第240話 檻の中の永遠

乱れたベッド、シーツの中で蠢くのは赤に煌めく金の髪。

傷一つ、シミ一つ無い華奢な肩と肩甲骨をさらけ出して、僅かに身を起こす。

その両手は彼女の下――姉の両手をベッドに押さえつけ、動けないように。

姉の唇へと、そのままゆっくり唇を押しつける。


「クレシェンタ――」

「わん、ですわおねえさま」


睨み付けるような紫で妹は言葉を遮り、姉は銀の髪の隙間からその紫を揺らし、困ったようにわん、と答える。

双子のような瓜二つ。

上を取る少女は満足そうに微笑んで再び口付ける。

それを抵抗なく受け入れながらも、困ったように姉は妹を見つめ、それから彼女が首から下げる魔水晶――その内側の五つの光を眺めた。


もうかれこれ一週間、二人きりの屋敷で過ごしている。

ここがクリシェの鳥籠なのだとそう伝えられて、最初は色々どういうことかと問い詰めようとしたが、クレシェンタはこのまま二人きりで過ごすことを告げるばかりで取り合おうともせず。


『……わたくしがいいというまでおねえさまは犬ですの。おねえさまは、わん、しか言っちゃ駄目ですわ』


などと不満げにクレシェンタは言い放った。

これは人質ですの、と魔水晶を見せられてはとりあえず受け入れる他なく、仕方なしにクリシェは妹のわがままに従い、今に到る。


特に酷いことをするでもなく、魔水晶に新たな術式で封印を施した以外のことをするでもなく、妹は一日中、クリシェとべったり過ごすだけ。

朝起きて屋敷のお仕事をして、一緒に料理を作り、洗濯をして、お茶をして、風呂に入り、ベッドで過ごしてそのまま寝る。

わん、しか口を利けなくとも彼女と過ごすことに不便は無かった。

クレシェンタはクリシェのやりたいことを察するし、クリシェも同様である。


甘えたい妹のわがまま――姉としてそれを聞いてあげることは嫌では無かったし、付き合ってあげる気でいたが、とはいえしかし妹の真意はわからなかった。

クレシェンタはわがままなお子様である。

クリシェの優先事項はベリーとセレネで、クレシェンタがそれを不満に思っていた、というのなら分からないでもない。

ただなんとなく、甘えたいからこうしているだけではないのだろうと思ってはいた。


独り占めの言葉通り、行動だけ見れば全くその通りの行動であるのだが、クレシェンタはあまりにお馬鹿である。

いや、クレシェンタは元々お馬鹿であるが、それでも大体いつも、何かしらのことを考えて行動はしていた。

今は意図的に何も考えていないように見えて、それがどうにもクレシェンタらしくない。


かつてクリシェが何も考えずベリーに甘えるためだけに自分の中に創り上げた人格の一つ、『甘えクリシェ』と同じく、クリシェに甘えることだけを考えた『甘えクレシェンタ』が彼女の中に誕生、表面化しているのかも知れない。

素直なことは良いことで、甘えさせるのもクリシェとしては嫌いではない。

とはいえ、この何十年もの間に決めていた予定が控えている状況。

クリシェとしてはひとまずその話がしたかった。

だが、わん、しか言えないこの状態では話も出来ない。


クリシェは少し考え込む。

立派な姉としては妹の前でルールを破るというのは教育上やはり良くはない。

お馬鹿でお子様な妹を立派に育てるのは姉の役目の一つでもある。

しかしそうなるといつまで経っても話し合いなどは出来ないだろう。

クレシェンタは何やら毎日幸せそうであるし、クリシェも特に不便も無く生活が送れている。

仮に何十年続こうとそれは変わるまい。

今のクレシェンタは明らかに『甘えクレシェンタ』状態であり、要するに極めてお馬鹿であるのだ。


ちゅうちゅうとキスされながら考え込み、ふとそのままクレシェンタを転がして、彼女の腰の上に跨がった。

それからぱん、と両手を叩いて微笑む。


『クレシェンタ、お話があるのですが』

「……おねえさまは、わん、しか言っちゃ駄目って言いましたわ」

『クリシェはわん、しか言ってませんよ。リーガレイブさんみたいにふよふよをびりびりさせてるだけです』


わん、と言って、周囲の魔力を震わせる。

魔力を揺らして意思を伝える――竜の用いる念話の原理であった。

クリシェは犬の真似をしなければいけないが、これは口を使って喋っている訳ではない。

クレシェンタの決めたルールを破らず、お話も出来る。

クリシェは自分の発想に満足げな様子でうんうんと頷いた。


明らかにルールの穴を突いたような屁理屈にクレシェンタは眉を顰めつつも、何ですの、と尋ねた。

ルールはルール。

屁理屈と自覚しているかどうかはともかく、一応建前上でも姉がルールを守って見せた以上、クレシェンタも納得出来ないながらも文句は言わなかった。

他の人間ならばともかく、お馬鹿な姉は屁理屈一つでも大まじめなのである。

そんなお馬鹿な姉でも突けるような穴のあるルールを設けた自分の落ち度であり、それを責めることは彼女のプライドが許さない。


互いに互いをお馬鹿扱い、無駄なこだわりを含めて姉妹はよく似ていた。


『確かにクリシェ、セレネやベリーばっかりで、クレシェンタにはちょっと寂しい思いをさせてたかも知れません。だからこのわんちゃんごっこも別にいいのです。クリシェもちょっと楽しいですし……』


裸体を起こしたまま、クリシェは唇を指でなぞった。

ベッドの上で、幼げな少女が二人。

行われるのはわんちゃんごっこ。

どこまでも背徳的で倒錯的な発言であったが、それを突っ込む人間はもういない。


『でもクリシェは、ベリー達に会いたいです。わんちゃんごっこはあっちに行ったらちゃんと続きをするって約束しますし、もう少しクレシェンタには甘々にすることにします。……だからこれは後にして――』

「嫌ですわ。……それにアルガン様達は今もここにいらっしゃるでしょう?」


今も会ってますわ、とクレシェンタは首の魔水晶を見せつけた。


『クレシェンタ、それは屁理屈というのですよ』


眉を顰めてクリシェは言った。

彼女は我が身を振り返るということを知らない人間であった。


『……どうしてそんな意地の悪いことを言うんですか?』

「だって、わたくしの夢は叶ってますもの」

『夢?』


クレシェンタは寝転んだまま、窓の外に目をやった。


「誰にも脅かされない平穏、完成された世界。……わたくしが望めば何もかもが手に入って、民衆はわたくしのために命を捧げる。ここには永遠がありますわ、おねえさま」


――ここが永遠の鳥籠ですの。

それから少女はそう続ける。


「ねぇ、初心に返って考えてみて下さいませ。……わたくし達が求めていたものは全部ここにありますの。わたくしとおねえさま、他に対等な人間なんて要りませんわ」

「……クレシェンタは、ベリーたちにまた会いたくないんですか?」


唇を震わせて言葉を紡いだ。

クレシェンタはそれについては触れぬまま、悲しげな顔をした姉の頬を撫でる。


「ええ。……あの方達は結局、わたくし達と違いますわ。いつか濁りになりますもの」

「……濁り?」

「ほら、この数を見ればわかるでしょう? 沢山の方がおねえさまのことを愛していらっしゃいましたけれど、この内側には高々五つ」


魔水晶を掌の内側で閉じ込めて、五つの光をクレシェンタは眺めた。


「人間は心変わりをする生き物ですの。この先十年愛してくれても、この先百年愛してくれても、この先千年二千年、同じ気持ちを持てるだなんて断言出来るものはいない。だから多くの方は、いつかおねえさまに愛想を尽かすことを恐れて断ったのですわ」


