第11話 ガラスペン 【文具】
ドイツつながりで長野にあるガラス工房「
最初は好きな色のインクを作れるということで、予約をして行ってみた。コロナ前なのでもう4~5年も前だろうか?
目的はインクを作ることだったけれど、その時の試し書き用として置いてあったのがドイツ、ラウシャの職人さんによって作られたガラスペンであり、そのデザインをしたのがラウシャで修行をされた藤田さんだった。
このガラスペンが握りやすく書きやすく、何よりインク本来の色で軽々と書けるので、すっかり気に入ってしまった。
ただ今は円安もありさらに値上がりしたが、当時もやっぱり筆記用具にしてはお高いガラスペン。まだ万年筆を使ったことがある程度の私は値段にしり込みして、とりあえずインク用のペンを購入。ガラスペンはいつか欲しいものリストに追加して終わった。
ところが。
作ったインクを購入した空のペンに入れても、書けないのだ。書けないというよりも、ペン先からは出ている。けれど色が薄すぎて見えないインクになってしまった。
困った。せっかく作ったインクが使えない。どうしたものか散々悩み、やはりガラスペンしかないのかもと、とりあえずネットで見つけたガラスペンを購入してみた。
三千円くらいの手ごろな、けれどペンとしてはなかなかのお値段のもの。それでもカキモリで使ったガラスペンが1万円を超えていたことを思えば、まだ安い。
でも失敗した。重いのだ。とても日常に気安く使える代物ではなかった。しかもペン先がガリガリしてうまく書けもしない。
なんてこった。ガラスペンは全然手軽なものではない! ということで、最初のインクはお蔵入りとなってしまった。
とにかく自分の作ったインクを使うならガラスペンしかない。そして買うならもうtetohiさんのガラスペンしか考えられなくなっていたが、コロナでオーダー会も中止や延期でインクはどんどん埃をかぶっていた。
だが今年の夏、数年ぶりにtetohiさんのガラスペンをオーダーできるチャンスが訪れた。夏休みの上旬、子供が入院中のこと。
行けるかどうか、正直タイミング次第だった。そしてオーダー会最終日。いろいろなトラブルを乗り越えた午後。陰ってきた日差しの中、何とかカキモリのオーダー会へ参加することができた。
最終日なので藤田さんも滞在中であり、並んでいればすぐ順番が回ってきそうだった。それほど長い時間悩めるわけではないと踏んで、事前にどのガラスペンをお願いしようか写真をずっと眺めていた。
と言っても、実のところこれが欲しい! というよりは、とにかくtetohiさんのガラスペンが欲しいという思いが強かった。あとは実際に試し書きをしてみたい。最初の失敗が、ネット購入に二の足を踏ませてもいた。
カキモリで初めて見たラウシャのガラスペンが、私にとってガラスペンの基準になっていた。どうやら一番最初にかなり良い書き味のガラスペンを体験してしまったようで、私の中のガラスペン基準はどうもおかしい気がするが、書けないガラスペンなど正直論外である。
ドキドキしながら藤田さんガラスペンを手に取ってみた。まずそのフィット感が素晴らしい。数字だけ見るとそれほど軽い部類には入らないのだが、とにかくペン軸が持ちやすい。そしてインクにつける。するりとらせん状にインクを吸い上げ、さらさらと手になじみよくきれいな線を描いていく藤田さんのガラスペン。
やはり実際に試してみないとわからないというのは、買い手以上に作り手であり売り手でもある藤田さんのポリシーだった。
お話をすると、ガラスペンは手のサイズや形、書き方の癖によって書きやすいかどうかに差があるとか。なので藤田さんのガラスペンは、実際に試し書きしてから選んでほしいということで、基本オーダーがメインなのだそう。
折しもその日は8月5日。藤田さんのガラスペンの中にはラウシャに咲く一面のエリカからインスピレーションを受けた一本があった。
検索してみるとエリカの誕生花がなんと8月5日だそうで、この話を藤田さんにしたところもとても驚かれ、無事に8月5日に誕生花であるエリカと名付けられたガラスペンをオーダーしたのであった。
そのガラスペンが12月中旬届く予定。今から到着が楽しみだ。
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* werksatt t e t o h i ( ヴェルクシュタットてとひ)
https://www.tetohi.com/
**たのしく、書く人。カキモリ – Kakimori
https://kakimori.com/
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