第24話心の葛藤
「じゃあ僕は帰るよ。またね。」
ここはしっかりと言っておかないと、彼女と同棲しなければいけなくなる。
倫理的に良くないからね。
「嫌です! ずっと一緒にいるって言ったじゃないですか。勉強していくって。お願い帰らないで〜。」
彼女がボロ泣きしていた。
くっ…参ったな。さすがヤンデレだ。青木が言ってたけど、これ本当にC級? A級はありそうだけど。
青木帰って来たか。ちょうど良い。
「やってるな。ふふ、面白いだろ? 妹は。」
面白がって青木が言う。
…っ青木コンタクトにしたのか! それでこの時間になって帰って来たのか?
「ああ、面白いかな。個性的で、はは。」
それよりなんとか円香ちゃんをなんとかしてくれと思った。
「お兄ちゃんも立ってないで説得して。先輩帰らせないで。」
彼女が抱きついて言う。
いやその前に、お兄ちゃんがコンタクトにしたのツッコミしてあげなよ。
…僕しか興味ないんだった。
「どうしても、帰りたければ、妹も自宅に連れてくんだな。それが一番早い。」
青木が冷静に言う。
ヤンデレが家に帰してくれない。なら自宅に連れ込めって? 駄目だろと僕は心で言った。
はぁ〜仕方ない。しばらく…ここで泊まるか。
「青木がそう言うなら、両親の許可は貰ってあるんだね?」
それが1番重要だと思った。
「もちろんだとも。お前まだ妹の部屋見てないのか? アレ見たら分かるぞ。親も妹を恐れるぐらいだ。お前の写真だらけ。気味が悪いぞ?」
青木が腕を組んで、寒そうに言う。
そして僕はその部屋に入った。彼女の満面の笑みの中、くっついて離れない彼女と一緒に。
…きっも。そして怖っ。
「先輩これから毎日この部屋で2人で寝ましょ。」
彼女が言った。一応ダブルベットにしてあるけど…寝れるか! こんな部屋。
そして僕は…彼女と同棲生活? が始まった。
ちなみに円香ちゃんは、料理は全く出来ないらしい。理由は料理していたら、焦がしたりして危険だから、家族に止められてるから。
彼女との手料理お弁当を、2人で学校のベンチに座って食べるのが楽しみだったけど、それが叶わないのは残念。
だけど、2人で料理すればいつかは、出来る様になるだろうか?
彼女との同棲生活もしばらく経った。
父親には連絡してたけど。説明には一苦労だった。
ずっと勉強生活なのも嫌なので気晴らしに、円香ちゃんを動物園に誘った。
ちなみに学校に行くのと、デートは許可されている。
それ以外は、彼女と一緒なら出ても問題ないけど、違う場合彼女が凄い不機嫌になり、今は控えている。
ほぼ軟禁生活だな。
動物園の入り口で入場券を買った。
結構安くて、デートにはもってこいだと思う。
入場券の動物のイラストが描かれていて、僕の目の癒しになった。
僕は他の動物は全部素通りして、大好きなパンダに一目散に向かった。
「円香ちゃんどう? パンダ可愛いでしょ?」
どうだと言わんばかりに僕は言う。パンダは、やはり人気なだけあって人混みが凄い。
ガイドさんが、テキパキと捌く。
みなカメラを構えてパンダを撮っている。
「可愛いんですか? 私には太ったミイラにしみえないですけど。」
僕は彼女の言葉に凍りついた。
本当に僕にしか興味ないんだなと。
まぁ…一理あるか? パンダは全然動かないからな。寝てて、ほぼ動かないっていうね。
「じゃああれは、コアラ。可愛いよね? ちっこくてさ。」
僕は指を指して言う。
コアラもよく寝てる。ユウカリを食べてる姿が可愛いんだけどな。
「うーん、黒い鼻のピエロにしか見えないです。」
はい? 僕は耳を疑った。
全然ちげー。
逆にカバはどう見えるんだろ?
興味が湧いた僕は、彼女にカバがいる方に一緒に向かった。
「アレは何に見える?」
興味深々で僕は聞いた。
カバは結構動作がゆっくりしていて、それが可愛らしいんだ。
「人に見えます! 女子でそっくりな人います。」
えっ? そっち? ブラックジャーク…僕は笑ってしまった。
そっくりってこれまた酷い。
ゾウはなんて言うんだろ?
僕は癖になってしまった。
ねぇアレは何に見える?
「先輩…馬鹿にしてます? アレはゾウですよ。ゾウ!」
…ちぃつまらない。なんでゾウは分かるのよ。
いや、待てよ?ゾウに見えるって言っても、本当にそう見えるのかわからないぞう。
「何故ゾウに見えるの?」
「先輩…逆に何に見えるんですか?」
「いや…ゾウだけ分かるのが不思議で。パンダやコアラは違うじゃん?」
「…なるほど。」
「多分ですけど、多分ですよ? 先輩と知り合う前に知ったからじゃないですかね?」
「それ以外理由が思い浮かばないです。」
そいうことか! ゾウは1番有名…どうだろう? パンダも有名じゃないか?
…謎が解けたら、また謎が出て来た。
しかしこれは、円香ちゃんと上手くいくコツを掴んだかもしれない。
つまり僕にしか興味ないなら、僕のイメージをして見て貰えればその物に興味持つんじゃないかな?
しかし…それは円香ちゃんに浮気される可能性を高める秘技に思えるな。
もう…浮気されたくはない。
複雑だな。彼女を変えるのか、それともこのままでいて欲しいのか。
どっちなんだろうか?
…結婚…そうだ。結婚してから直せば良い…卑怯な選択だろうか?
「円香ちゃん、僕にしか興味ないのってどう思う? やっぱり直したい?」
僕は声を震わせて、彼女に聞いた。
今にも心臓が張り裂けそうだ。
僕は、どちらの答えを期待しているのだろう?
彼女は、首を横に振り言った。
「思わないです。西条先輩と付き合ってる今が幸せなので、その幸せを壊す様な事はしたくないです。」
彼女の返答に、僕は心の底で安堵した。
それは正直…円香ちゃんのヤンデレは、あゆみの怖さに比べたら恐るるに足らずなんだよな。
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