第23話 軍人は…
さ〜て、今日は少し飛ばし気味に進んで行きますかね。
昨日の夜はマギさんとルイさんがなんか話してたけどそれについては聞かなかったことにしたらいいよね。フィオさんの状態も心配だし早めに大きい街に行きたいよね。
「それでな、今日はこの50の目盛りになるまで踏み込んでいいんじゃな?」
午前中の運転手はじいちゃんにやってもらってる。昨日までは30までにしてたから少しスピードアップだよ。
高機動車のスピードメーターはあえて日本で使われてるアラビア数字のままにしてある。こっちの人間にわざと不親切にしてるのは使いにくくするため。じいちゃんには教えてるけど、広めたくはないからね。
「うん、国境はさっさと越えたいからできるだけ進んでおきたいんだよ。
これが速度を表してて50の速度だとだいたい馬車の3倍を超えるくらいになるはずだよ。馬と違って休まないでいいから1日で進める距離だとかなりになると思うよ。」
「うむ、それにしても本当にすごいもんじゃ。これほど揺れずにこんな速さで走るなんてのぅ。」
「そこがゴーレムの便利さだよね。魔力の続く限り休む必要ないし。」
この高機動車ゴーレムには燃料計に当たるところが魔力計になってる。魔力がなくなると止まってしまい、補充するとまた走れるようになる。ほんと魔法って便利だよね。
「じゃなぁ… ところでティーロは軍人に興味はあったりするのかの?」
ビクっとルイさんの肩が上がったのがルームミラーに見えたけど気づかなない振りをしといてあげるよ。じいちゃんもなかなかエグいねぇ…
※ ティーロは後方警戒のために助手席にもルームミラーを付けています。
「う〜ん… ないことはないけど、俺が軍に入るとどう扱われると思う?」
俺もそんなにイイヤツじゃないよ?
「そうじゃのぉ… こないだのなんとか言うAランクを倒したと言ってもCランクじゃから階級は良くて少尉か普通に軍曹辺りかの。扱いはハンター出身者や食い詰め者をまとめた小隊か分隊の隊長になって、最前線で使い潰されるってところになるじゃろ。」
「使い潰すっていうと?」
「そのまんまじゃ。斥候、突撃、
「うわ… ほんと使い捨て扱いって感じだね?」
「国軍から見ればハンターは信用できない
「これがBランクとかAランクだとやっぱり違うの?」
「そりゃ違うわい。得意によって扱いは変わってくるが切り札扱いで後ろからでかい魔法を打ち込む役をしたり、突撃の主力として重要な局面を任されたりするじゃろうな。」
へぇ、そんなに違うのか。
「こないだのあいつだとどういう感じ?」
「あぁ〜… あれなら野戦や攻城戦の主力じゃろうな。子爵が何を思って囲ったのかは知らんがAランクの火力は十分に軍の主力になりうるものじゃな。」
「そっか〜… あんなのでも主力なんだね…」
「うむ… 最近はきな臭い噂も耳にするからあまり軍とは関わらん方が賢明じゃろうな。」
そういうわけで、俺たちをスカウトするのは無理だと思うよってことで。
午前中として時速50キロで3時間くらいぶっ通しで走ったから当初の予定よりなかなか進んでる。まぁ直線で進むわけじゃないからそこまで進んでる感じはしないけどこれを馬車で行くなんて思うと現代日本人の感覚からすると… やっぱり日本人はせっかちなのかな?
