【19・シショク】
パンのいい香りがしてきた事に私は気付くと、イリスさんやヘレンちゃんから離れて一目散にリューリの元に走った。
「リューリ!出来たのかい!」
待ち切れないので、リューリや一緒に来たメイドさんの周りをウロウロ。
早く!早く、食べたい!
「ちょ、ちょっと!危ないって!持って行くから待ってよっ!」
「アリア様っ、歩きづらいですぅっ」
リューリとメイドさんが注意してくるけど、パンの香りで早く食べたい私はそんな事気にしてられなかった。ハンバーグっぽい匂いもする!果物も!
グルグルと歩き回る私は、急に訪れた浮遊感に驚き後ろを振り向いた。
「アリア様、はしたないですよ」
おふっ……シェリンダおばあちゃんかい。相変わらず、気配なく持ち上げるのやめて。怖いから……。
「…………降ろしておくれ」
「準備が出来るまで我慢してください」
「そんなぁー……大人しくしてるからさぁ……」
「また、邪魔をしてしまいますから」
ダラーンとシェリンダにぶら下げられた体制から持ち上げられすっぽりと抱っこされ、顔を合わせながら懇願するが、無理だった……。
「ふふっ!アリアが大人しいわ!」
やだ、ヘレンちゃん、見ないで! 恥ずかしい!
ヘレンちゃんが私の様子に楽しそうに笑ってくるが、この姿じゃただのお猫様じゃん。伝説級の魔物じゃなくて魔獣?の威厳がっ……。
「準備出来たけど……って、アリア!おばあちゃんに迷惑かけない!」
「なんで?!」
酷いやっ……私、むしろ捕まってる被害者なのにっ……!
昼食の準備が出来て私たちの元に来たリューリが、私だけに注意してくるが言いがかりである。
「私がこのまま連れて行くからいいわ」
え、マジで?自分でいうのもなんだけど、中々の重さだよ?そんな心配を他所にシェリンダは、私を抱っこしたままテラス席へと向かったのだった。
テーブルの上を見ると柔らかそうなパンがどっさり入った籠や皿に持ったサンドイッチ。フルーツジャムにサラダと肉料理。それぞれが美味しそうに並べられていて、涎が出てきそう。
さっきまで無い知恵絞って魔法について話をしてたから、余計にお腹が空いた。
シェリンダは私を足元に降ろすと私の前にも料理の数々。さっそくとばかりにかぶりつけば、口に広がるあのふわふわの食感。
「ん〜!美味しいい!!肉汁もソースと絡んでてそれをパンが吸っていて、美味しいじゃないか!」
たまたまサンドイッチを口にした私はその美味しさに感想を言いながら、さらに食べ進めた。
私の様子に見慣れないパン料理に戸惑っていた連中も、それぞれ手にして食べると目を見開いた。
「「美味いっ!/美味しいっ!」」
「まぁ!なんて甘いの!」
「味の染み込んだパンも旨いのぉ!」
男性陣はガツガツとハンバーグサンドイッチを食べ、女性陣は丸パンを食べて嬉しそうにニコニコ笑った。
「やったー!どう?全部、ふわふわで柔らかいでしょ?丸パンはジャムを付けると甘くなっていいよ!サンドイッチ。あー…肉を挟んだパンは食べ応えもあるでしょ?」
全員の反応にリューリはガッツポーズをして喜び、それぞれのパンの美味しい食べ方や説明をしながらも、自分も食べて満足そうに頷いた。
「リューリ、丸パンにジャムをかけてもっとちょうだいな」
「え?!もう?!早くない?!」
空にした皿を叩いてリューリを見上げ催促すると、かなり驚かれた。まぁ、確かに?こんもりお山になるほど盛られたのが、あっという間に無くなってるんだ。そりゃ、驚くよね?
「パンが美味しいのが、いけないんだよ」
しれっとそう言いながら用意されたパンを再びがっつく。あまーい!うまーい!
そんな私の言葉にふにゃりと優しい笑みを浮かべ、嬉しそうに私の頭を撫でるリューリの様子に私は気付く事はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます