第4話【幼女神は天に帰る】
「む、それはできん相談なのじゃ。なぜならば帰る場所への帰り方がわからんからじゃ」
幼女はかぼちゃを食べる手を止めることなく何でもないようにとんでもないことを言い出した。
「マジかぁ! だけど僕にだって都合ってものがあるからずっと君の面倒をみることは出来ないよ」
「そう言うな。おそらく神力の不足が原因だと思うからお腹いっぱいになればもしかしたらなんとかなるかもしれん」
「それはどのくらい食べればなるもんなんだ?」
「それはわからん。とにかくもっと美味いものを希望する」
「うーん。甘みのあるものでまだ畑に植えてるものってあったかなぁ……」
僕はどうにかして帰ってもらうために次なる食べ物を探し始めた。
「オクラ、アスパラ、パプリカ、きゅうり、ナス、トマト、玉ねぎ」
圃場に植えてあるものを片っぱしから思い出すが甘みのあるものが思いつかない。
「のう、あそこにあるしましまの丸いものはなんじゃ?」
ぽこのその一言で僕は自分で食べるためだけに植えていたスイカのことを思い出した。
「あれはスイカといって皮は食べないけれど中の赤い実は美味しく食べられるものだよ。ただ、これは売り物にするつもりではなかったので僅かしかつくってないんだ」
「そんなに美味いのか? ならばたくさん食べれるように大きくして食べようぞ。そら、おおきくなあーれ」
幼女が気の抜けたような言葉を唱えると目の前のスイカがみるみるうちに直径2メートルくらいまで大きく成長した。
「これならばお腹いっぱいになるやもしれぬな」
「――たしかにこれならなるかもしれないけれど、先にお腹をこわさないか?」
僕がべつの心配をしてるそばから風魔法でスイカを切り分けて目を輝かせながら口にい頬張った。
――数十分後にはすっかり皮だけになったスイカの残がいが転がるだけになり満足気な幼女の姿だけが目の前にあった。
「ふぁあ、満足したのじゃ。これならばなんとかなるやもしれん」
幼女はそう言うとまたよくわからない歌を歌いだした。
「私の身体は重いけど気持ちと魔力はまんたんだ。あがれあがれてんまであがれ」
歌う最中から幼女の身体が光を帯びて宙へと舞い上がる。
「うむ。そなたのおかげで魔力が戻ったようじゃ。なんとか元の世界に戻れそうじゃから礼をせねばならぬな。なにがよいかのぅ」
幼女は宙に浮いたまま少しの間考えていたがニンマリと笑って言った。
「そうじゃ。さきほど見せた3つの魔法を使えるようにしてやろうぞ。われは失敗したがうまく使えば役に立つやもしれん」
ぽこはそう言って手のひらから光の玉を生み出し僕へ向けて投げつけた。
「うわっ!?」
僕は反射的に目を覆ったが光の玉は僕を包み込んだようで閉じたまぶたをすり抜けて光を感じていた。
ものの数秒で光は消えたらしく僕が目を開けるとそこにはぽこの姿はなくなっていた。
「白昼夢でもみていたのか?」
僕はそうつぶやいて気を取り直そうとしたが側に落ちていた巨大なスイカの皮の残がいに現実であったと認識した。
『――さきほど見せた3つの魔法を使えるようにしてやろうぞ』
「まさかな」
(この現実世界で魔法など存在出来るわけないだろう)
僕はそう自分に言い聞かせながらも試してみたくて思わず叫んでいた。
「くさ、くさ、みどりのくさぜんぶ、ぜーんぶぬけちゃいなさーい」
(うわっ 中二病か僕は……)
だれも見てないことにほっとした僕はふと目の前のカブ畑に目をやると。
すぽぽぽぽぽぽん
さきほどニンジン畑でおこった事と同じことがカブ畑でもおこった。
「うわわわわっ!? 僕のカブ畑がぁ!」
本当に魔法が使えたことよりも大事に育てていたカブがすべて抜けてしまったことに衝撃をうけて僕はその場に呆然と立ちつくしていたのだった。
「つ、つかえねぇ。これは永久に封印だな」
その惨状を見て僕はそう固く誓ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます