第二章 サイレントナイト 四話


「ところで昨日、空き巣入られてたんだけど」


「警察呼べよ」


「『110番の回線に、空き巣が入りました』……」


「っていうかマジ、なにしてんの。警察。とっととテロリスト捕まえろよ」


「昨日の電車ジャック、誰も捕まってないってホントなの?」


「なんでも警官が捕まったらしいぞ」


「は?」

「え?」


「警官がテロに加担したって、闇が深すぎる……」


「昨日電車に乗った生き残り、みんなテロリストって、ホントなの?」


「『事件発生の推定時刻八時、事件の終了推定時刻一八時、この間に乗客はテロリストの勧誘を受け、拒否した乗客はすべて殺害されたと見られています』(山手線)」


「結局、何人死んだわけ?」


「話では都内だけで300万とか……」


「地下鉄サリンの比じゃないな」


所詮しょせん噂。都市伝説と変わらんな」


「でも、山手線がずっとぐるぐる回り続けたのは事実よ。他の路線も全部終点に集まって、生存者は線路上から避難するという空前絶後の出・線路期」


「帰宅してない人数がもうヤバすぎて、捜索願いと問い合わせで警察と交番の回線がパンクしたらしい」


「それこそなにしてたんだよ、SATとSITは」


「都内の路線八十あるんだぞ? それに路線ごとに何車両走ってると思ってんだ? その上さらに都内随所で抗争とテロ騒動。特殊警官が数千いても足りないね」


「『テロリストからの犯行声明はなし。ただし、「電車の強制緊急停止、警察の動員、SAT、SITの出動、自衛隊の出動、ホーム上の乗客及びマスコミに対する通知を禁止する。全路線の500万人の乗客が人質と思え。」このような通知が各鉄道会社及び県警本部になされたと思われており』以上が概要」


「都市部はもう駄目だな」


「地方は?」


「事故多発で幹線道路は交通不能。救急車も消防車も大幅に不足」


「にしても昨日の事件は仕方ないにしても、今、この今日は、警察何やってんのさ、ほんと」


「銃の回収だろ?」


「もう自衛隊でろ。はよ」


「みんな銃持って、何万人もテロリストがいる中で、銃預けるとか無理でしょ。自己防衛権は行使されてしかるべき」


「預けなかったら銃刀法で捕まんで」


「何万人じゃなく、何百万」


「警察がテロで捕まるこの現状、捕まるも何もある?」


「銃刀法は全員銃を持ってないっていう前提でしょ? みんな銃持って、テロリストは銃を放棄しない、じゃあ自己防衛のために銃持っとくべきでしょ。預けるとか愚の骨頂」


「お巡りさーん、ここにテロリスト予備軍がいまーす。捕まえてくださーい。あ、そうだった、警察は金持ちと政治家の“私衛隊”になったんだった」


「きっと警察の代わりに『歯車』がやってくれるって」


「いつから日本はアメリカになったんだ……」


「昨日からだよ」


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