#06 ゆえに愛 いつも愛

《前回までのあらすじ》

・必勝法はねーぞ。


 「インポになっちゃった」

 「えぇ……」

 彼の目の前が暗く真っ青になっていく。

 若き情熱は、種火を失い、自分の影さえ見失う……。

 「ジサツやったからかなぁ……」

 「それしかないでしょう」

 「治るかなぁ、治るかなぁ……」

 「いつものアホの貴方はどこに行ったんですか!頑張りなさい!」

 「張れないから困ってんだろぉぉぉ!」

 「ごめんて」



 一方その頃お馴染みのビルでは。

 「そうか、愛の下に負けたか」

 バアルが相変わらずの仏頂面で言い放つ。

 しかし片手にチョコレートを持っていた。

 「そりゃ負けますよ」

 フォカロルは自分自身の格好に戻っていた。

 何があったのだろう。

 「となると、今度は愛を用いればいいのではないか」

 「それは妙案かもしれません」

 「……大丈夫なのか?これ」

 ビネは彼らを眺めて心配そうな目つきをした。

 「いつもこんなんですよ」

 レラジェは姿勢良くその辺の椅子に座っている。完全に治ったようだ。

 「グレモリーを出す」

 「「あれを」」

 

 すると、何故だかフォカロルは外に出て行こうとしていた。


 「どうした。別に急いで無力化に向かう必要もないはずだぞ」

 「いえ……すごく働きたい気分でして……」

 「「あやしい」」

 

 バアルは誰かを抱っこしてきた。

 それは年端もいかない少女であった。見て10代前半くらいであろうか。

 「「アウトでしょう?」」

 「彼女には、数ヶ月身体を貸す代わりに数十万円を報酬に出す、と説明してある」

 「いや、グレモリーにこの子の身体は、ちょっと……」

 ビネは怪訝そうな顔をした。

 「とにかくやるだけだ」

 バエルのいつもの流れが終わって、どこか妖艶に立ち上がった。

 確実に身体に不相応な動きであった。

 「あらぁ……ブネ、レラジェ、それにバエル様?」

 「向こうにもう一人」

 「あらぁフォカロル!貴方、すごく愛を感じるわ!」

 「「「やはりなにかあるんだな」」」

 「ハモるんじゃありません!」

 「ふんふん、ふん」

 何やらグレモリーは嗅ぐような仕草を見せた。

 そして頷いている。何かわかったみたいだよ。

 「バンドマンの彼女がいるわね。外では気だるげなミステリアスな存在として人気だけど、貴方の前だとひたすら甘えん坊な女の子になっちゃうのね……夜も」

 「百合漫画の読みすぎだろ」

 「……だからあなたとは会いたくなかった!」

 フォカロルは表情を見せずに去っていった。

 「もしや彼女に一度、『格好変わった?』と言われて変えたものの、『あれ、あの格好もうやめちゃったの?割と好きだったのに、君らしくなくて』とか言われたのかもしれないですね」

 「「レラジェお前どうした」」

 「それで、私は何をすればいいのかしら」

 「よし、グラシャ=ラボラスとダンタリオンを追え」

 「了解で〜す」

 そのまんま軽い足取りでグレモリーは出ていった。

 「愛にも様々な形があるものだ」

 ((そんなこと言うんだ……))


 そしてその頃安藤は。

 「ということでハミダシクリエイティブを買ってきました」

 「やってみよう」

 インポを治そうとしていた。

 

 数時間後。

 「駄目だ!ハミダシクリエイティブのヌキサシクリエイティブじゃ治らない!」

 「怒られますよ」

 「仕方がない他の作品」

 「フラテルニテ」


 数十分後。

 「チンポが引っ込んだ」

 「陥没インポになっちまったよ」

 「何かないか!何か!」

 「わくわく☆惑星プリンセス」


 数分後。

 「チンポが曲がりくねっちまったよ」

 「悪性電波かなぁ」

 「あーーー!もうどうしようもない!どうすれば俺はハッスルできるんだ!」

 

 そんな中ダンタリオンの触覚が立つ!


