第10話 祖父の孫娘富国強兵

白石裕子さんは、祖父の孫娘だったんだ。

「100年前のこととはいえ 驚くよな。他にも君によく似てる親戚とかいない?」

「いません。」

「わかんないよ、 1世紀も昔の話だから。」

「いくらなんでもそんなに ポンポン子供を作ったりしないわよ。私の祖父を何だと思ってるの。」

「おじいちゃん。きっとすごくモテたんだろうから。」

「モテただろうとは思うけど。いくら何でも他に子供なんかいない わよ。」

「おばさんによく似た人とかいない?」

「いません。」

「遠く離れた満州で国籍を超えた恋に身を焦がした女性はいないんだろうか。」

「それはいる かもしれないけど私の親類縁者にはいませんよ。」

「それにしても富国強兵政策。教科書で聞いたことはあったけどそれを利用して夢を実現しようとした人がこんなに近くにいたなんて驚くよ。」

「おじいちゃんは夢を叶えたのよね。」

「そして夢を捨て、恋を選んだ。」

「すごい覚悟よね。」

「君を可愛がってくれたおじいちゃんが 命がけでそれに参加してたんだよ。」

「遊びに行くと、おじいちゃん いつも お小遣いをくれたなぁ」

「僕の祖父もそうだよ いつも お小遣いをくれた。」

「あの頃の日本の方が夢がたくさんあったのかもしれないね。」

「日本政府 そのものが揃って 夢を追いかけてた。」

「今は夢を追いかけてるような政治家 なんていないものね。」

「あの時代に経済学と英語っておじいちゃん、随分先を見てたんだな。」

「でも100年経っても時代は全然進んでないじゃないのかな。アメリカもロシアも中国も対戦の前と全然変わってない気がする。」

「時間は過ぎたけれど、時代は少しも変わってないのかもしれない。」

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