目指せ私の植物都市!植物のための植物による物語

蒼久若々

第1話 プロローグ

さわさわとジャスミンの葉が揺れる。開けておいた窓から領花であるローズマリーの香りがふわりと部屋に入ってくる。


もはやジャングルみたいな領主の部屋では自分の創り出した領を眺めて感動のため息をつく彼女の姿があった。


「夢がかなった...これがわたしの目指した世界...」


ペレニアル公爵はペレニアル領の景色を眺めてうっとりとため息をつく。


そこには無数に広がった菜園や花畑、ドーム型のサンルームになっている植物園が広がっている。

自身が創立者となった植物科専門学校であるセントウレア植物学園に若き生徒たちが通い学んでいる。

かつて自身が住んでいた、両親の家のある村の隣の森の中心に悠々と立つ大きく成長した世界樹。その周りには神聖な植物であるプルメリアをモチーフにした教会たちから響き渡る優しい鐘の音。

城下街には花屋や植物店、薬屋や青果店がずらりとならびそこにはこの地に住む人々だけでなく他の街からこのために訪れた旅人や商人、またお忍びの貴族様が混じり合って笑い合って植物たちを眺めている。


これぞ私が夢見た世界。


これはただの植物マニアの少女が転生し、人生を賭けて植物のための、本当に植物のための、もう一度言うぞ、本当に植物のための都市を創り出す物語。



―――――――――――――――



わたしはマリーという。いや元は茅野心葉このはという。


元わたし、心葉は日本に住む植物オタクだった。来る日も来る日も植物を愛で、植物に恋をして、植物図鑑を持ち歩き、そして植物のために生きてきた。

そんな本当にくだらない日々がこのはにとって本当に大切だったのだ。

わたしは今でも勿論育てていた植物の名前、特徴、ニックネームも全部思い出せるからね!!


しかし気づいたらここ異世界イグドラシルに生まれ変わっていた。

ちなみになんで生まれ変わったかは思い出せない。そこのところを思い出そうとすると頭の中に霧がかかったようになるのだ。なぜだろうか。


それはさておき、わたしが心葉だったという事実に気づいたのはついさっきだ。

うっかり新種の毒草を食べてしまって寝込んでいたところ、この事実を思い出したのだ。

日本人の24歳女性の植物マニア心葉としての視点を手に入れたマリーはまず自分の環境に驚いた。


私は今高熱を出して寝込んでいるためベッドに横たわって板の隙間から見える外の世界を眺めていた。しかし、気づいたらわかった。なんだこのベッド。虫食いだらけで汚れで茶色く変色している。ほかにも色々とある。


なにこれ。汚いしお腹すいたし何よりなんだこの環境。不潔にも程がある。周りの環境に絶句していたところ、マリーは外を見て気づいたことがある。

そこには前世と変わらずそこに植物があった!

日本にあったものは勿論、その他にも異世界イグドラシルには日本にはなかった沢山の植物が生息しており、ここ貧民街は森と隣接しているために沢山の植物が生えていたのだ。

こればかりは歓喜しまくった!


とにかく植物がある限りはこのは、いやマリーの元気は尽きることはない。


記憶をたどってみるとマリーはここヒューケラ領の果のピケ村に住む五歳の女の子であることがわかった。マリーの両親はリサとギルといい、彼らはとても優しく強い、とても良い親であることもわかった。ちなみにマリーは一人っ子らしい。ここは残念である。兄弟姉妹がほしかったのに!


父さんのギルは毎日このピケ村を守る兵士をしている。彼は真面目で村の皆に尽くす姿から皆に好かれ親しまれているそうだ。

母さんのリサは近所の人たちと協力して野菜を作っているらしい。このはの記憶が目覚める前は微塵も興味がなかったが今は別だ。植物に関わる仕事だよ?!やるしかないじゃん!!というわけで私はお母さんの畑を手伝おうと画策しているわけである。


あのあと外を見渡してみたところ、地球にはない植物がいっぱい生えていた。もう早く外に出たくてしょうがない!!!!

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