狐の女神に普通の転生を願ったのにそれはそれは俺の好きな要素ばかりの女の子だった。

天狐シロ

プロローグ〜

プロローグ


 アニメや漫画、ゲームで異世界で美女で選ばれし力なんてあればもう最高なのになぁ~。

 なんて思っていたらあながちそうでもないかもしれないと思い知らされることになる。日本に生まれて、日本で育った俺はある日を境に死んだ。

 

 今俺はそんな死後の世界?に居るらしい。

 目の前には世間一般で想像するような神ではなく、狐の妖怪みたいな奴が居た。


「いやぁ~死んじゃいましたねぇ~」

「……一応聞くんだが、ここはどこだ?というか狐って喋るんだな」

「ありゃ、死んだのに結構冷静?もう少し悲しんでも良いと思うけど……?」

「と、言われても……俺は自分の人生はある程度覚えているんだが……何故か名前と自分の死には靄が掛かっていて思い出せない……?」

「でも死んだってのは分かってるんだ」

「……らしいな」

「なるほどなるほど」


 とてつもなく気味の悪い違和感を感じつつもここがまるで死後の世界だと分かっていた俺は努めて冷静を装った。

 実は内心、休日に友達とネトゲをする約束をしていてあのクソみたいな正解の中のほんの僅かな楽しみをもう味わえない事に絶望していた。


「あいつ……今何してるんだろう」

「自分の事より他人の心配とは……神様的には何かあげるべきかな?」

「神様って狐はないのか?」

「まさか、元々神と言う存在は抽象的で形も姿も無い、あるのは神と言う総称や伝承くらいだから」

「でも姿はあるけど……?」

「これは君の思い浮かべる神の姿……まさか狐とは思わなかったけど」

「……なるほど」


 そういえば生前、狐耳の巫女のような子を拝んでいたな。

 まさかそのせいで!?

 

 な、何だが自分の性癖が目の前に現れたみたいで嫌なんだが……しかし、目の前に居るのは狐そのものの姿をしている。あるとすれば狐にも化けれて人にもなれる妖狐か?

 だとすれば一度その人の姿を見てみたいものだが……。

 

 そんなことを考えていると突然、その狐の身体が光出す。

 

 キィィンーー

 

 と、音を立ててひとしきり光った後にその狐の方を見るとそこには……!!

 狐の耳に9つの尻尾を持ち、巫女服を着た妖狐……いや女神が居た。


「おっと、君が変な想像をするから姿が分かったわ」

「……変って言わないでくれ」


 俺でも恥ずかしいんだから……。幸いここには俺とこの妖狐の姿をした神様しか居ないからいいけど……。

 それにしても最期にこんな素晴らしいモノを見られて良かった。

 

 ありがとうございます――俺は頭の中でお礼をする。

 そして……こんなに可愛い子に生まれていたらもう少し違う人生を送れたんだろうか?とふとそんなことを考えてしまった。

 するとこの神様には俺の心が読まれているようでクスクスと笑う。


「容姿が良くても全てうまくいくとは限らないよ?まあでもその願いを叶えてやってもいい」

「え……?」

「君が死んでしまったのも|ちょ(・)|っ(・)|と(・)こちらのせいでもあるからね。お詫びに異世界へ君の望むモノに転生させてあげよう!」

「異世界とかあるんですか!?」

「まあね、と言うか口調変わってるわよ」


 おっと……つい、自分の好きなモノを寄せ集めた神様の姿を見て敬語で話してしまっていた。

 と言うかせっかく異世界へ行けるのであれば俺はもっと別のモノを望みたい。


「いや、普通に男として生まれ変わって冒険者になって仲間の子と仲良くなるとかそう言うのが良いんですが!」


 だってもし女だと恋愛の対象が変わってしまうかもしれないし、俺はそれを想像して少し吐き気がした。

 だからよくある異世界転生系のような人生を歩みたい。日本でクソみたいな生活をしているより全然いいし、楽しそうだ。

 

 しかし神様は俺のその望みに首を横振る。


「嫌よ。もう決めちゃったし」

「俺が死んだのは貴女の責任もあるんじゃなかったですか?」

「いいえ!むしろ本当にその人の望むモノを与えてこそ謝罪というモノでしょ!!」


 いや、謝罪が空回りしてるんだが?

 

 というか……。


「どうして俺は死んだんだ?どういう死に方をしたんだ?」

「んー気になるよねぇ~それには今から転生させる世界の問題でもあるんだよね」

「問題のある世界……?」


 とてつもなく不安になってくるんだが、だって俺はその世界で過ごすんだろ?どうにか回避できないだろうか……。

 せっかくの異世界転生だけどまさかそれを拒否する日が来るとは思わなかった。


「日本で美少女に転生なら全然いいんですが!!」

「あなたの元の世界はダメ」

「どうして?」

「それも君が死んだ理由に入ってるから、今から転生させる世界へはある程度融通は聞かせてあげるけど、全部はダメ。特にあなたが死んだ理由は特殊なの」

「その世界で俺に何か関与があったのか?」

「あーもう!質問多いなぁ!!もうこれ以上は受け付けないから!とりあえずあなたの望むモノは上げるからその秘密を知りたいなら自分で見つけなさい!」

「ちょっと待てっ!攻めて俺の望むモノってどっちかだけ教え――」


 しかし神様は俺の質問にこれ以上応えてくれなかった。

 そう、唐突に転生が始まった。身体が光の粒子になっていく、神様もまた同じように光の粒子になって消えてしまいそうだ。

 

 最後に神様は言った。


 ―あなたの望むモノとは別に「私の力」も少しだけ分けて上げるから死なないように次は良い人生を送ってねー

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