乱れ
万事屋 霧崎静火
第1話 堪忍袋
「だ~、もうっ!まぁたこんな部屋散らかしやがって!」
いきなりアイツの怒号が部屋に響き、俺はギョッとしてベッドに預けていた身を飛び起こす。視線の先には同居人のMが鬼のような形相でこちらを睨みつけていた。
「なんだよ、いきなり大声出して。」
「なんだもかんだもあるか!一緒にいて慣れてしまった俺も問題だが、改めてみるとさすがにこの部屋はひどすぎる!」
そう吠えながらMが指さすこの部屋は六畳半のワンルーム。最寄りの成修駅からバスで5分の5階建て、ユニットバス付きオートロック式のマンションの一室。俺とMが同居している部屋だ。そんな2人で住むにはせまっ苦しいこの部屋は、俺のせいで服や仕事用具、そしてゴミのせいでさらに狭く汚くなってしまっていた。
「…仕方ないだろ、忙しいんだから。」
「忙しいって…。2日に1日は休みだろうが。大体お前はだらしないんだよ。仕事が朝に終わるのをいいことに帰ってくるなり夕方までダラダラ布団に籠って起きたと思ったらスマホかパソコンゲームしかやらないし!そんなんだから部屋が汚くなっていくんだろうが!」
いかにも自分はようできていますよ感を出してくる彼にイライラが積もる。
「…んなこと言うなら俺が仕事行っている間にお前がやっとけばいいじゃんか。」
「俺は俺で色々忙しいんだよ、それでも少なくとも自分最低限の事はやっているからな。」
確かに。散乱しているものを見ても彼の物品はほとんどきちんと片付けられている。ほんとに【同居人】かと疑ってしまうくらいに。
「大体今何時だと思ってるんだ!もう夕方の4時だぞ!お前が朝7時に仕事から帰って来てもう9時間経っているんだ、この時間まで布団から一歩も出ずご飯も食べず…。いい加減にしろよ!」
「へいへい。」
曖昧な俺の返事を聞いてMは呆れてあきらめたのか、ため息をつき、俺の自家用車のカギを取った。
「…気晴らし行ってくる。」
「ぶつけんなよ~。」
ここで言うMの【気晴らし】とは、俺の愛車、インプレッサGE2を気の向くままに走らせることを言う。ただし、彼の言う気の向くままにというのは、要するに近場の峠道をかっ飛ばすということだ。…つまり彼は走り屋だ。カギを指でくるくる回しながら靴を履くMの背中を見ていたら心配になってきた。
「…やっぱ俺もついていく。」
「あっそ。」
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