élégant

神崎

第1話 とても短いプロローグ

 探偵事務所といえば寂れた喫茶店の上、なぜかそのようなイメージが蔓延るこの世の中で、その事務所の場所を聞けば、大抵の人間が何故そこにと問うだろう。


 __その探偵事務所は、上品な仕立て屋の上に店を構えていた。


 何故か。お答えしよう、答えは単純、その探偵が服が好きだからだ。それ以上でも以下でもない。


 とにかく、私がこの探偵と関わるようになったのは、単純に言ってしまえばアルバイトの時給がよかったからだ。

 探偵事務所の事務なんてきっと忙しくないだろうに、時給も文句なし、深夜業務なし、最高の仕事だと思った。


「良いと思ったのになあ」

「何が」


 ぽつりと呟いた言葉は彼の耳にもしっかり届いたみたいで、彼はこちらの方を見向きもしないで聞いてきた。


「いえ、なんでもないです」


 これは彼、三島律みしまりつと私、大津愛理おおつあいりが経験した、ちょっと不思議なお話である。

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