第14話計画への罪悪感

中島の独白


私達の計画は、完璧なはずだった。


まず西条さんがドMと信じ込ませる為、本当の情報を話す。


幼馴染だから、ある程度好き嫌いは、把握していた。だから、その情報を与えた後、彼女の性格を把握していた桜が、ドMの情報を伝える。



西条さんと、友達の会話を盗み聞きしようとした時、彼女に話しかけられた時は、心臓が止まるかと思った。



しかも、お互い目配せしていた。その事があって盗み聞きは出来なくなったけど。



西条さんと、瀧川さんを、突き放す。


合コンでの作戦も順調に進んでいた。


大川さんが彼女と関係を結ぶ。


そして、その後、私が浮気の相談をする。


そして…最後に西条さんに酷い振り方をする。

それが桜の作戦。



けど、私は彼を振る気はない。桜には隠れて付き合えばいいだけ。

彼に迫られ時、胸が締め付けられるぐらいに嬉しかった。


なのに、なぜ…告白して来ないの? 迫った癖に。



なんでなのか…早く告白してきて。

彼の背中を見て、心で催促した。


心の奥底では、自分の行動に疑問が渦巻いていた。




…彼への想いが、計画の罪悪感が沸々と湧き上がる。


桜との友情、彼への愛情に板挟みにされ、私の心は重圧に押し潰れそう。


思い返せば、この計画は、私は2人を騙すつもりだった。


桜に対する義理もあって全ては、話せない。けど、彼氏と嘘をついたことは、付き合う前に言うつもり。 


それは、私の彼への、最低限の誠意だと思ったからだ。




西条の視点


学校の屋上



西条君、好きです。私と良かったら、付き合って下さい。


和田早苗さんが僕に照れくさそうに、告白した。



僕は、彼女の事を正直なところ良く知らない。


ただ普通の子と言う印象。だけど、今の僕にはその普通と言う印象が、好きにさせる理由になった。


あゆみへのトラウマからだろう。僕は、よろしくお願いします。と彼女に頭を下げて言った。


和田さんが、はい、こちらこそよろしくお願いします。にっこりと笑って答えた。


それから僕たちは、屋上の階段のところに座り、連絡先を交換し、仲良く語り合った。




けど、やはりぎこちなさもあり、それほど会話は盛り上がらなかった。


「なぜ僕のことが好きなの?」

笑顔で彼女に質問した。



「それはね、優しそうなところと、一途なところが好きになったんだ。私あゆみと友達だから、その辺を見てて、ああ、誠実な人なんだなって。」



なるほど…あゆみの友達なのか。なら、彼女には危害を与える心配は…あるよな、やっぱり。



もしそうなったら、彼女を守る。だけど、僕のせいで、彼女が被害に遭うかもしれない。


…それでもあゆみに遠慮して、彼女を作らない。それは違うと僕は思った。



彼女と話し合って、僕らはひとまず教室に戻った。


またね。お互いに手を振り合って自分のクラスに入った。



別のクラスなんだよな。一緒ならなお、良かったのに。


それから僕は自分の席に座り、彼女が出来た事を喜んだ。



「和田さん何の用だった?」

青木が興味津々と言った表情で聞いた。



「告白された。これから彼女と付き合う。」

交際宣言を青木にした。



「和田さんか、ふーむ。」

青木が深く考える素振りをした。



「なんだよ? 気になるな、そんな考えるようなことか?」


僕は青木を見上げて言った。



「俺の勝手な考えだが、和田さんは、ついこの前、同じ部の先輩に告白していたからな。」


「それほどに日にちが経っていないから、軽い子なんじゃないかと、懸念している。だから、あまり和田さんを、個人的考えで、お前には勧めなかった。」


青木が気まずそうに言う。



「それを言うなら、僕だって、あゆみと別れたばかりだよ。」

僕は彼女をフォローするように言った。



「そうだな。お互い軽い2人だから、お似合いかもな。」


青木が笑みをこぼした。



「そうだな…円香ちゃんと付き合わなくて、悪いな。」


やはり、昔のイメージが今も鮮明に残っている。多分彼女は今も普通ではないだろう。



「妹は、ショックだろうな。だけど、お前が幸せなら良いさ。」


頬を掻きながら青木が言った。



「西条さんちょっと良いかな?」

中島さんだった。


「うん、別に来せず、声掛けてくれ良いよ。」

そう返事を返した。


「私、彼氏と別れて寂しいなーって。」

後ろに手を組んで中島さんが愛らしい表情で言った。


「ごめん、あゆみが迷惑かけて。」

僕は謝った。




「言って欲しいのは、それじゃないんだけどな〜。」


がっかりしたように言う。



「その事なんだけど…実はね、彼氏って言うの嘘だったの。ごめんなさい。やっぱり嘘ついたままじゃ良くないって思って。」

頭を下げて彼女が謝った。


「お姉さんの事で嘘ついたのかな?」

嘘をついた理由が分からない。なぜそんな手間を? 不思議になり聞いた。


「1番は友達に頼まれてだけど、もう一つの理由は察して。お姉ちゃんのことで、大変な時に…はぁ、初めから素直に言えば良かった。」


中島さんが、暗い表情で言った。



「そうだったのか! レイナちゃん気にする事ないよ。こいつ、もう彼女出来たから。」

青木が嬉しそうに言う。


「はやっ。」

口に手を当て、驚いた表情で中島さんは、言った。


 

はやって。確かに自分でもそう思うけどさ。




「西条さん、ってモテるんだね。そりゃそうだよね。」

ため息をついて彼女が言った。



「手が早いんだ。レイナちゃんも気をつけた方がいい。」

青木が中島さんを見ながら言う。



「ふふ、それを言うなら切り替えが、早いじゃない? でもそうね、私も迫られた時があったのにな。」

  

中島さん! 確かに迫った癖に別の人にって、なるよな。でも佐野から聞いたんだよ…気をつけろって。


だから中島さんは、普通の人じゃないと僕は、認識した。 



「何? お前ってやつは、レイナちゃんに迫った癖にもう彼女を? クズだったのか。」

呆れたように青木が言う。


クズって青木が言うなんて? やけに中島さんに気を遣ってるな。



「それは、西条さん騙してた私も悪いし、お互い様かもね。」

中島さんが笑っていった。


「そうだ、ちょっと心配な事があって。大川さんって偽の彼氏のことなんだけど、桜から聞いて、なんだか頭がおかしくなったって。」



「凄い深刻そうに言ってたの。なんか滝川さに、しつこく付き纏いしてるみたいで、私滝川さんが、刺されるんじゃないかって心配で。」


中島さんが、不安そうな表情で言った。


「分かった。ちょっとあゆみに気をつけるように、電話してみる。」

教えてくれてありがとうと、中島さんに礼を言った。


青木から優しすぎる、ヤンデレ製造機の身が心配だと、ジョークを飛ばされた。

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