 「立ってるのを見せつけやがって………」

 「行きますよ!」

 ダンタリオンはスマホを動かして、無理やり部屋の外に出していった。


 着いた場所は、アダルトショップでした。

 「見せつけか!当てつけか!礎か!」

 「終わったら行けばいいじゃないですか」

 「それもそうだな……」

 「貴方のその謎の冷静さはなんなんですか」

 

 「ちゃろー☆」


 どこかから女性の色気のある声が聞こえる!

 「ゆずソフトの波動を感じる!」

 「あ、あの人ですよ!」

 

 そこにいたのは、なにやら腹も足も出した露出度の高い服を着た、中学生くらいの少女であった。

 

 「また中学生か!くそッ!」

 「いえ、あれはまさか……グレモリー⁈」

 「どんなの?」

 「あなたに一番会わせたくない奴」

 「わかるような気がする」

 「貴方が今代のグラシャ=ラボラスかしら?」

 随分と艶やかな声だった。そういう発声法なのだろうか。

 「声優になれるぜあんた」

 「そう?でも指をしゃぶらないといけないでしょう?」

 「それもそうだな」

 「ナチュラルにそっちに動かないでください」

 「にしても貴方……どうやら覇気を失っているようね」

 「あぁ」

 「助けてあげても、いいのよ?」

 何やら随分と余裕を感じさせる笑みを浮かべて提案した。その余裕は傲慢さからくるものではなく、自分の経験の豊富さからくる、いわば頼もしさとしての余裕であった。

 わかりやすく言えば、お姉さんオーラである。


 「お姉さんに言われたら、仕方がない」

 「おい」

 「決まりね、いくわよ」


 グレモリーが手を振ると、安藤の股間が光り始めた!

 「あーーーーーー!爆発する!!!」

 「しないわよ」

 「即で否定されないでくださいよ」

 

 すると、地面がズゴゴとうごめき、そして何か柱のようなものが生えてきた。

 それは———


 ———ピンクに光る、でかい安藤のチンポであった。


 「ウルトマランになってしまった」

 「それ3分しか持たないじゃないですか」

 「私は別に使命とかどうでもいいんだけど———勃たない男の子がいるってのはすごく悲しいことじゃない?」

 「なんて慈愛のお方なんだ」

 「ただの淫乱では?」

 「これは貴方のチンポであってチンポではない」

 「哲学チンポ」

 「アリストペニスですね」

 「この大きなチンポは反発作用を持っている。だからこれを苦しめれば苦しめるほど貴方のモノは元気になるってわけ」

 「なるほど〜」

 「ほんとに治るんですかね……」

 「このフラタルニテを取り込ませてみましょう」

 「それが流行る世界があるの?」

 「それ!」


 フラタルニテをパッケージのままデカチンに放り投げる。

 デカチンはズププとフラタルニテを取り込んでいった。

 

 するとデカチンが身体を震わせて暴れる!暴れる!


 「御業つけないとこの小説が終わる」

 「お、おぉ、おおおおお」

 すると安藤の股間が、ほんの少しだけ盛り上がっていた!

 「やはりダメージは大きかったみたいね」

 「でも本当に少しですよ」

 「ん〜面倒ねぇ。もうこれまとめてなげちゃうか!」

 

 そこにあったのは、鬱ゲー・リョナゲー・スカトロゲーをまとめたダンボールだった!


 「欲しい」

 「オエッ」

 「いくわよ〜!ドッカ〜ン!」

 「どっか〜ん!」

 「夢の国ですかここは?」


 放り投げられたダンボールは、ズププとまたしてもデカチンに取り込まれていく!


