第77話 消えた大切な人

 王城にセレア様が向かってから、三十分経った。

 まだ三十分…いや、もう三十分だ。


 うーん。でも、王城にはルイス殿下も居ますし、向こうで話が弾んでいたり?


 私はセレア様に何かあったのではないかと、そう思ってしまった。

 何となく、背筋が凍るような感覚がする。


 私は不安になり、セバスチャンさんを尋ねる事にした。


「向こうで話が弾んでいるのでは無いでしょうか。魔道具アーティファクトの話となると、口が止まりませんからな」

「やはりそうなのでしょうか…」

「不安なら行ってみますか?」

「え?行けるんですか?でも、門の通過証が無いと中には入れないのでは……」

「あるんですよ。セレア様は覚えておりませんが、実はアルセリア家には王城の通過証があるんです」

「なら、それを使えば………」

「はい。でしたら、直ぐに馬車の準備をしましょう」


 セバスチャンさんは、馬車の準備をしに行く。

 セレア様…、所々ぬけてますよね。まぁ、そういう所も好きなんですけど♡


「準備が出来ました。向かいましょう」


 私はセバスチャンさんが、用意してくれた馬車に乗る。

 セバスチャンさんも、護衛という事でついてくることに…。

 戦えるってセレア様から聞きましたが…どうなんでしょうか。


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 私は四方八方歩き回るが、何一つ見つからない。

 扉も窓も抜け道も、何一つ無い。


 どうしたもんか。蝋燭の火が予想以上に早く消え始めている。

 もうすぐで蝋燭の火は消える。


 私は消えかけの蝋燭を、床に置き眺める。

 自分が何も出来ないことを自覚する。


「………最初は余裕だったのに、今は必死になって出口を探す。私は弱いなぁ」


 人は不安になると気が弱くなるのだろうか。

 私は自分の顔を思い切り叩き、正気に戻す。


 何うだうだ言ってるんだ!灯りが無くても、生きてけるんだから!

 私は蝋燭の火が消えても、何か無いかと探す、察していた通り、あるわけもなく絶望を感じる。


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 王城に着くと、騒いでいる人が沢山いる。

 何があったんだろう?


「一体何があったんでしょうか」

「聞いてみますか」


 話を聞くと、どうやら王城内で事件が起こったらしい。


「実は、セレア様がこちらにいらした時に手紙が光り、魔法陣を描いて消えてしまったんです」

「ワープ魔法…ということですか?」

「はい。王宮魔法使いに確認してもらいましたが、跡形もなく、情報を掴むことすら出来ませんした」

「それで消えたのは、セレア様だけですか?」

「はい。申し訳ありません」


 深々とお辞儀をする門番の人。

 私はセバスチャンさんと目を合わせて、どうするか話し合う事にした。


「どうしますか?」

「一旦屋敷に戻って魔力探知機を持ってきましょう。手がかりが掴めるかもしれません」


 セバスチャンさんが、魔力探知機を取ってくる間に私は、闇魔法を使って魔法の跡を探す。

 魔力の跡が残るはずだ…魔法陣に使われていた魔力と同じ魔力を探せば……………。


 集中して、魔力を探すと同じ魔力を持った人間が歩いているのが分かる。

 位置は王都の外で国境近くの辺境だ。


 遠すぎる…その距離をワープさせる魔法陣を作るなんて、相当のやり手だ。

 セバスチャンさんが帰ってくると、私は位置を伝えてそこに向かうことにする。


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 長い間馬車に揺れて、到着する。

 魔力を辿って、歩いていくと路地裏に着く。


 路地裏を歩くが、目立ったものはない。

 この下にあの魔力を持ってる人が居るはずなのだが………。


 セバスチャンさんが床の音を聞いて、コンコンと叩く。


「ここに空間があります」


 セバスチャンは床に爆裂魔法を放つ。

 えっ、えっ!?まさかの爆裂魔法使いなんですか…。


 大きな音が出るはずなのだが、セバスチャンさんが防音魔法を使い音を防ぐ。

 どうやら本当に凄い人のようだ。


 セバスチャンさんが魔力探知機でセレア様の魔力を探すが、反応がない。


「魔力を切断する場所に居るのでしょうか」

「完全に隔離されているって事ですね」


 セバスチャンさんと侵入して、中を探索する。

 中は殺風景で何も無い。


「静かですね。誰も居ないような感じがします」

「いや…………そこに一人おります」


 セバスチャンさんが指を指した方向を見ると、靄が、歩いているのが分かる。

 認識阻害系の魔法でしょうか。高度な人が沢山居るなぁ。


「もっと高度な人間がいる可能性が高いです。だとすれば、完全な透明人間が居てもおかしくありません。警戒しましょう」

「ですね。セレア様が居るとすればここの、深く…または人がよく通る場所かと思われます」


 私の時も、地下の奥深くに監禁されていたからセレア様も同じではないだろうか。

 セバスチャンさんと地下を歩いていくと、背後から声がする。


「おやおや。何をしているのですかな?」

「……!?貴方は一体」

「気配が完全に消されていた。相当なやり手のようですなぁ」

「おっと、私には戦う意思はありませんよ」


 この人は、この事件に深く関わっているはずだ。

 私の感がそう告げていた。


 私は、この人に勝てるのだろうか。

 魔力量を見ると圧倒的な差がある。私が敵う相手じゃない。


 ここからどうすれば……………。

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