ゲームの悪役貴族に転生した俺、主人公を英雄に覚醒させる【噛ませ犬】のはずなのに、努力しまくったら俺が英雄になってました。※メインヒロインも迫ってきて困ってます

水間ノボル🐳@書籍化決定!

第1話 ゲームの悪役に転生した件

 俺は目が覚めた。

 

 起き上がって、鏡を見る。


 金髪と、青い目。


 すらりと高い細身の身体——


 うん。いつ見てもやっぱり、俺は【イケメン】だ。


 ……言っておくが、これは【自惚れ】ではない。

 

 周りが俺を、【イケメン】と言ってくるのだ。


「アルバート様……朝食の準備ができました」


 メイドさんが、俺を呼びに来てくれる。


 そう。俺は貴族だ。


 しかも、国王に次ぐ超高位の。

  

 ——俺は、恋愛戦略シュミレーションゲーム、


 【アルファ・タクティクス】の悪役、


 アルバート・フォン・マクタロードに転生した。


 アルファ・タクティクスは、一時期ネット話題になったゲームだ。


 特に悪役のアルバートが、プレイヤーに鮮烈な印象を残している。


 容姿端麗で、魔法の圧倒的才能に恵まれながらも、


 性格は極めて傲慢で、しかも超絶怠惰。


 常に周りを見下し、努力は大嫌い。


 頂点に君臨していた男だが、


 ある男に、プライドをバキバキにへし折られる。


 ——アリオス・グラスフォード。


 アルファ・タクティクスの主人公だ。


 魔法学院の卒業試験で、アルバートとアリオスは戦う。


 その戦いでアリオスの【聖剣】が覚醒し、アルバートを打ち倒す。


 【落伍者】と蔑まれていたアリオスこそ、魔王を討伐する【聖勇者】だった。


 一方、アリオスに敗北したアルバートは、アリオスを逆恨みし、力を求めて魔王の眷属に堕ちてしまう。


 魔王との決戦前、再びアリオスの前に現れたアルバートは、異形の怪物になっていた。


 もちろん、アリオスと戦って——死ぬ。


 聖剣で首を、ブッタ斬られるのだ。


 まさに、悲惨な末路。


 そんなアルバートに、プレイヤーがつけた渾名は、


 【噛ませ犬】  


 【踏み台】


 【養分】


 酷すぎて笑えない。


「破滅を回避するには……主人公に勝つしかない」


 魔法学院の卒業試験——学生同士の決闘。


 ここで主人公に勝てば、アルバートは闇落ちしない。


「とりあえず、ステータスを表示しよう」


 アルバート・フォン・マクタロード

 レベル:1

 体力     30

 魔力     200

 筋力     13

 防御力    9

 魔法攻撃   150

 魔法防御   120

 敏捷     15

 武器攻撃力  10

 ジョブ:なし

 スキル:傲慢、怠惰


 極端なステータスだ。


 魔法に振り切っている。

 

 レベル1で魔力が200もあるし……


 アリオスは真逆のステータスで、体力、筋力、武器攻撃力……要は物理が強い。


 もしアルバートが物理を強化すれば、完璧なステータスになる。


 アリオスにも、絶対に勝てる——


 つまり、アルバートは生き残れる。


「まずは物理の強化か……」


 アルバートは、【剣術など下賤な民衆のもの】とバカにしていた。


 だから、まったく剣術の鍛錬をしていない。


「剣術の鍛錬をしよう。剣ならあいつに頼めば——」

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