芝刈りおじさん
ぽろん
第1話 芝刈りおじさん
※グロ表現あり、苦手な人は読むのを勧めません。
『おい見ろよ、あのジジイまた芝刈りしてるよ。』
『ねえ、なんで芝は刈られてもう無いのに、
芝刈り機に乗ってグルグルしてるの?』
『さあな。頭がおかしいんだろ。気味悪いからもう行こうぜ。』
若者達が気味悪いと陰口を叩くのは、
芝刈り機に乗った、ある老人の事だ。
彼の名は“芝山刈ノ亮”、年は不明。
公的機関から芝刈りを委託された業者として、このA総合公園の芝刈りを行っている。
だが、実際には芝など等に刈終わっており綺麗に整っている。なのに、毎日同じ時間に来て芝刈り機に乗って、定時の時間になるまでひたすら芝刈りを続ける。
最初は何も感じなかった近隣住民達も、
その異様さに気づいてきていた。
子を持つ親は彼には近づくな、何をされるか分からないと教育をしている。
いつのまにかついたあだ名は“芝刈りおじさん”。
“芝刈りおじさん”は本当に何者なのか、
それは誰も知らない、知ってはいけないのだ。
そんな芝刈りおじさんがいつもの様に芝刈り機に乗っていると、ある1組の親子が遊びに来ていた。
『うわあ見て!この公園すごい広い!』
『そうね。すごい広いわ。』
この親子は最近A市にある事情で引っ越してきた親子だ。子供は公園の広さに感動し、顔から喜びが溢れ出ていた。
一方の母親はそんな子供の様子を見つつも、どこが憂いのある表情だ。
子供が芝刈りおじさんの方を指さしてある事を言った
『ねぇ...あのおじさんの周りにいっぱい人いるよ?』
母親は芝刈りおじさんの方を見るが、おじさん1人しかおらず、子供の言う事に疑問を持った。
『何言ってんの?1人しか居ないじゃない。』
子供は納得せず、さらに詳しく状況を話す。
『ううん!いっぱいいるの。あの芝刈り機にいっぱいね、真っ黒い人たちがしがみついてるの...。声も聞こえない?“...助けてぇ。痛いよお。”って。』
母親はその異様さ寒気がしてきた。
子供にはきっと何か異様なものが見えているのだと思った。
『...へ、へぇそうなんだ。そ、そしたらもう今日は帰ろうか!引越し祝いにお寿司でも食べようかしらね。』
母親はこれ以上ここに居てはいけない、そう察知し子供にもう帰ろうと促す。
しかし...
子供の様子がおかしい。
『お母さん、何言ってるの?
私、帰らないよ。あの芝刈り機で遊ぶの。
沢山の人間の魂を刈り取って刈り取って、
天国なんかに行かせないように、めためたにして、ずぅーーっと苦しんでもらうの❤️』
目が虚になり、話口調は笑ってはいるが先程までの無邪気さなどはとうに消えていた。
『何言ってるの?怖いよ...ねぇ!帰ろう!!』
母親は叫ぶ。
すると...
