愛のかたち 幸せのかたち
春夏秋冬
プロローグ
愛とは何か、幸せとは何か。オレにはわからない。目に見えない形を成していない、不定形なそれらをもし「かたち」として表すとしたら、それらはどのような「かたち」になるのだろうか……。
「
なんてことはないいつも通りの放課後のある日の事。後輩である
オレはまさかの言葉を受け止めることが出来ずに硬直してしまった。そんなオレを見て彼女は白い歯を出して大きく笑うのだった。
オレは必死に何かを言おうとするのだが、何も出てこなかった。
「だめですか……?」
愛華は眉を下げて悲しそうな顔をした。
「あの、左目、どうしたの?」
オレはある種の逃避として、前に会ったときの彼女と変わった部分を指摘した。彼女は左目に眼帯をしていた。オレは指をさして問うた。すると、彼女は「えへへ。ちょっと」と恥ずかしそうにして笑うのだった。
「幸司先輩もケガは治りました?」
「それは大丈夫だけど、さ」
オレがバツが悪そうな感じでいると、それで、と話を元に戻してきた。
「私からの幸司先輩への大切な贈り物になります。受け取ってください」と話を逸らすかのようにして言葉を紡いだ。
愛華は両の手の上にちょこんと乗る程度の大きさの四角い箱をボクに差し出した。オレは小首をかしげた。そしてそれは何かと尋ねて見た。
「これが、私からの幸司先輩への、愛のかたちです!」
彼女はそう言って差し出した物を開けて見せた。オレはその中身に驚愕した。彼女とそれを何度も見合わせてしまった。それを見せた彼女は童子のように純粋に、まるで幸せそうな顔で優しく微笑むのだった。
オレは愛華のこれをどのようにして受け止めてあげればいいのかが分からなかった。
それからだ。オレが愛とは何か、幸せとは何かという事を、探そうと思ったのは……。
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