クリシェは目を伏せる。

そんな姉の顔を眺めてクレシェンタは微笑んだ。


「何も彼等のことを責めている訳ではありませんの。それが普通で、おねえさまが悪い訳でもありません。……でも、同じことはこの方達にも言えますの」


魔水晶を示して告げる。


「事情の異なるリラ様も含めて、おねえさまのことをとても深く愛していますわ。けれど人の心は永遠ではなく。いつか生きるのに飽いて、日々を楽しめなくなり、そのうちおねえさまに愛想を尽かすのが目に見えてますわ」

「っ……」

「……そんな顔をなさらないでくださいまし、おねえさま」


クレシェンタは怯えを浮かべた姉の体を抱き寄せた。

鳥籠に小鳥を閉じ込めるように、その小さな門を閉ざすように。

それはどこまでも、優しく陰湿な檻であった。


「でもこの内側で輝いている間、この方達の愛は永遠。永遠の愛はこの中にこそありますの。……本心からこの先の永遠を、おねえさまと過ごす気持ちでこの中へと入ったのですから」


舌先で糸を手繰るように、紡ぎだすは言の葉の檻。

彼女が世界を支配したのは、剣ではなく言葉であった。

力で勝てぬ姉でさえ、彼女の言葉はそれさえ縛る。


――彼女の姉は全くの馬鹿では無かった。

言葉を言葉通りにしか理解が出来ず、けれど、繰り返された断りの言葉は姉の耳にきっと焼き付いているだろう。

蜂蜜のように甘く優しい言葉の内側――そこに孕んだ真意はきっと、彼女にも理解が出来ていた。


――彼女の姉は臆病であった。

普通の人間であれば傷つくことを恐れ、取るはずの間合いを取らずに身を委ねる。

無防備に全てを捧げてしまう彼女は、だからこそ失望され、軽蔑されることを誰よりも恐れた。


理解が出来れば掌握できる。

クレシェンタにとって彼女の心理を弄ぶことは、他の誰よりも容易いことだった。

少なくとも、二人きりになった今。


「安心して下さいませ。わたくしだけはおねえさまとずっと一緒。……難しいことは何も考えなくても、わたくしが代わりにちゃんと考えますわ」


だからこれでよろしいのです、と再び彼女をベッドへと押し倒す。

不安げな顔をした彼女の頬を優しく撫でて、両手を掴み、指先を絡める。

風切り羽を切るような、独善的な愛情で。

姉の瞳が迷いに揺れて、クレシェンタの首から垂れた魔水晶の首飾りが胸元で輝いた。


「……セレネ様のことも、他の方のことも、もう考えないようにして下さいまし。口に出しても駄目。おねえさまはきっと寂しくなりますもの」


クレシェンタは囁いて、姉の美貌を眺める。


「もちろん、……アルガン様の事も」


そして告げる瞬間に目を細めて、そのまま鼻先を擦れ合わせた。


「これからおねえさまは、わたくしのことだけを考えて下さればよろしいのですわ。……わたくしもおねえさまのことだけを考えて、おねえさまが寂しくならないよう努力します」

