ヤンデレ彼女と天使な友達

タカユキ

第1話縛られた心

「ほんとあなたは、私がいないと駄目なんだから。」

高校の学校の、古びた木製の門が立つ前で、そう言ったのは僕の彼女。



生徒達が颯爽と学校に入っていく中、僕とあゆみは、立ち止まり会話を交わしていた。


季節は6月、夏になろうとしていた区切りの月だ。

 

時折り、僕たちを見る生徒もいたけれど、すぐに学校に入って行った。初夏の日差しが眩しくて、汗をかいていた。


だから太陽から、逃げる様に学校に向かったのだろう。


それでも、立ち話をする生徒もいた。彼等の話し声が、時折り耳に入る。


満開の梅の香りが、ほのかに甘く鼻に感じた。


彼女の名前は、あゆみ。いつも僕に罵詈雑言言ってくる。一応彼氏なんだけどな。そろそろ別れたいと僕は思ってる。


「少しは、私に言われなくても、ちゃんとやってくれる? 全く、親に何教わったんだか。

教育が悪いから、私が教育してあげなきゃね。」



「私に感謝しなさいよ?」



彼女の言葉1つ1つに怒りが込み上げてくる。

自分の事は、許してきた。けど、親のことまで言われるなんて…それは絶対に許せない。


「あのさ…僕のこと言うのは良いけど、親のことは口にしないで欲しい。」

僕は、彼女に勇気を振り絞っていった。


「はぁ? 何口答えしてんの? 私じゃなかったら、別れてたわよ。でも私優しいから許してあげる。」


彼女が笑って言った。


いや、僕は別れたいんだが。しかし、別れたいと言えない。彼女の父親は社長、僕の親は、社員。そう言った関係で、彼女を振ると、立場が悪くなる。


 

