第19話 『プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮崎駿の2399日』 【TV】
NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
『ジブリと宮崎駿の2399日』
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2023132680SA000/
なんと「再放送なし」というのをプロフェッショナルのツイッター(X)で知った。
「#ジブリと宮﨑駿の2399日
たくさんの再放送の問い合わせ、ありがとうございます。ですが今回の
スペシャル版は一度きり、再放送はありません。」
https://x.com/nhk_proff/status/1737148292822167687?s=20
放送当日、完全に寝込んでいて、知ったのは終わった後。そこでNHKプラスに登録すれば放送後1週間は見れると知り、慌てて登録して一回だけ見れた次第。
夏に映画『君たちはどう生きるのか』を見てから、周辺情報を集めていたけれど、監督の情報がとにかく少ない。その中で、このドキュメンタリーが一番充実していたと思う。
各種雑誌などで作画監督や、主題歌の『地球儀』を作った米津玄師さんのコメントなどは、読んだり聞いたりできる。
でも、ここまで監督の様子がそのまま記録されているというのは、すごいというか、いっそ怖いとも思う。よく許可が下りたな、とも。
高畑監督が亡くなった2018年、宮﨑監督にとっての高畑監督=パクさんとの関係が、いくつもの映像から視聴者が読み取る形式になっている。
解説は最低限なので、見た人によって感想も変わってくるだろう。映像の力をまざまざと見せつけられた気持ちでもある。言葉はあくまで補助的な役割しかない。
実は今までジブリ作品は作品のみで、メイキングや本などを読んだことはほとんどなかった。以前、NHKのドキュメンタリーを見たり、動画などで切り取られたものなどをつまみ食いしてきた程度だ。
なので、今回の『君たちはどう生きるのか』が、ある意味初めて宮﨑監督本人を意識して、知ろうと思ったきっかけといえるかもしれない。
その中でも特に米津玄師さんの『米津玄師 - 地球儀ラジオ Kenshi Yonezu - Spinning Globe Radio』*でどのように曲を作ったか、そして宮﨑監督に初めて聞いてもらった時のエピソードなどが語られている。
*https://www.youtube.com/watch?v=-YkKuRkngTA
今回のプロフェッショナルを見た後に改めて『地球儀』を聞きなおして、そこまで歌詞に落とし込まれていたのかと衝撃を受けた。
米津さんが映画の主題歌をオファーされたきっかっけは2018年の『パプリカ』までさかのぼる。『パプリカ』を作る中で米津さんが宮﨑監督の作品はじめ、本やドキュメンタリーを見まくって作ったと『地球儀ラジオ』で語っている。
その『パプリカ』を宮﨑監督が珍しく口ずさんていたことで、ジブリの鈴木さんが『君たちはどう生きるのか』の主題歌は米津さんがいいのではないか、とオファーをしたとラジオかインタビューのどこかで語っていた。(ポッドキャスト『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』だったかもしれない)
そして宮﨑監督が人生の中で巨大な影響を受けたのが高畑監督であり、2018年に高畑監督が亡くなり、宮﨑監督が絵コンテを半年ほど描けなくなってしまった下りは、日常の中にカメラが入り込んでいるからこそ残すことができた、宮﨑監督の記録そのものだと思う。
一度作り上げたEパートが作り直されたこと。「面白くない」と一度作ったものを破棄したのは、高畑監督をモデルとした「大叔父」との対峙につながるシーンだ。
完成された映画を見ていたにもかかわらず、この描けないところから、描いたけれどダメだと捨てることを決断し、物語を再構築したくだりは、先が見えず、いつ終わりが来るのか、来ないかもしれないと、見ながらも一緒に不安になった。
それでも。作品の世界に落とし込んでいく監督の姿は、鬼気迫るものがあった。そして、あれができるのは、ある意味うらやましくもあった。
自分がやるとする。その場合、ずっと物語のあちらの世界と、現実のこちらの世界の境界に立って、両方の間でバランスをとらないとならない。ずっとはいられないのだ。あちらの世界にどっぷりつかってしまうと、急に引き戻されるのが常なのだから。
それでも狂気の一線は、踏み越える。現実の世界でもこの一戦を踏み越えることが可能というのは、残念ながらこの一年の間、ずっと身に染みて感じていることだ。
さて、ではそれをどう作品に落とし込むのか?
ただひたすらに、それが自分の命題だけれど、宮﨑監督のドキュメンタリーを見ていて、あの監督ですら面白くないと判断して書き直す決断をしたことに、はっとさせられた。
高畑監督も『かぐや姫の物語』で、たとえ公開日に間に合わなくても、自分は気にしないと言ってのけているシーンがドキュメンタリーの中に入っている。
せめて自分の納得のいく作品を描いてみたい。そんなところからリスタートでもいいのかもと、引退宣言を撤回した老監督の姿に、少し背中を押されたのは確かだ。
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