「クレシェンタ……」

「うふふ、これからもずっと、愛してますわ」


クリシェの瞳を覗き込みながら、クレシェンタは口づけを。


「……、これまでと同じく、わたくしはおねえさまのことだけを愛してますの」


まるで言い聞かせるように、彼女はそう繰り返した。












王城の中――元帥の仕事場として割り当てられた一室。

そこの主人は随分と前にセレネ=クリシュタンドから別な人間に変わっていた。


齢八十を超えて、しかし見た目は未だ老人とは言えぬ若さがあった。

白髪交じりの勝った赤銅の髪、精悍な顔立ち、剃り刀を丁寧に当てた頬。

父とは見た目の上でも瓜二つ――才覚もまたそれに同じく。


「――しかし、こうして見るとやはり、お父上にそっくりですね元帥閣下」

「……二人でいるときくらいそのような言葉使いはやめて頂きたい、レーミン将軍」


ノルガン=ヴェルライヒは疲れたように言って、ソファに腰掛ける。

対面に座るは真白い髭を胸元まで蓄えた老将であった。

元より色素の薄い頭髪もまた真白く、後ろに撫で付けられ、険しさのある目は柔和に細められていた。

長身のノルガンとは違い体格優れるというほどではなかったが、今なお筋肉は衰えず、武人としての圧を残していた。


「あなたにまでそのような態度を取られると気持ちを休める暇も無い」

「はは、随分と疲れているように見える」

「クリシュタンド元帥の後――その責任は私にはあまりに重いですよ。日々痛感します」


呆れたように言って、アレハが淹れた黒豆茶を口にする。

セレネ=クリシュタンドの時代は随分と長かった。

二十になる前からの数十年を彼女は元帥として過ごし、参謀部、軍学校の設立、軍編成の改革から魔術師を用いた魔導兵器運用まで、様々な改革を行っている。

引き継がなければならないことは膨大で、三ヶ月前に彼女が亡くなる寸前まで様々なことの相談に乗ってもらっていた。


しかし彼女がいなくなった今ではもはや、甘えられる相手もいない。

クリシェも一応話は聞いてくれるし、問題に対し驚くほどの解決策を見せてくれることはあるが、彼女の発想は奇抜なものが多く、そしてセレネ達の考える軍のありようとは大きく異なる。

彼女の意見はあくまで『天才アルベリネアが使いやすい』軍の理想型であるのだ。

平凡な将をシステムによって名将に仕立て上げ、安定を生み出そうとするセレネ達の考え方とは基本的に真逆であった。


集権と分権――クリシュタンド姉妹の考え方は真逆で、そしてこれからの時代に求められるのは後者であろう。

安定を見せる大陸においては、もはや大きな戦は起きていない。

喜ばしいことではあったが、軍としてみれば経験が不足してくるということだ。

統一歴も五十年に至り、平和になった世界ではノルガンから少し下までが戦を経験した最後の世代。

これからは戦を経験したことも無い人間達が将軍へと選ばれていくことになる。

そんな彼等に前時代的な、膨大な経験と高い能力を求める中央集権的な軍構造を残すことは酷であった。


最初から英雄として生まれる人間など、一握りの中の一つまみであろう。

多くの英雄は運に恵まれ経験を積み、確かな力を手に出来たからこそ英雄になり得たのであり、ノルガン自身それを実感している。

ノルガンにとって大陸統一戦争が最後の戦、その戦場でのキャリアは軍団長で終わっていた。

己が仮に今将軍として戦場に立ち、どれほどやれるかと問われて、父達の戦った名将達と五分に渡り合えると自信を持って口には出来ない。

己の才覚は人より優れると確信しながらも、それを裏打ちするための経験が明らかに不足しているとノルガンは感じていた。

ノルガンの後の世代はそれ以上であろう。


「クリシュタンド元帥には多くのことを教えてもらい、多くのものを残して頂きましたが、私に全て理解出来ているかと言えば怪しいもの。……とはいえ、やってみる他ないのですが」

