グラスジュエリー編

 

 僕がアルバ家に来てから2年が過ぎた。

 ここで夏を過ごすのは三度目だ。

 この時期になると嫌でも思い出す、あの日の出来事。

 徐々に暑くなってくるのと同時にフラッシュバックして来る。

 しかし、当時ほど辛くはない。

 今の僕には新しい家族がいるから。

 オルトさんを始め、マナさんとアリア、そしてマリン。

 マリンは僕とアリアの2つ下の女の子で、つまり妹だ。

 しかし、僕はまだ会ったことがない。


 マリンは産まれながらに竜力を持っていたらしい。

 竜と契約していない状態で、竜力が溜まり続けると暴走を引き起こし、竜化してしまうという。

 だから、産まれてから現在までずっと地下で生活している。

 下手に刺激を与えないようにする為、その地下室への進入は制限されていた。

 姉妹であるアリアも例外では無い。


「産まれてからずっと地下で生活なんて、想像しただけでも辛いね」

『そうでもない。生きているだけ奇跡というものだ。竜力が湧き出す中、今まで耐えている方が珍しい。本来ならとっくに死んでいてもおかしくない。それが麒麟児の運命なんだからな』

「麒麟児って?」

『その娘のように産まれながらに竜力を持つ者の事だ。両親の相棒ソシオが強いと稀に産まれてくる。今まで生きてこれたのは、そいつの母親が上手く竜力を逃がしていたんだろうな』


 あぁ、だから、マナさんはよく地下へ行っていたのか。


「でもそれって、常に誰かが竜力を逃がしてないと生きれらないってこと?」

『いや、竜と契約さえすれば問題はない』

「じゃあ、今日の夜で治るって事なんだっ!」

『そうなるな』

「そっか、じゃあ助かるんだ!」


 そう、今日はマリンが5歳になる誕生日。

 実に僕の誕生日から1週間の差だ。

 しかし、マリンの場合は誕生会は開かれない。

 相棒選エレヒールが終わるまで気を抜けないからだ。

 その分、披露宴は盛大行われるだろう。

 まだ見ぬ妹へ、誕生日おめでとう。

 会える日を今から楽しみにしているよ。

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