第199話 魔界も色々大変

 私は気になった事をエヴァンとクロエに聞くことにした。


「二人は結婚してる…の?」

「我々ですか?してまッ」

「してないわ♡」


 食い気味に言うね。見てよエヴァンの方を。クロエの方を二度見してるよ。


 本当に可哀想だなエヴァン、心中お察しするよ。


「もしかしてクソ犬から何か聞いたの?気にしないで♡アイツの言ってる事なんか全て嘘よ♡」

「確かに愛は一方通行かもしれませんが結婚しております!我々は夫婦です!」

「止めてエヴァン。私と貴方は結婚してないわ」

「待て待て」

「だからセレアちゃん♡いつでもカモンよ?」

「何がカモンなのか分からないけど遠慮しておくよ」


 カモンとか無いだろ。エヴァンが可哀想だよ。ハンカチ取り出しちゃったよ。


「そういえば犬とは知り合いなのですか?」

「ペットだよ」

「待ってください。あの猛犬をペット?」

「うん。私のペットだよ。飼い犬」

「ほら、言ったでしょ?セレアちゃんはクソ犬を飼いならしてるのよ」


 魔界でアイゼアは危険人物判定されてるのか?猛犬って、結局は皆アイゼアの事を犬判定してるんですね。


 もうアイゼアが魔界でどう扱われているのか気になったぞ。

 アイゼアって有名なケルベロスなんだよな?


「クソ犬は魔王様に忠実だったのよ。だからあのクソ犬が貴方に寝返るなんてあり得ないのよ」

「確かに最初は威圧的な態度だったけど、アイゼアはまだ幼いケルベロスだったから眠らせたら好きにしろって言われたからさ」

「それでペットにしたんですか…。本能的に勝てないと察したのかもしれませんね」


 毛皮にするのかとか言われたな。最近、アイゼアは生意気だからな。

 一回ボコボコにしてみたい気持ちもある。


 どうやら二人はアイゼアと同期で、魔王にこき使われていたらしい。

 二人からすれば魔王に忠実だったアイゼアが私に寝返りするなど想像つかなかったらしい。


「魔王ってどんな人なの?よくよく考えたら知らないんだけど」

「魔王様は働きすぎたら死ぬっていう事を知らない人です。部下を常にこき使うんですよ。逆らおうと思っても、あの人に勝てる訳もなく…無理難題を虐げられても従うしかありません」

「とんだクソ上司だなぁ。良く裏切らないでおこうって思えるね」

「……強い者に惹かれるのが魔族ですから」

「それに給料とか色々良いのよ♡」

「結構現金だね。察してはいたけども」


 アイゼアが言ってた通り、随分こき使われてるみたいだな。

 やはり上はクソな場合が多いのか?クソなやつほど上に行くんだよな、前世の上司もそうだったよ。


「二人は魔王を尊敬してるの?」

「していますよ」

「私もしてるわ」


 まぁだよな。流石に尊敬はしてるか。一応、スパイとして動いてもらうけど、裏切られる事も視野に入れておこう。


 何があるかは分からないし、アイゼアと違って契約をしていない以上、信頼しすぎるのも良くない。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 二人と別れて街に戻る。まだ騒いでおり、酒を飲んだ人達が踊っている。

 結構時間が経ってるはずなんだけどな。


「長くやってるなぁ」

「おや、戻ってきてたんですか」


 私に話しかけたのはアイザックさんだった。

 アイザックさんも片手にビールを持っており、顔が少し赤くなっているのを見るに結構飲んでいるようだ。


 アイザックさんはお酒強いはずなんだがなぁ。


「どんだけ飲んだんですか」

「さぁ?分かりませんね」

「水飲みますか?」

「いえ…大丈夫ですよ。なのでその右手に展開されている魔術を何とかしてください」

「そうですか。残念です」


 酔いが覚めたみたいだな。

 私は二人の事を伏せて、森の中を探索していたと話した。


 流石に魔族と何度も関わってるってなると、魔族側の人だと疑われそう。

 人間側の人なんですけどね。魔族との関わりが深くなるのは何故なのか…。


「エルトンさんとはどうですか?」

「中々上手くいってますよ。不安な事があるとすれば、帰ってきた時に毎回血だらけな所ですかね。怪我をしてても本人の血か分からないんですよ」

「まだ暗殺業やってるんですかあの人。凄腕ですよね。あの人の手により何人の政治家が空に行ったんですかね」

「無事に帰ってきてくれるならいいんですよ」


 この世界の男の人は不憫だな。いや、妻が独特なのか。

 リオンは女運が無いし、アイザックさんは妻が帰ってきたら血だらけだし、エヴァンに関しては妻が自分とは結婚してないと言い張り女に目がないとか…乙女ゲームだよなここ?


 深く考えないほうが良さそうだ。


 アイザックさんと話し込んでいると後ろから重い何かが乗っかってくる。

 酒臭く、私を愛しの娘と呼んでいるからラエルだと直ぐに分かった。


「愛しの娘〜!何処に行ってたんだい?可愛いねぇ〜!」

「離れて」

「そんな冷たいことは言わないでくれ。ほら、お父さんと一緒にお酒を飲もうじゃないか」

「ちょっと待ってください。セレア様に酒を飲ませればここは一帯消えますよ?」

「別に酔った勢いで街破壊しないよ!」


 何で私は野蛮人みたいなイメージがついてるんですかね。

 汚名返上とか考えた方が良さそうかな。


 酔った時の記憶が全く無いから分からないけど、物とか結構壊したりしてるのだろうか。

 尚更酒には気を付けよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る