第13話天使な友達、悪魔な友達

「なんであなたに指図されないといけないの?」

腕を振り払って、腹を立てながら言った。




「西条先輩のことでお話があるからです。別に私はここでお話しても構いませんよ?」


余裕綽々と言った表情で、彼女が言う。

ここで話されるのは、周りの視線が気になる。


「分かったわよ。行けばいいんでしょ?」

仕方ない癪だけど。」私は屋上に彼女と一緒に向かった。


階段を登りながら、なんのようかと、彼女をチラッと観察しながら探った。


屋上は、燦々と太陽が照りつけて、コンクリートの地面が、湯気を立てているようだった。


靴から熱さが仄かに感じられた。


「話って?」

体裁を繕っても仕方ない。今はイライラするから。


「お兄ちゃんから聞きました。先輩、ゴムに穴開けたそうですね。それはいいんですけど、そんなことした癖に浮気するとか、恥ずかしくないんですかね?」

円香が説教する様に言った。



「あなたに私のつらさは、分からないわよ。西条と愛の結晶作りたかったんだから、しょうがないでしょ。」

私は彼女に思いの丈を伝えた。

言う必要はなかったけど、円香の言葉に反感を覚えて言った。



「まず、そんなことしたのに西条先輩に顔向け出来る神経が分からないです。私だったらもう学校来れませんよ、恥ずかしくて。」

 

彼女の棘のある台詞に、胸が突き刺さる。

円香は呆れた表情をしていた。



「愛の結晶ってそれは2人が合意して作るものですよ。滝川先輩の押し付けがましい行為で、西条先輩がどれだけ悲しんだと思ってるんですか? 人として失格ですね、先輩って。」



「なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないの? 何様よ?」

私は怒って言った。


「じゃあ私が西条先輩とお付き合いしてたら、言うこと聞いてくれますか? 聞かないですよね? 滝川先輩って最低だから。」


何こいつ、何様よ。仮定の話させても意味わかんないだけど。


「付き合ってないじゃん。最低で結構なんだけど。それで、話は終わり。」


私は屋上から、教室に戻ろうと思った。

が…彼女に引き止められた。


「私が言いたいことは1つです。西条先輩にもう近寄らないで下さい。」


耳を疑った。近寄るな? 笑わせないで、そんなの本当にあなたには、関係ないから。


「はっ? 無理だから。」


私ははっきりと断った。

そんな事出来るわけないじゃない。


「そうでしょうね。言っても無駄でしたか。なら一つ約束して下さい。西条先輩に危害加えないって。約束してくれないと、滝川先輩ここから返せないので。」



青木円香が凄んで言う。

何言ってんの? 西条に何かする訳ないじゃん…多分。


「私は西条に危害加えるつもりないわよ。」

もちろんない。でも、先のことは分からない。



「本当ですね? 約束しましたから。それじゃもう用ないので、私帰りますね。」


ふん、私だって用はないし。


「もし約束破って、先輩に危害加えたら、滝川先輩の人生破滅させるので、覚悟しといてください。じゃ。」


彼女が去って行った。まるで嵐みたいな女ね。人生破滅? お前は悪魔かっての。


破滅させる力なんてあんたにはないわよ。

彼女の後ろ姿を見て、怒りが沸々と湧き上がった。



彼女とのやりとりが脳に響く。



次の日

西条の視点


 「一応妹が滝川に釘を刺したようだ。」


「円香ちゃん危なくない? 大丈夫かな?」

 

「妹との事だ、上手くやるさ。それに俺も、お前を全力で守る。何かあればいつでも相談に乗るぞ。」



「さすが天使な友達だな。」



「天使な友達?」

佐野が不思議そうな表情で、僕に聞いた。



「ああ、青木の小学生の頃のあだ名が天使な友達なんだ。なんでかって言うと、円香ちゃんが悪魔な友達って言われてたからなんだ。」

僕は佐野に説明した。



「ひっでぇあだ名だな。でも分かるわ。円香ちゃんがそう言われる理由。」

佐野も、噂は聞いてるのか。


「そのあだ名のおかげで、妹がヤンデレ化したんじゃなかったかな?」


「西条が、円香ちゃんは、悪魔な友達じゃない!」


「天使な友達だ! って上手くフォローしたんだ。

素晴らしいと思わないか?」


「ヒーローじゃねーか。そりゃモテるわ。西条見直した。昔のお前は凄かったんだな。」

佐野が今は凄くないと暗に言ってるようだった。



「間違いない。その後ヤンデレ化したんだ。おにーちゃんの髪の毛食べたいって、言われて…もう女の子庇うの辞めようかと、その時思った。」


だけど、その時は仕方ない。悪魔の友達が来た。って言って逃げてったところ見たら。


「俺も見てたが、それに対してお前の返しも上手かったな。お似合いだなってその時思ったんだ。」

青木が恐ろしいことを言う。


「なんでそこでお似合いなんだよ。」



でもその前に僕には、凄い懐いてたからだろう。出なかったら、それだけでヤンデレにはならない。



「うーん、でもなんで悪魔な友達って言われたんだ?」

佐野が聞いた。



「佐野、それは、普通に暴力と言葉の暴力が、悪魔的だからさ。」


「特に言葉の暴力がまぁ、とにかく残虐非道なんだけど、優しいとこもあるから、友達ってオマケでつけたらしいよ。」

僕は佐野に由来を説明した。



「あの…西条君、今日屋上で大事な話しがあるの。良かったら、来てくれますか?」

話しかけて来たのは和田さんだった。


大事な話し…もしかして…思い当たることがあり、僕の胸は高鳴った。

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