17 名称不明 魂の商人 開戦
それぞれ軽く深呼吸をし、メンタルを整えてから扉を開いた。
……普通に開いた。
入居者のいない貸しテナントなのに。
つまりはこの先で待つ者が、来訪者の為に鍵を開けたという事だろう。
(分かっちゃいたけど……居るんだな、此処に)
だからこそ、この扉は開いた。
そうして踏み入れた室内はそう広くない。
加えて入居している業者が居ない為か家具など何もなく、故に遮蔽物が無い事も有り、玄関先からすぐにそれは視界に映る。
明かりのついていない部屋の中心部。
そこに佇むどす黒いフードを纏った……骸骨としか言いようがない何か。
(あれが……怪異……)
人外。
化物。
初めて目にする、実体を持つ怪異。
「……白瀬君は此処で待機だ!」
そう言って霞は真から距離を取るように、怪異との距離を詰める。
霞がこれから取る戦術は文字通り距離を詰めて徒手空拳で怪異を叩き潰すというものだ。
その為には距離を詰める事は必須でそして……そうする事によりその戦いの余波が真に届きにくくなる。
……突入前に軽く放した打ち合わせ通りの動き。
怪異の専門家としては最終手段のような動き。
そうした動きを見せた霞は拳を握り、そのまま怪異へと人外染みた速度で飛び掛かる。
握られた拳には怪異の専門家の技能を駆使したオーラの様な物を纏わせており、それが威力を増大させるらしい。
その拳で物理的な解決を狙う。
そんな本人曰く分が悪い戦いのその後ろで……真は観察を始めた。
素人なりに精一杯頭を回し、目の前の怪異を無力化する為の策を考えるのだ。
成功したとしてもまぐれでしか無いが、所謂正攻法での勝ち筋を探る。
そうして霞の先手必勝戦法により有無を言わさず始まった戦いは……速攻で動きがあった。
霞の握った拳。
オーラを纏った拳が瞬時に怪異に放たれる瞬間、いつの間にか何かが握り込まれているのが見えた。
紙のような。
紙幣のような何かが。
それが何なのかは一般人でしかない真の動体視力では追い切れず、霞の拳が怪異へと叩き込まれ……次の瞬間、弾き飛ばされた怪異が壁に衝突し、爆音と共に大穴を空けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます