#11 凍てつく炎
《前回までのあらすじ》
・やめて!混ざる!
「もうだめだぁ……おしまいだぁ……」
「えぇ……」
安藤は遂に部屋のベッドにうつ伏せになって、倒れていた。
ダンタリオンは焦る。
「勝てねぇよ……もう俺には無理だよ……」
「あいつを止められるのは貴方だけなんですよ!安藤さん!」
「相川がいるじゃねぇか」
「あの人は心配になる」
「そういえばそうだ」
安藤は起きた。
(危険性を自覚したか……)
一方その頃いつものビルでは。
「お前らの全容を知りたい」
西宮が玉座のように椅子に座して、部屋全体に届くように言った。
「……どうして?」
サタンはよくわかっていないようだった。何かそんな、悪魔の関わるような欲望があるのだろうか?
「俺は、この世界の全てを手に入れる」
「「え?」」
二人は呆気に取られた。
何を言い出すのかこの男は、と。
「……じゃあ聞こう。手に入れて、君はどうする?」
「世界を変える」
「どんな風に?」
「この世から、すべての不幸を消す」
「理想論ね」
サタンはますます呆れてつぶやいた。
「だがこの力は、何かしらを所有できるようにするんだろ?可能ではあるはずだ」
「可能だけども」
「できることは全てやるべきだ」
「……そうかいそうかい。じゃあダンタリオンを奪うことだね」
「そいつが悪魔の全てを知っているとでも?」
「あぁそうさ。他の悪魔の居場所も知れる」
「そいつはありがたい。それじゃ俺は行くとするか」
「おい待て!ボクも行く!」
「何故」
「どうだっていいだろう!」
「私はどうするの」
「待機してて」
「へぇへぇ」
そして西宮とアスタロトは部屋から去っていった。
喉が渇いたのか、サタンは冷蔵庫を開ける。
しかし麦茶のペットボトルはなくなっていた。
「めんどくさ」
サタンも部屋から追うように去った。
一方その頃安藤は!
「な、なんだ……安藤……?」
家で相川を正座させていた!
「お前は火力が高すぎる」
「はぁ」
「なので特訓しようと思うんだ」
「と、特訓⁈」
相川は急に顔を赤らめ始めた。
「は、初めて……だから……」
「勘違いしてますよこの人」
「俺をなんだと思ってんだ」
しかし彼が言えるか?言えません。
「え、違うのか」
「能力の出力の話だよ」
「な、なんだぁ〜、ははは」
すごくぎこちなく笑っている。
とんだ淫乱だよ!
「とりあえず能力を最低出力で、出してみてくれ」
「わかった」
了承すると、相川は刀をどこからか出した。
そして、目を見開いた!
ライターくらいの火がついた。
「やれたんじゃん」
「安全ですよ」
「え?これでいいのか?」
相川は困惑している。高火力でぶっ放せばいいと思っているのだろうか。多分そう。
「それじゃあ移動しよう」
そして三人は近くの公園に移動した。
「最大出力でぶっ放してもらう」
安藤は相川に言い放つ。しかし当の本人は何が何やらわかってなさそうに、とりあえず頷くばかりであった。
「熱は最低だぞ」
「そうなのか?」
「どうするつもりだったんですか」
二人は寒気がした。
「じゃいくぞ」
相川が刀を地面に突き立てる!
すると、大きな炎の輪が一瞬にして広がり、そして地平線の先に消えていった。
「……これ大丈夫?」
「わっ!」
ダンタリオンが何やら驚いている。
「どうした?」
「北極の氷が今さっき、5センチほど溶けたらしいです」
安藤は相川を見つめる。
相川は怯えていたが、しかしどこか制裁を期待する目つきでもあった。
「お前……さっきからなんだ!その上目遣いは!」
「い、いや、そんなはずは……」
「無意識に卑しさを出してるというんですか!」
「わ、私卑しくなんか……」
「交互にやらせて出力を探ろうと思ったが……お前にはお仕置きが必要だな!」
「な、何を……」
数分後。
「貴方達ね!」
サタンは安藤たちを見つけ出していた!手には袋を持っている!多分麦茶!
安藤たちは寄り集まっているせいか、各々がどうしているのかは分かりづらかった。
「よくも買った麦茶を瞬時にぬるくしてくれたわね……」
割と怒っている。最近暑いからね。
安藤たちは!
「あひ!あひひ!ひひひ、ふふふ!」
「この野郎堪忍しろ」
「そこもうちょっと右」
「何⁈」
相川を安藤がくすぐり回しているところであった。
わかりやすく言うと脇腹のあたり。
「あ、あーひひひ!あひひ!」
「なんだロリ巨乳」
「サタン」
「一旦やめて?」
安藤は一旦やめる。
しかし相川はそこらへんでのたうち回っていた。
「七つの大罪の憤怒……サタン!」
「えぇーもう出たの」
「よくも麦茶をぬるくしてくれたわね」
そう言うとサタンは持っている袋から2リットルの麦茶を取り出した。
水滴がついていない。ぬるい証拠であろう。
「「すみません」」
「割とビルまで遠いのよ!おかげで今こんなに声が出るわよ!どうしてくれんの!」
「どうしてって言われても……」
「何よ」
「後ろの方が全部……」
「アスモデウス……あんた?」
「ひー……ひひひ……ああ」
「ヘラヘラするんじゃないわよ!喰らいなさい私の力を!」
「「「何⁈」」」
するとサタンの両手には炎が灯る。
しかしその炎は青く……さらに少し違っていた。
「なんだ?あそこから冷気が出てんのか⁈」
「これぞサタンの能力……凍てつく炎!」
「そうよ!」
そしてサタンから放たれた炎が相川を襲う!
「あぁぁぁぁぁぁ〜涼しい」
「だめじゃん」
「馬鹿ね。それだけなわけないじゃない」
「何」
凍てつく炎が消え、相川は立ち上がった。
そして安藤に殴りかかる!
「や、やめ、痛くないけどうるせぇ!」
ポカポカと殴っているが、力は対してこもっていないようである。
「な、なんだ!何が言いたい!」
「ふんっ」
そう言うと相川は殴るのをやめてそっぽを向いた!
「めんどくせぇ!」
「そう、これこそ私の能力。本人の内側にあるものを無理やり表に引っ張り出させる」
「相変わらずめんどくせぇ」
「な、なんだ、何がいけなかったんだ」
「……私のこと、嫌いなんだろう?」
「は?」
流石に面食らっている。
「私がやらかしても無理やりしないのは……そうなんだろう?」
「何を無理やりするんですか⁈」
安藤でさえ顔面を真っ青にしている。どういう考えで生きているんだ。
「お前滅ぼしてから勉強しすぎだよ……」
「ほら褒めてくれない!そういうとこだぞ!そういうとこ!」
「めんどくせぇ!」
「サタン!今すぐ解きなさい!」
「いやよ」
「クソッ……お前からだ!サタン!」
安藤はサタンに飛びかかろうとする———
———がその足は相川に掴まれ、落ちる!
「何⁈⁈⁈」
「それ三つ繋げるの初めてみた」
「……ひとりにしないで」
「見えるけど⁈俺見えるけど⁈」
「やだ、やだ、やだ!」
「ガキかお前は!」
「安藤さんが珍しくまともだ」
「ははは、哀れねグラシャ=ラボラス」
「もっと哀れんでくれ」
「倒錯しましたね」
相川は足に擦り寄ってくる!
安藤はいつものキモさを出す暇もなさそうだった!
「俺、このまんまだと今日中に卒業しちゃう!」
「いいことじゃない」
「なんかこう……そうじゃないんだ!俺は、俺は、面倒ごとを全て終わらせてから、幸せを、得たいんだ!」
「好きなものは最後に残すのね」
「そういうことだ!」
「……私は、最初の方の悪魔だぞ」
「いやそういうことじゃなくてね」
「なんだ!差別か!最近確かにあいつら見ないぞ!」
「こないだスーパーでブネ見たよ!」
「……もう帰ろうかしら」
サタンは欠伸をかました。
「……そうはさせるか!離せ!このクソ売女!」
「ば、ばいた!」
「オリモノ臭いんだよ!その前足をどけろ!」
「ば……ば……ばかぁー!」
相川の刀が爆炎を起こし、安藤を木っ端微塵にした!
「なにがしたいのよ……」
サタンは少し引いていた。
しかし、そこから灰がサタンの眼前に向かってきた!
「まさか!こうすることで彼女から離れる作戦!」
「そのまさかさ」
完全に灰から瞬時に戻ることはできない。しかし拳を実体化するくらいはできた!
安藤の右拳が、サタンの腹を見事に捉えた!
「おぇぇぇぇ」
サタンはその場で吐いた!
「夏バテだ。ちゃんと滋養のあるものを食え」
安藤は実体化して、そう言い放つ。
冷や汗をかいていた。死を覚悟している。
「わかったわよ……」
サタンはそのまま去っていった。みんなもそうめんばかり食べるのはやめようね。
「あ……安藤……その……」
相川が申し訳なさそうによろよろと、安藤のもとに歩いてきた。
「いや、俺の方こそごめん。あんなこと言って」
「私がこうなったのがいけないんだ、私が、私が」
相川は半泣きであった。
しかし安藤は相川を抱きしめた。
「お前は悪くない。いいな?」
「うん……」
相川がどこか甘えた仕草で安藤の肩に頬を摺り寄せた。
(やっぱこの女……卑しい!)
ダンダリオンは確信した!
一方その頃西宮は!
「随分と汚いところだ」
下水道の中にいた。
「この方向音痴!」
アスタロトは素で叫んだ。
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