6 悪役令嬢の戸籍取得。良い子は絶対に真似しちゃダメなやつ。
「調べてみたところ、やっぱりかなり難しいらしいな。どれも俺たちの手に負える範囲じゃなさそうなんだよなぁ……」
スマホをいじくりながら、俺はため息まじりにそう言った。
色々面倒な手続きだの何だのしないと戸籍は手に入らない。どれもただの高校生である俺たちには現実的な方法ではなかった。
「外国ではよく戸籍売ってるって聞くよね。それも結構安くで。もちろん褒められた行為じゃないかもだけど……。でもそれ買ったらいけるんじゃない?」
「そもそも彼女は外国へ行けないだろ。パスポート持ってないんだし」
「だよねぇ。私のアニメ知識が活かせればいいんだけど、この問題ばっかりはなんとも。やっぱり騙し騙しでやっていくしかないのかな」
「だけど、そうなったらこの先どうなるんだ? いつまでも俺や明希が面倒見られるわけじゃないだろ。俺たちにだって生活あるんだし」
「そうですわ。ワタクシ、居候にはなりたくありません。元侯爵令嬢の矜持がありますもの」
「お、さすが悪役令嬢! なんかかっこいい!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ……」
俺は頭を抱える。
どうにかしないと、このままはやばい。こういうことはなるべく早く解決すべきだ。でもどうやって?
その時、俺はふとあることを思い出した。
「でも、外国か。確か明希の親父さんって貿易会社の人だったよな?」
「そうだけど?」
「テキトーにどっかの国の市民権を買ってもらうことってできないか?」
「あっ。その手があったか! さすが誠哉、私思いつかなかったよ!」
実は俺の幼馴染こと日比野明希、小さくはあるが某貿易会社の社長の娘なのである。
俺はそこに一筋の可能性を見出した。事情を話し、うまくやればもしかしたら成功するかも知れない。
「ではワタクシが直接アキ様のお父様とお話を」
「大丈夫、私から説明するから。お父さんってば私に甘いの。だから大丈夫! 私に任せて!」
本当に大丈夫なんだろうか、明希の会社。そのせいで潰れたりしたら非常に申し訳ないなと思いつつ、俺たちは明希に任せる以外の手段を持たなかった。
* * *
そして数日後――。
「手に入ったよ! ちょっとお金は奮発しちゃったけど。
作った戸籍内容……つまり設定だけど、ダニエラ・セデカンテは欧州人の母と中東人の父のハーフ。中東のある名門家の令嬢で、お父さんが色々と細工してくれたから日本に移住して来たってことになってる。
つまり名実共にお嬢様ってわけだね。あとそのドレスは結構な価値になると思うから、売れば高級住宅の一個でも買えると思うよ」
「まあっ、本当ですの? 何から何まで親切にありがとうございます。本当にアキ様のお優しさが身に染みますわ」
明希は見事にダニエラの偽戸籍を手に入れた。手に入れてしまった。
良い子は絶対に真似してはいけない不正な裏ルートにより、ありもしない身分を与えられたダニエラは大喜びだったが、俺は内心ヒヤヒヤしていた。これがバレたら絶対警察沙汰になる。自分で言っておきながら今更怖くなり出したのだ。しかしもう全てやってしまった後だったので、悔やんでもしようがないのだった。
何はともあれ、ダニエラは日本での地位を手に入れた。
この先一体どうなることやら、である。
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