なんとか嫌われれば…向こうから振ってくれないだろうか。僕の心は、彼女の顔を見るたびに重く沈む。僕は目をそらす。



「なんとか言いなさいよ。ほんとナヨナヨしてるんだから、ビシッとする。」


彼女の檄が飛ぶ。僕は唾を飲み込み、言い返してやろうと、覚悟を決めた。


「口答えなら、もっと言いたいことあるけど、僕たちそもそも、相性悪いと思うんだ。」

僕は、彼女が同意してくれることを祈った。



「相性? 悪くても、私が我慢して付き合ってあげてるんだから良いじゃん。だらしないあなたと。こんな合わせてくれる彼女に、感謝もせず、口答えされたら、腹立つじゃん。

彼女は、支離滅裂なことを言った。ここはもう、別れる。


「いや、我慢して付き合わなくて良いよ。お互い別れるのが、良いじゃないかな?」

ついに僕は、勇気を振り絞って言った。


頼む! 同意してくれ! そう心から願った。



「えっ? 嫌だけど? なんで別れるの? まさか浮気でもしてるの?」


嫌なのかい! だったら僕を尊重してくれよと思った。



「浮気してないよ。仮に浮気してたら、別れる?」

正直浮気してない。けど、別れられるなら、浮気男と思われても良いと思った。



「しょうがないな。信じてあげるよ。だって私みたいな美少女と付き合ってて、浮気なんてする訳ないもんね。それに浮気するほど魅力的でもないしね、あなたは。」

あゆみは言った。



…はぁ、話が通じないと言うか…美少女か。周りからは、羨ましがられる。


あゆみたいな美少女と付き合えてと。とんでもない、君にあげるよ。本当に。


付き合う前は、猫を被っていた。めっちゃ優しいと思った。世界一好きだよ。と甘い言葉で、僕はやられた。


しかし…付き合ったら、本性が出た。僕を下げる様なことばかり言う様になり、僕もだんだんと自信を無くしていく。



会話が成立しないあゆみから、僕は逃げる様に離れた。



学校は、同じだけど、クラスが違うのは、助かった。


授業終わりの、その放課後…女友達に話しかけられた。あゆみがやきもち焼きで、他の女子と喋るとうるさかった。


けど…もう構うもんか。



「西条さん、最近元気ないよね。何か嫌なことあった?」

優しく声をかけてきたのは、中島さんだ。



「うん、彼女と色々あってね。疲れちゃって。」

僕は彼女に言った。



「そうなんだ。あゆみさんと…なら別れちゃえば?」

中島さんはそう提案した。



別れられば、すぐ別れてるよ。と心で嘆いた。


「正直別れたい。けど、難しいんだそれも。」

僕は吐露した。



「色々事情があるんだ? じゃあ、今日は私と付き合ってくれないかな?」

中島さんが驚きの台詞を言った。



「付き合う? どこに?」


「そうだね。ラウンドで、スポーツしよ。汗流せば嫌なことも、忘れるよ。」

彼女は言った。


「うん、けど彼女いるし。」


「西条さんは、別れたいんでしょ? でも、彼女は、別れたくない。なら、気にしなくて良いんじゃない。ね? 遊ぼ。」

彼女が腕を組んで行ってきた。


「はぁ、そうかな。大丈夫かな?」

僕は中島さんに聞いた。



「うん、何かあったら、私が守ってあげる。」

中島さんが天使に見えた。



俺と中島さんは、幼馴染で、子供の頃から、愛し合っていた。じゃあ中島さんと付き合えばいいじゃないか。


そう思うだろう。けど事は簡単じゃない。僕の母が、中島さんの姉を誤って車で殺してしまった。


その負い目があって、だんだんと彼女から、離れて行った。


けど中島さんは、仕方ないよ。西条さんが悪いわけじゃない。そう言って接してくれている。


親の話題をされるのが嫌なのは、その過去がフラッシュバックされるからだ。



あゆみの視点



へ? なんで2人仲良く腕組んでるの? 私泣きそうなんだけど。

ってか泣く…西条なんで? 嘘だ!

多分何か私にプレゼント買いに行くとか? つけてみるしかない。

西条浮気疑ってごめん。けど…確かめなきゃ。



私は彼をつけて行った。2人が仲良く話している…はぁ? なんで西条あんなに楽しそうなん? 私にも見せない微笑みを中島さんに、していた。



許せない。後で西条ボコる。もちろん中島さんもだ。


側から見れば、彼氏と彼女の様だ。信号機の前で2人で、見つめながら話している。


だからだろう、私の尾行にも全く気づく様子はない。


彼女がいるのに、彼氏は何やってるの? 2人に詰め寄りたい衝動を抑えて、何処に行くかを、確認したい気持ちを優先させた。


ラウンドか、スポーツしに来たのね。浮気じゃん、許せない! 



力に力を込めて、彼等の後を追った。


ボウリングか。良し、私は隣の席を取り、変装した。


ボウリング場はとても綺麗に整備されていた。照明の明るさが照らして、ボウリングや、地面が輝いていた。


ボウリングの玉も、見事にピカピカだ。宝石の様でさえ思えた。


「上手い! 中島さんやるねー。」

彼氏が満面の笑みで讃える。



上手い! じゃねーし。なんなの? これって夢? 



あっ、もしかして…なんだ。そういうこと。


私が尾行してるの気がついてて、私に嫉妬して貰いたくて、ワザとやってるんだ。


全くしょうがない彼氏だなぁ。



「それでさ、とにかく罵詈雑言のオンパレードで、それは良いんだけど、親の事まで言われたら、別れたくなるよ。」

彼の声が聞こえた。



「そうね、私も親のこと酷く言われたら、幻滅する。それで、西条さんが、別れるって言ったんだから、もう彼女じゃないよ。気にしないで、今日は、楽しもう。」

中島さんが何を言ってるのか、理解出来なかった。



「そうだね。あゆみと別れたってことにして、中島さんと楽しむよ。今日は、ありがとう。」

…えっ…何この展開。私達別れてないよ。


「どういたしまして。」

中島さんを見た。その表情は、幸せに満ち溢れていた。その表情を見た時、私は頭から、プツンと音が聞こえた。


私は無我夢中で、2人の前に駆け寄った。 

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