猫縁~猫が取り持つ男女の縁~
タヌキング
うちの子の方が可愛いです
俺の名前は真田 敦(さなだ あつし)。一応、高校で二年生をしているが、あまりにボーっとして日々を漫然と過ごしている。
最近あった変った事と言えば、猫を飼い始めたことぐらいだろうか?白猫の子猫のマシロちゃんである。ヤンチャな盛りだが、これが可愛いのだ。
スマホの待ち受けもマシロちゃんにしていると、クラスメート達にそれを発見され「えーっ、真田って猫飼ってるの?」「可愛い♪他に写真無いの?」等と矢継ぎ早に言われ、高校生活で初めて注目された。まぁ注目されているのはマシロちゃんなのだが。
そんなことがあった放課後、皆が足早に教室を後にする中、俺はいつも通りワンテンポ遅れてスローペースでゆっくり鞄を持って教室を出ようとする。
するとある女子から声を掛けられた。
「待って下さい。」
ん?と思って声のした方を向くと、そこには源 裕子(みなもと ゆうこ)さんという俺のクラスメートの女の子が立っており、何やら機嫌悪そうに俺のことを見ている。
ここで源さんのことについて説明しないといけないだろう。俺なんかモブ顔の男はどうでも良いが、やはり女の子というモノは、どうしても容姿が気になるだろうし。
源 裕子さんは一言で言ってしまえば、ガリ勉で両サイド三つ編みで纏めている女の子。ぶっちゃけ漫画なんかで一人は居るキャラである。だが彼女、この間の中間テストで学年一位になったんだから大したものである。
後これは余談なのだが、胸の膨らみが他の女子より明らかに大きいので、俺は密かに彼女は隠れ巨乳じゃないかと睨んでいる。話題にならないところを見ると俺しか気付いていないようなので誰にも話したことは無いが。
そんな彼女が、俺みたいな冴えない怠け者に何か用だろうか?
ちなみにアオハル的展開を期待するには俺達の関係はあまりにも稀薄であり、二年生の11月現在を持ってしても両手で足りるぐらいしか会話したことが無い。
「み、源さん、何か用?」
声から自分の緊張具合が分かる。女子との免疫があまり無いことと、あまり喋ったことの無い人のダブルの効果が俺をこんなに緊張させているのだろう。せめないでやってくれ。
俺をこんなに緊張させている源さんは次にこんなことを言い始めた。
「昼休みに買っている猫ちゃんの自慢をクラスの皆さんにしていましたね?」
「えっ?あぁ、はい。自慢したつもりは無いけど。」
まさか猫の話が今出てくるとは思いもしなかった。怒っているところを見るに猫嫌いなのかな?
「ちょっと、猫ちゃんの写真を私にも見せてくれませんか?」
「えっ、あっ、はい、少々お待ちを。」
猫が見たいのか?いやそれにしては眉間にシワが寄ってるよ。怖いなぁ、猫の写真で癒されてくれないだろうか?
俺はとびっきり可愛い万歳しているマシロちゃんの写真をスマホの画面に出して、源さんに見せた。
「ほぅ、これは中々・・・。」
ジーッと写真を見つめている源さん。見つめている間に顔がだんだん和らいできたように思えたが、彼女はハッと顔を横に振って、再び眉間を顔に寄せてこう言い放った。
「私のクローバーちゃんの方が可愛いです‼」
「えっ?」
突然大声を出すのでビックリしたが、鼻息荒い彼女は自分のスマホを取り出し、画面をコチラに見せてきた。するとそこには丸まって寝ている可愛らしい小さな黒猫の姿があった。
「ねっ、ほらっ、可愛いでしょ?可愛いと言いなさい‼」
「か、可愛いです‼」
何という言葉の圧だろうか?こっちまで声が大きくなってしまった。
どうやらこの人、自分の猫を差し置いて、俺の猫が可愛いと言われているのが我慢ならなかったのだろう。
中々の親バカっぷりである、後半に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます