#13 ゆめをみていた
《前回までのあらすじ》
・家事は分担性にするからな♡
「負けてしまったので肉を焼こう」
「俺はタン」
「私サーロイン」
「焼いてる場合かよ」
ベルゼブブはあの後いくつかの肉を持っていつもの部屋に帰ってきた。お詫びのつもりらしいです。
「そこそこの金があったからいい肉だぞ」
「「やったー」」
「呑気だな君たちは……どうするんだ?次の手は」
「食い物もダメなら性欲の方に行ったほうがいいと思うが」
「……駄目だ、『まだ』その時じゃない」
「『まだ』」
「そのうちわかるさ」
「ならどう出る気だ」
「睡眠欲ならある」
「あいつ?私あいつあんま好きじゃないのよね」
「なんでだ」
「普段わざと無能のふりしてるのよ。なんか厨二病みたいで面倒」
「なるほど。ならばそいつを向かわせよう」
「逆に」
「ずいぶんせっかちだな君」
するとベルゼブブが、あの高級そうな、レアで焼けた状態の、一口分すでに切られてある分厚いタンを、西宮に差し出した。
「タンはレアの塩で食うのが一番美味いんだ」
アスタロトは深くため息をついた。
「……ボクにも焼いてくれ」
「何焼くんだ」
「ハツ」
「渋いな」
一方その頃安藤は!
「……眠い……!」
「じゃあ寝なさいよ……」
睡魔に襲われながらも机に向かっていた!
「課題が全く終わってないんだ」
「どんだけあるんです」
「百ページ」
「初めて見る単位」
「次出さないと留年になるんだ」
「勉強してないと思ったら、そんなに追い詰められているとは」
「とにかく!終わらせなければならない!あと五ページ」
「あもうそこまできたんだ」
ダンタリオンは拍子抜けした。
「明日の朝にでも終わらせればいいんじゃないですか」
「やだ!!!」
「なんで」
「朝の眠気と夜の眠気は違う」
「めんどくさいなこいつ」
するとチャイムがこんな時間に鳴った!
「……今何時?」
「夜の九時半」
「宅急便かもしれない」
「とりあえず見てみたらいいじゃないですか」
ということで二人して下の階の玄関に向かう!
「ふぁ〜あ」
そこにいたのは妙に眠そうな……いやほぼ寝ている少年であった。
「なにもんだ」
「……ベルフェゴール!」
「なんだ!七つの大罪か!」
「そのうちの怠惰……今すぐ帰したほうがいいですよ」
「なんでさ」
「それは……」
するとベルフェゴールが目を見開いた!
「遅かった、か……」
「ま、まさか……こういう……」
すると二人して強烈な睡魔に襲われ、そのまんま玄関で眠りについてしまった!
「ベッドを貸してもらうぞ」
ベルフェゴールは先ほどまでの様子が嘘のような態度ですでに眠りこけた安藤に声をかけると、二階の安藤の部屋に登っていった……。
「なんだこれは」
安藤が目を覚ますと、そこは何やら変な空間であった。紫色のもやのようなものがそこら中を覆うように立ち込めている。そのためここがどのような場所なのかも正確に理解することは難しい。
「これがベルフェゴールの能力です」
足元のスマホが声を発した。ダンタリオンも目を覚ましたようだ。
「ここはどこだ?夢の中か?」
「そうです」
「やぁやぁやぁ」
すると前方からなんか偉そうな少年がずんずんと歩いてきた!自信に満ち溢れている!
「なんだてめぇ!何が目的だ!死ね!」
「最後で全部帳消しになってる」
「まぁそう吠えるなよ。俺は君に夢を見せてやろうと思ってこうしたんだ」
「夢を見せるだと?」
「あぁ。理想を形にして、普通の夢よりもより実感を与えた上で、夢を見させてやるよ」
「へぇ……あんたいい人だね」
「三下のモブみたいな発言」
「そのかわりダンタリオンは引き渡してもらうけどね……どうする?」
「安藤さん」
「あんたの実力がわからんから交渉にならんぜ」
「安藤さん!」
「ならば十秒だけお試しで見せてやろう」
「十五秒にしてよ」
「仕方ない」
「安藤さん!!!」
「フッ!」
ベルフェゴールはまたしても目を見開く!
「ウッ!」
すると安藤はますます濃いもやに覆われた!
「どうなってしまうんだ……」
ダンタリオンは相変わらず心配なようだった。手のかかる子です。
「ねぇ……お姉さんを初めてにしてみない?」
「お兄ちゃんはわたしのもの、なんだからっ」
「再出産だ!お前を産み直してやるよ」
安藤を三人の美女が囲む!
姿は台詞から想像してみてね。
「一匹やばいのいません?」
「うぉっほっほっほっほ」
「笑い方どうした」
そしたらもう十五秒経ったのか消えてしまった!
「夢とはなんて儚いのだろう」
「そんな美しいもんじゃないですよ」
「さぁサンプルは終わりだ……どうするグラシャ=ラボラス」
「そういえばそうだった」
「主役なのに」
作者も忘れていた。
一方その頃現実世界では!
「安藤にダンタリオン……どうして玄関で寝ているんだ……」
相川が不法侵入していた!
彼女を庇護しておくと、ベルフェゴールを入れた時からドアが開けっぱなしだったので、いくらでも入れる状態だったのだ。仕方のないことなのだ。
「ぐがぁ」
すると二階からいびきが聞こえた!
「まさか!」
相川は安藤の部屋に向かうと、そこには気持ちよさそうに人のベッドで眠る少年がいた!
「悪魔!こいつ!許せん!」
相川はとりあえず少年をベッドから転がして落とした!
しかし起きない。
「まさか……いやこの間エロ漫画で読んだが、夢に閉じ込めるタイプの悪魔か……?」
英才教育が役に立ったようだった。ここ快楽天で出たところだ!
「ならばこうだ」
相川は少年の腹を枕にして眠り始めた!
するとすぐに寝た。よく寝る子は育つ。
一方その頃安藤は!
「ぐえええええ」
ベルフェゴールはなぜか重石をかけられたようにその辺に這いつくばっていた!
「どうした」
「現実世界で誰かが僕の上に乗った」
「夢が現実に⁈」
「なんでそうなるんですか」
「安藤!」
聞き覚えのある声がする!
「「ワッ」」
しかし安藤とダンタリオンはまず驚いた……なぜなら相川は、何やら着ぐるみのようなものを着込んでいたからだ。
犬をかたどった着ぐるみから、顔だけ出ているような感じである。
はたからだとゆるキャラに見える。
「またしても困っている匂いがしたんだ」
「あの姿は自供?」
「そうかもしれない」
「そこの着ぐるみ……僕を枕にして眠りやがったな」
「よく眠れたぞ」
「「普通に迷惑だろ」」
「許せん……お前らには悪夢を見せてやる!」
「「「なに」」」
「ダンタリオンって夢見るのか?」
「ときどき」
「へー」
「世間話をするんじゃない!見てろ!見てろよ!」
ベルフェゴールがもやで安藤と相川を包む!
「ぐおおおお!」
「ぎゃあああ!」
「安藤さん!相川さん!」
そしてもやが晴れた!
安藤は……。
「えへへ……あなたはずっと、わたしと一緒にいればいいんです」
「こんなおばさんでもいいの……?」
「たわし、妊娠しました」
またしても三人の美女に囲まれていた!
「なぜだ!悪夢を見せたはずだぞ!」
「どうやら俺は頭の芯から楽観的らしいぜ!日本の未来は明るいぞ!」
「この人にはやはり勝てないのでは?」
「問題は相川だ」
相川はというと。
「相川……おれ、おまえのこと、キライ」
「うわぁぁぁぁ!」
「……あれ誰?」
「さぁ……」
安藤に髪型が似ているすげぇ不細工な男に、棒読みで罵倒されていた!
「多分安藤さんに嫌われることがイメージできなかったんじゃないですか」
「結構図太いんだな」
今までの行動でわかるはずである。
「……ちら」
「ほら!心配を求めてますよ!」
「なんだこいつ」
「段々辛辣になってきましたよね」
「……なるほど!ならばお前の中からそいつのイメージを抽出してやる!」
ベルフェゴールは置いてかれてる感じがしたので、挽回するために安藤にもやの玉を投げつけた!
「ぎゃふん」
「どうなってしまうんだ……?」
するともやは安藤の中に入り込んだと思えば、また出てきて、そしてそのまま形を変えていく!
そして……。
「わん!わん!」
なんか赤毛の犬になった。
「な」
「それは」
「そうだけど」
安藤とダンタリオンは相川を見る!
相川はわかりやすく目がにじんでいた!
「わたし……およめさんじゃ……ないの?」
「いや、もうちょっと自己分析しろよ」
「辛辣!」
「安藤……そんなにわたし、頼りないのか?なにも、できないのか?」
「ハハハ!めんどくせぇ女!」
「くっ!」
ベルフェゴールの策はうまく機能している!がんばれ!がんばれ!
「……てめぇ、自分がいつから対等な存在だと思ってんだよ」
「え」
「お前は惚れた初めから!俺の!犬なんだよ!」
安藤の平手打ちが相川の尻を襲う!
「んっ!ひ、ひどいっ❤︎最低❤︎」
しかし嬉しそうだ。それこそが愛のしるし。
「なんかサタンのときも見た流れだ」
マンネリ化。あまり言わないでほしい。
「なんだとぉ……⁈」
「オラ、犬なんだろ、さっさと行け!」
「はいっ!犬!行きます!」
「なんか吐き気がしてきました」
「くっ!来るか!」
しかし姿が見えない!どうして⁈
「私は猟犬———」
姿を消していた相川が瞬時にベルフェゴールの背中に現れる!
相川の刀がその背中を見事に切り付けた!
「音もなく———ただ狩るのみ」
「なっ……」
背中から大量出血!ベルフェゴールはその場にぶっ倒れた!
「ハッ!」
安藤とダンタリオンは玄関で目を覚ました!
「やりましたね」
「二度としたくなかったんだけど」
「というかわかってるんですね、ベタ惚れってこと」
「別に……わざわざ言うほどでもないっていうか」
すると二階から何かが四足歩行で降りて来た!
「なんだ⁈」
「獣ですか⁈」
「私は、犬だ!」
首輪をいつの間にかつけた相川でした。
「……安藤さん?」
「お手!」
「わん!」
「安藤さん!!!」
*ちなみにベルフェゴールは、あの後アスタロトが回収されました。
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