【5・ケイヤクとナヅケ】


 あの後もゼルバさんと会話をして、この森とその周辺について私は情報を得た。


 元々、この《魔素の森》は広大に広がっていて国境を跨いでいるらしい。


 そして、ゼルバさんやリューリが居るライヘン領は王都からかなり離れているが、《魔素の森》と隣接している為、魔物が出て来やすくその監視と防御も兼ねているようだ。


 裕福とは言い難いが、領民とは仲がよくそこそこ上手く暮らしているらしい。まぁ、元はゼルバさんが平民からの武勲を立て騎士爵を得て家督を息子さんに押し付け……じゃなくて、譲ったらしい。


 気候は温暖で過ごしやすく作物も育ち易い。



「最近じゃ、このリューリのお陰で食べ物も種類が増えて特産も出来そうなんじゃよ」


「おじいちゃん、褒めても何も無いよ?全部、皆が居ないと出来ない事だし、せっかく食べるなら少しでも美味しいのが、いいでしょ?」


「へぇ…坊や、ちょっとおいで」


「……な、なんですか?」



 益々怪しい……。ってことで、リューリを呼び付け従魔契約をして聞き出そうと思った。


 何故、普通に聞かないのか?って?そんなの私の知識からすれば、目立つし念話をするにはこうするしかないからだ。


 私の目の前にきたリューリの足元に魔力を流せばそこは青白く光り、魔法陣が展開された。驚く2人を余所に内心では魔法出来たー! と喜びながら満足気に頷いた。



「こ、これはっ?!リューリっ?!」


「な、なにっ?!これっ?!」



 魔法陣が消えると私はやっと2人に説明をしたのだ。



「なに、慌ててるんだい?アンタらが面白そうだから、ちょいとこの坊やと従魔契約をしただけさね」


「……従魔契約……?」



「ただし、勘違いするんじゃないよ?アンタら人間のゴタゴタに私は付き合うつもりは無い。私を変に使おうつもりなら、直ぐに全てを焼き払ってやるからね?あくまで、暇つぶしとアンタらが気に入ったからするだけさ」



 しれっと話す私に、普通だったら逃げだすか、こっちの話を聞かずに攻撃してくるかぐらいするはず。 まぁ、攻撃されてもやり返す気満々だけど、この2人は肝が据わってる。


 ま、一番の理由はリューリが転生者の可能性が高いから、一緒に居て色々話して楽しみたいからね。



「………ほら、いつまで惚けてるんだい? アンタは仮にも私の主人になったんだ。名前ぐらい付けたらどうなの?」


「………主人? 僕が……? はぁああ?!なんでっ?!おじいちゃんでいいじゃん!」


「うるさいねぇ…。ゼルバじゃ、老い先短いだろ? いくらアンタらを気に入ったとはいえ、人間は私らより元々の寿命が短いんだ。楽しむなら少しでも長い方がいいだろ? 当然じゃないか」


「いやいやいやっ! 僕なんて楽しくないから! 弱いし子供だよっ?!」




「つべこべ言ってないで、さっさと私に名を付けな!」


「はぁぁぁー!? 理不尽っ!」


「ぶぁっははは!! フェアリアルキャット様が居れば儂も安心じゃ! ほれっ! せっかくなんじゃから名前を付けろ」


「おじいちゃんまでっ?! ああっー!! もうっ、付ければいいんでしょっ! 付ければっ! ただしっ! 変な名前でも拒否権ないからねっ!」


「ふんっ! 解ればいいんだよ解ればねぇ」



 やばっ、この子面白い!



「んっーー……アリアっ! フェアリアルキャットだからそれでいいでしょっ!」



〈アリア〉ねぇー…。変な名前にしたら頭を小突こうとしたけど、案外まともじゃない。



「な、なにっ?!」



 私が、ジッとリューリを見ていたらさっきまでの威勢はなくなり、今度は不安そうにオドオドとして、更に私の笑いを誘った。



「ククッ……なんでもないさ。〈アリア〉ね。せいぜい、私を楽しませておくれ?リューリ」

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