 デカチンは光り輝いて、暴れて暴れて、そして——————。


 一時間後。

 相川は家のDIY用具が壊れたので、買い物ついでに下校していたのだが……。

 「むっ」

 見覚えのある足跡を見つけたので、彼女はそれをつけてみることにした。

 なんで知ってるかは知らない。


 「わ、わぁぁ……」

 そこにいたのは、相川が信頼している人間———


 「うぅ……」


 ———が、涙を流してやたら長い局部を露出しているところであった。

 「馬鹿!しまえ!変態!」

 「……しまえないんだ、これ……」

 よく見ると周りもみんな泣いていた。


 局部は確かに恐ろしいことになっている。ほぼ水平に、数十センチに及ぶ長さのものが、そこに刀のように、佇んでいたのである。

 「ば、ばかぁっ!」

 混乱のあまり、相川は局部をハンマーで叩いてしまう。


 しかし、その音は。


 ごぉぉぉぉぉん……という。


 鐘のような音だった。


 「……ちんちんって、こういうものなのか?」

 もはや恥ずかしいという気持ちよりも、困惑の方が勝っているようだった。

 「「「いやいやいやいやいや」」」

 三人全員全速力で首を振る。

 殺人鬼が誕生する可能性は潰しておくべきだろう。

 「ど、どうするんだ、これは……私はちんちんを、しっかり見たことがないんだ」

 「わからん」

 「私も初めてよ、ここまでの逸材は」

 「生活できなきゃ持て余してるも当然じゃないですか!」

 「ほんと、どうしようかしら」

 

 「な、撫でたら治るのか……?」


 数秒の沈黙。


 「どうだろうか……僕にはわからないが、試してくれたまえ」

 「お前!!!」

 やたらいい声だった。グレモリーの発声を物にしたのかもしれない。

 「あ、でも、危ないから手袋しないと。それとクレンジング剤、あと布巾」

 「そうだな」

 「元に戻らないでください」

 

 「ごしごし、ごしごし……」

 相川は優しく安藤のモノを磨いていく。

 「わん!わんわんわん!がるるるる!」

 「なんでアニス?」

 「……美しい。そして清楚。まるで聖母のようね」

 「私には掃除の人にしか見えません」

 

 「うぉオン!」

 すると安藤のモノは真っ赤になり、そして蒸気を大量に発した!


 「うわぁっ!」

 「人間火力発電所になった!」

 「ワンダーね!」


 そして蒸気が霧散したのち———。


 そこには、元の大きさに戻ったまま勃起する、安藤の姿があった。


 「ありがとう。相川」

 その笑顔は、なんとも安らかだった。

 なんか出した後のようにも見えた。

 「し、しまえ!早く!そんなモノっ」

 相川は顔を両手で覆っていたが、しっかり間は空けていた。

 「よかったよかったハッピーね」

 「いいんですかねこれ……」

 

 「ところで、貴方の性欲はどれくらいなのかしら?気になるわね!それ!」

 

 するとグレモリーは相川に先ほどと同じ術をかけた!


 「う、うわぁぁ、お腹が、光って……」

 「相川ッ!」

 「貴方そんないい声でしたっけ⁈」


 「さぁ見せてちょうだい!聖母の如き貴方の真実の姿を———」

 

 すると、そこには超巨大な炎の塊があった。

 隕石が降ってくるとしたら、これくらいの大きさかもしれない。


 「うん?」

 「あれ?」

 「相川、お前……」


 「い、いや、私エッチじゃない!」


 すると否定されたと感じたのか、炎の塊は心臓のようにドクンドクンと動き———


 ———爆発した!


 「あー!」

 「わー!」

 「ちがーう!」


 「世界の終わりとは、このようなモノなのですか……」


 みんな炎に飲み込まれてしまった。


 その瞬間、バアルのビル。

 「だからね?私言ったんです」

 フォカロルの目は赤く腫れていた。

 トイレで泣いてたのかもしれない。

 「そうだな」

 バアルは頷いた。

 他の二人も同じように。


 そしてみんな燃えた。

 炎は地球そのものを飲み込んで……やがて、地球はひとつの光となって消滅した。


 時間にして一分、あっけない最後であった。

 

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