。

 ちなみにそれは明希も同じらしく、何やらファンシーなアニメグッズを買ってはダニエラと共有していたりする。明希もとても楽しそうだった。


 こちらの文化を堪能するだけではなく、ダニエラは異世界の色々な知識や文化をこちらに持ち込んだりもしている。

 例えば学校でダニエラファンになった女子たちとお茶会をしたりだとか。簡易的なものではあるが舞踏会も開かれたりして、俺と明希が参加させられたことは記憶に新しい。


 異世界の悪役令嬢ダニエラ・セデカンテは俺の元に非日常という日常をもたらしたと言えるだろう。

 今までの平穏な高校生活で満足していた俺だったが、こうして過ごすのも悪くないなと思う。これこそ青春と言えるのかも知れなかった。

 ……ただ、少し残念な点を挙げるとすれば青春の肝心要である恋の気配が全くしないことだ。俺はつくづく恋愛運がないらしい。ダニエラには一日百件ほどのラブレターが届くというのに。考えるだけで泣けてきそうなのでやめておこう。


 そんなこんなしているうちに季節はうつろい、忙しなく日々は過ぎていく。

 そして気づけば五月初頭、ゴールデンウィークを迎えた。

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