「悩むことは若者の特権だな」

「お忘れのようですが、私も今では随分な老人ですよ、レーミン将軍」


苦笑するとノルガンは窓の外に目を向ける。

彼女の住まう屋敷の方に。


「……元帥を任されたものの、本当は今なお、アルベリネアの時代でしょう。何故クリシュタンド元帥はあのお方に元帥の位をお譲りにならなかったので?」


今なお美しきアルベリネア。

手合わせをしたこともある。兵棋演習を行ったこともある。

相手にもならない、というのはあのようなことを言うのだろう。


未来永劫曇る事なき輝かしき武勲。

衰える事なき図抜けた才覚と、異常なほどの知性。

――ただ才覚のみで、大陸を統一した神の御子。


ノルガン程度では影すら踏ませぬ存在であろう。

だからこそ、今もなお彼女が舵を取っていないことが疑問であった。


「クリシェ様がどのような方かは君も知っているだろう」

「ですが――」

「あの方は大陸統一戦争にて、アルベリネアとしてのご自身に終止符を打たれた。……それだけのことだ」


黒豆茶に口づけ、アレハは目を閉じる。

それから真っ直ぐとノルガンに視線を向ける。


「……名に誓ってはくれないか。君を信頼して、その胸に留めておいてもらいたいことがある」

「名に……?」


ノルガンは言葉の真意を確かめるようにアレハを見つめ、少し考え。

その目を真っ直ぐと見返すと、頷き、この名に誓いましょうと頷いた。

ありがとう、とアレハは頭を下げ、告げる。


「女王陛下とクリシェ様……いずれお二人は、今のお立場から退かれるおつもりだ」

「まさか」

「……クリシェ様ではなく君にこうして元帥の地位が与えられたのも、王宮議会の制定もそれを前提としたものだよ」


ノルガンは驚愕を顔に浮かべ、すぐに表情を引き締める。

彼の中にあった疑問が氷解していくように。


不可思議ではあった。

アルベリネアと同じく、女王はまさに王国において完全なる指導者であった。

あらゆる問題に対し、常に明瞭なる解決を。

相談役すら必要もないだろう。

そんな彼女が議会を作ると聞いた時には王宮にも混乱があり――


「お二人は新たな時代を生きるもの達へ時代を明け渡すつもりでおられるのだ」


アレハは目を細め、窓の外を眺めた。


「……これまで縛られてきた全てから解放されるために」










肩高で八尺の巨躯はもはや、九尺に等しく。

大きくなった翠虎の前で、変わらぬ少女は硬い櫛でその毛並みを手入れする。

首からは小さな小袋を提げて、身につけるのはエプロンドレス。

美しい銀の髪から覗く紫の瞳はどこか暗く、その美貌には影が差したよう。

翠虎はぐるるぅ、とその鼻先を近づけ、まるで気遣うように小さな体に擦りつけた。

少女は微笑む。


「……えへへ。大丈夫ですよ、クリシェはどこも悪くないですから」


言って、その額に櫛を当て。

それから少女は体を静かに押しつけた。

凶暴で知られる翠虎は大人しく身を伏せ、されるがままに。


「クリシェ様」

「……もしゃもしゃ」


そんな彼女に声を掛けたのは一人の老人であった。


「お仕事ですか?」

「ええ、少し元帥閣下とお話を」


女王陛下は王城か、とそちらにすこし視線を向け、アレハは髭を撫でてクリシェを眺める。


「……どうにも、浮かない顔に見えますね」

「え、えと……そんなことは……」


クリシェはその目を左右に揺らし、アレハは苦笑する。


「丁度、鈍った体をどうにかしたいと思っていたのですが……どうでしょう? 久しぶりに私と軽く、付き合っては頂けませんか?」


そして、腰の長剣を軽く叩いた。

クリシェは驚いたように目を見開き、少し迷った素振りを見せ。

けれどしばらくして、いいですよ、と頷いた。


「もしゃもしゃに手合わせしてくださいって言われるの、なんだかすごく久しぶりですね。一時期はクリシェ、うんざりするくらい付き合わされましたけれど」

「ははは、確かに。しかしたまには良いでしょう。かわいい部下の頼みです」

「もしゃもしゃはもう将軍でクリシェの部下というには語弊があると思うのですが……」


少女は立ち上がると近づき、アレハの髭を手に取り弄び、今日ももしゃもしゃです、と楽しげに微笑む。


「じゃあクリシェ、ちょっと剣を取ってきますね。ぐるるんのお散歩ついでにくろふよのところでしましょうか」

「ええ」


それから少女は屋敷の中へ戻っていき、アレハは側の翠虎の額を撫でる。


「……たまには気晴らしも良いだろう」


告げると分かっているのかいないのか。

ぐるるんはぐるるぅ、と、いつものような唸り声を響かせた。

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