『どうしたんですか?』
芝刈りおじさんが話しかけて来たのだ。
にこやかに話しかけては来たものの、やはり目が虚で恐怖を感じる。
母親は、この男もやばいと感じたが
体が動かない。
『なんで、体が動かないの!!?逃げたいのに!!』
子供がある事を口にする。
『ママ、良いなぁ。』
何を言っているのか良く分からない母親は、子供に怒鳴る。
『良いなぁじゃないわよ!!!助けなさいよあんた!!気味悪い事ばかり言いやがってふざけんじゃねえクソガキ!!!』
これがこの母親の本性だ。
なぜこの親子はこの市に辿り着いたのか。
それは母親の故郷であると同時に、この公園ならばあることが出来ると考えたからだ。
実はこの2人は本当の親子ではない。
この女は誘拐犯だ。付き合っていた相手が既婚者で子持ちだった。腹を立てた女はその男の子供を誘拐し...交際相手の男とその本妻をバラバラにして殺害した。
だが、可愛くもない他人の子供に“ママ”と呼ばせ、親子を演じることも、何もかも疲れていた。
もうこの子供も殺してしまおう。
そう考えた母親、否、誘拐犯はこの公園の奥にある森で子供を殺して、バラバラにして、土の中に埋めるつもりだった。
子供は誘拐犯に問いかける。
『ねえ、ママがママじゃないのは知ってたよ。だって顔が似てないんだもん。家の中だとずっと私を叩いてきて、パパの名前を叫んで物を壊して。本当におかしい人だよね。
パパも、本当のママももう居ない。お前が殺したんだから。
お前なんて大嫌いだから、芝刈りおじさんにめためたにされちゃえ。』
その言葉を聞いた途端芝が突然、誘拐犯の体に纏わりついて来た。
そして、芝刈りおじさんが誘拐犯の目の前に立つ。
『あなたの魂なら、バラバラにしてもだーれも悔いてはくれませんねえ。凄く殺し甲斐がありますよ、ワクワクします。』
本当に心から殺戮を楽しむ様子が、子供の無邪気さに似ていた。
『私はね、人間ではなくて死神なんですよ。
人の魂を喰らって、バラバラにして、絶望の淵に追いやるのが大好きな化け物です。
日頃公園でずっと芝刈り機に乗って、芝を刈ってると思われてるけど、本当は私が今までに殺した人間の魂を芝にして、私が永遠にいる限り刈り取ってるんです。刈り取られる瞬間の痛み、絶望、あれこそが私の快楽そのものだ!!』
芝刈りおじさん、否、死神は高らかに自分の正体を明かした。
そして、誘拐犯に最後に伝える。
『なんで私があなたを殺めるか...あなたの周りに2人の黒い魂がずっといらっしゃるから、纏めて刈り取りたくなったのです。』
誘拐犯は後悔した。
今更遅いことは分かってる。
だけど、まだ死にたくはない。
2人も殺した奴の言うセリフではない事は分かってはいる。
なんで、こうなったのかなあ。
“ジュパッ”
“ゴトンッ”
誘拐犯の首は死神によって飛ばされ、体は芝刈り機で粉々に粉砕された。
『さあてこの女は始末した。お嬢ちゃん、大丈夫かい?』
芝刈りおじさんは誘拐犯を粛清した後、
子供に話しかけていた。
『...あれ?ここはどこ?私なんでここにいるんだっけ?』
子供は今までの記憶を無くしていた。
そして、なぜこの子供があれほど恐怖を感じる言葉を話していたのか...
芝刈りおじさんの殺戮への思いと、子供の誘拐犯への憎しみが共鳴したのだと考えられる。
この子供は使えそうだ...と芝刈りおじさんは考えた。
『お嬢ちゃん。君はどうやらご家族とはぐれてしまってここにいる様なんだ。ただ、みた感じ親御さんも居ないから、もし良かったら僕のところにしばらく一緒に住むかい?』
そういうと子供の目がまた虚になり、
『うん。わかった。私、おじさんと一緒に住む。』
と口走った。
この子がどの様に芝刈りおじさんと一緒に殺戮をするのかは分からない...ただ殺される未来をおじさんは救ったのである。
そして...
“あれ、私なんで芝になってるの!?”
先程殺された誘拐犯の魂が芝と化していた。
目の前には他に芝にされた人たちの魂の叫びが聞こえる。
“ウギャャアアア!!痛い、辞めてくれー!!!”
ブチブチブチと芝が刈られる度に断末魔が聞こえる恐怖ほど辛いものはない。
すると、目の前にかつて誘拐犯が育てていた子供がいた。
芝刈りおじさんは子供に芝の借り方を教える。
『良いかい、芝を刈る時はしなやかに!』
『うん!やってみるね!!』
子供なので流石に芝刈り機には乗れないので、鎌を持って芝を刈る。
しかし子供だからしっかり一発で芝を刈りきる事が出来ない。
刈られている他の魂達も、一発で仕留めてもらえない、痛さがずっと続くという地獄の様な苦しみを味わっている。
芝刈りおじさんは、芝が苦しみ悶える様子を見て快楽の境地に達していた。
“ウゴァァァァァ!!アァァアア!!!”
“ギャァァァァァ痛い!!!痛い嫌ァァァァ!!!”
“私もこの後刈られる...”
誘拐犯は覚悟してその時を待つ。
そして子供が鎌をもって、誘拐犯の前に来た。
『ママ、だあぃすき❤️』
“グチャ”
終
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