第39話ヤンデレの狭間
学校の授業は…ほとんど意識がなかった。
いつの間にか、部活の時間が来ていた。
教室で、西条と青木を探していた。相談したい。しかし2人とも女にうつつを抜かしていた。
西条は、円香ちゃん。青木は中島さん。
俺も人のこと言えないか。
教室を出て、廊下を歩きながら、その歩幅は、小さかった。
部活の前に来た。深呼吸をして、俺はドアを開き中に入った。
おはようございます。そう言ってすぐにみーちゃんに顔を向けた。
ん? その時みーちゃんの絵が気になった。新しく別の絵を描いていた。まだ描き始めだったが…絵のタッチがいつもと違い暗かった。
「まーちゃん…昨日はごめん。妹さんに暴力振るって。」
謝罪から入るみーちゃんを俺は、偉いと思った。
「いや、もう暴力はしないって約束したから良いよ。それより…今日部活動終わったら、話がしたい。」
みんなやはりバカップルと思ってるんだろうな。今日も部活中に会話してると。
「話? まさか…別れ話じゃないよね? 嫌よ、聞かないから。」
暗い表情と声でそう思ったのだろう。あながち間違いとも言えないが。
話を拒絶する様に絵筆を進めた。
「違うよ。別れ話じゃなくて、これからのこと。」
「脅かさないで。そんな表情で言われたら、妹さんが私と別れてよって言われてて、そんな暗い表情なのかと勘違いしちゃった。安心した。」
一瞬彼女の表情が不気味に見えた。さすが俺のヤンデレ。西条のやつの苦労が分かるな。すぐに極端な話に移行するのは。
実際のところみーちゃんの言う通り、別れてって言われてるんだよな。女の勘はやばいな。
俺は席に座り、部活動に集中することにした。部活動終わってからだよな。真剣な話だし。
気が気じゃなかったが、無事に部活動が終わった。
冬で寒いから、話すところが限られてるんだよな。そう考えながら、片付けを終えた。
みーちゃん空いてる教室で話をしよう。提案して、みーちゃんが微笑んで頷く。
廊下を歩きながら、みーちゃんが喋りかける。
「まーちゃん、もしかして結婚の話? ふふふ、嬉しい…まーちゃんってばまだ私たち未成年者だよ?」
「知ってるし、結婚の話しじゃねーし。変なこと言うなよ。」
俺はイラッとして言う。
「違った? 私の予想全然当たらないね。何かな〜ワクワクする。」
結婚とか、何言ってんだ…頭おかしいなこの子。
だけど…ついこの前だったら…みーちゃんと結婚、したいに決まってる。って同意していたろう。
そう思うと、俺の気持ちの移り変わりって、怖いなと感じる。
「あのさ俺、妹と距離置こうかなって思ってるんだ。それでみーちゃんに協力して欲しいとお願いしようかなって。」
「おー。まーちゃんさすがだね。協力するする。真面目なまーちゃんの事だから、兄妹として接したいのに、向こうが異性として見てくる。そんな感じでしょー?」
俺も異性として見てる以外は、合ってるのがちょっと怖いな。お見通しって訳か。
それは言いづらいな。そんな感じなんでとも同意するのも、莉菜ちゃんに失礼だし。
「とにかく、それでみーちゃんと2人だけの時間を増やそうと思ってさ。構わん?」
大歓迎だろうな、ヤンデレだもん。
「任せて。今までまーちゃんに負担掛けたくないから、引いてたところもあったの。これからは、まーちゃんともっともっと愛し合うね。」
みーちゃんが喜びを全身で爆発させるかの様に手を天井に伸ばした。やった、と何度もニヤけた表情で言う。
俺は何か彼女のヤンデレスイッチを押したのかもと、危惧した。しかしそれに頼らないと、妹との距離は確実に近くなって行く。
「まーちゃん。」そう言って彼女が、俺と腕を組んで手を握った。
「デート、今日は何処にしようか? ゲーセンとか? それとも服でも買いに行く?」
「いや…今日もう遅いし、デートは良いや。」
怠い…する気にならない…莉菜ちゃんとなら…はぁ〜しなきゃいけないのにな。
でも明日からで良いだろ? 協力してと言った側から、心が折れる。
「そうだね。今日はもう遅いし。まーちゃんも部活動で疲れてるもんね。ごめんね、気が付かなくて、お家でいっぱい休んでね。」
みーちゃんが、気を遣ってくれた。俺は絶対無理にでもデートさせようとするんだろうと予測してたが…良いところあるんだな。やっぱり俺の彼女だよな。
「みーちゃんありがとう。そう言って貰えると、気持ちが楽になるよ。」
「うん、まーちゃん愛してるから。それぐらい気に掛けなきゃ、彼女失格だもん。」
みーちゃんが、俺の顔に両手を当てて、キスをした。
「それじゃまたね。本当は、ずっといたんだよ?
ばいばい。」
俺から離れて、手を振りながら言う。
みーちゃんって意外に、話が通じるな。円香ちゃんもまぁ〜話しは通じたけど。
円香ちゃんと違って、そんなにベッタリじゃない…もしかして、ヤンデレじゃない?
そう思って自宅に帰ってたが、その考えは間違っていたとすぐに気付かされた。
連絡がひっきりなしに来る。連絡が異常に多くなった。
それから何日たったが家にいると、ずっと連絡が止む事はなかった。
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