「そろそろ昼の休憩にしようよ、今日はじいちゃんの好きなもの作るよ。」
「おぉ! ええのか? それならあの辛いスープがいいの! できるか?」
「ピリ辛味噌ちゃんこだね、あの時より手抜きになるけどいい?」
「はっは! ほんとにできるんかい、あの辛さと旨味が忘れられんでなぁ!」
「ガリック、ジンジャ、チリはあるし味噌も自分たちで使うぶんはあるから余裕だね。肉は普通のオークだけになるけど許してね?」
「おやおや… いいのかい? この人のわがままを聞かなくてもいいんだよ?」
じいちゃんはハマったみたいだ。男の人はこういうガツンとくるやつ好きだよね、俺もそうだけど。
今回は土鍋じゃなくて寸胴で多めに作っておこうかな、ストックしておけばすぐ食べられるし鍋っていうよりスープとして食べるように具も調整しよっと。
「食材にはまだまだ余裕があるし多めに作って置いておきたいから大丈夫だよ。
あ、じいちゃん、そこの北から合流してくるとこを少し過ぎた辺りで停めてもらっていいかな?」
調理は手早くやりたいけど寸胴いっぱい作ろうと思うとやっぱりそれなりに時間はかかる。
食材のカットはばあちゃんとマギさんに任せて俺は高機動車の点検。点検と言っても魔力の補充と足回りの確認くらいだから10分もかからない。
ルイさんには見張りをお願いして調理していこう。土魔法でかまどを作って火を着けて、鍋にガリックとジンジャ、オークの脂身を入れて香りだし。鍋がでかいし材料もたっぷりだから焦げないように気をつけて… そこに魔法で水を入れるんだけど火魔法と水魔法で最初からお湯にして入れちゃおう。かまどの火力だとなかなか沸かないからね。とりあえず煮えにくい根菜を入れて少し煮よう。
「ふむ… この間も思ったがティーロは料理のレシピを売ろうとは思わんのかい?」
「う〜ん…、売れそうなのなら考えるけどこれは売らないかな。」
「どうして…?」
ばあちゃんとマギさんはどうしても気になるみたいだね。錬金術師と料理屋の店主の2人からしたらレシピの価値をわかってないように見えるのかもしれないけど俺にだって考えはあるんだよ?
「これってさ、味噌がないと作れないのはわかるよね?」
「そうねぇ〜、塩だと旨味が足りないと思うわぁ〜。」
「でしょ? なら味噌を買ってくれる人にレシピを付けてやればどうなると思う?」
「このレシピをオマケで付けるじゃと…?」
「あなた〜おかえり! 今日は新作料理を作ってみたわ!
お! これは美味いな! 疲れた身体に染み渡る! それに…今夜は張り切るぞ!
きゃ〜♡
なぁ、またあのスープを作ってくれないか? 今夜も…な?
任せて♡
…あらやだ! 調味料を使い切っちゃったわ! また買って来なきゃ!」
あ、うん… 1人コントをそんな顔で見ないで!?
スベったよ! わかるってるよ! 俺にこういうの向いてないってのはさ!!
「なるほどねぇ… そうやってリピーター狙いの売り方を考えておるとは…」
「ほんとよね〜 たしかに〜こうなる家庭が〜目に浮かぶわぁ〜…」
あ、あれ? スベったんじゃなくて感心されてた…?
「まさかティーロに商売の才能があるとはのぉ、やはりあいつのとこへ紹介するかの?」
「そうじゃな、それがいいわ。」
目を閉じて休憩してたじいちゃんが話に入って来てばあちゃんとなにか合意してるけど“あいつ”って誰だろ?
それより根菜にある程度火が通ったみたいだから味をつけて肉と葉物野菜も入れちゃおう。
ちなみに作ったのは寸胴で3つ。このあとにこうしてゆっくり調理できる場所があるかわからないから作り置きだよ。
「北から商隊らしい集団が来てる。少しすればここまで来そうだけどどうします?」
「ふむ、この時期に北からだと毛皮関係じゃろ、まぁ挨拶だけして深く関わらんのが通例じゃな。」
「そうねぇ〜、人員とか〜護衛とかは〜どんな感じ〜?」
「馬車4台に、長物が見えただけで3人、護衛はその3人を含めて10人くらいです。護衛のハンターが2パーティーって感じですね。」
そりゃ街道を行っていれば他の人と出会うこともあるよね。こういうときってどうするのがいいんだろ。
「私たちは〜ティーロくんと一緒に行く旅をしてるのよ〜? どうするかは〜ティーロくんが〜決めていいの〜。ねぇ〜、ティーロくんはぁ〜どうしたい〜?」
え〜… 俺が決めるの?
作法とか知らないけどいいのかな?
「じゃな、ティーロが好きにするといいぞ?」
「ですね、ただ煽って喧嘩にならないようにはしてくれよ?」
「はぁ… わかりました、適当に対応するよ。とりあえず煮えたから食べちゃお?」
作者です
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