第42話 文化祭の出し物準備

 自宅にて、私は研究室にパンを五個持って籠もる。

 籠もる理由は明白…文明祭の為に魔道具アーティファクトを作らないといけないからだ。


 学園長に呼び出された後、在校生に放送で文明祭の大規模化が始まった事を説明した。

 それを聞いて、在校生は歓喜していたようだが、生徒会の者は絶望したような表情で聞いていたそうだ。


 それは私も同じ…何せ生徒会の出し物はこの学園を代表するもの………だが!我々生徒会は困っていたのだ!


 オリカさんやリオンが出し物を決めてくれていた為、元はあるが…それをどうやって大規模にするのか。


 何一つ決めれていなかった。その為、出し物の案を考えてこなかった罰として私は大規模化の為に命をかけろと脅された。


 理不尽だぁ!だが、私には策があったのだ。前世の知識を全て振って誰もが楽しめるものにしよう。


 我々生徒会の出し物は前世じゃ定番だったお化け屋敷だ。

 ここではお化け屋敷は定番ではないらしい…魔法があるならそういう怖い演出とか出来そうだが、そこまで高度な事は学生だけでは無理らしい。


 お化け屋敷を大規模化だから…色んな要素を出せそうだな。

 ただ、部屋がなぁ…狭いから要素を詰めれないな。


 そういや費用は全て国負担なんでしたっけ?それならどっかの廃墟にワープできる鏡を置いて移動できるようにしたら、広くなるんじゃないのか?


 廃墟とか…あるのか?王都付近だから分からないけど、国境付近ならありそうだな。


 私はそう思い、学園長に手紙を送る。手紙の返事が帰ってくるまでお化け屋敷に入れる魔道具アーティファクトを考えるとしよう。


 お化け屋敷と言えば、砂嵐のテレビから人が出てきたり、足を掴まれたり、四方八方、手が飛び出たり…後はこんにゃくが顔に当たるとかか?


 お化け屋敷と言っても要素を詰めすぎては、駄目だ……。いつ来るかなという恐怖感を与える為にはタイミングと来てくれた人の考えを読み取るべきなんだろう。


 前世、親戚にお化け屋敷の職員だった人が居た。

 お化け屋敷について色々語られた…当時は自分には関係ないと思っていたが、まさかこんな所で活躍するとな。


 親戚の人曰く、演出はワンパターンだけでなく何個も作ると言っていた。

 お客さんやその日によって変えていくそうだ。


 いつ来ても別の体験ができる、それが大事だと言っていた。


 お客さんが予想していた場所からお化けが出てきてもお客さんが想像してたより『大きい』、『怖い』を出す事でお客さんに『恐怖』を覚えさせれると言っていた。


 ついでで、全く予想していない場所から出す事も大切だと言っていた。

 それらを組み合わせて考えると、びっくり要素は何個も作っていて悪くないかもしれない。


「どこからか、声が聞こえてくるとか…人影が見えたとかもいいな」


 廃墟が使えるなら、そういう演出を出してもいいだろう。


 テレビからおバケが出てくる…。テレビは魔道具アーティファクトとして作ればいいか、何も映らないから、色々考えなきゃな。


 ここにニュース番組とか無いし、カメラはあるから映像を撮って映し出すことは可能か。


 要素は良いとして、人数が足りないんだよな。生徒会の皆がずっとお化け屋敷に残るわけにはいかないからなぁ。


「…うちの屋敷の皆を呼ぶか」


 当主だし、別に大丈夫だよな?

 アルセリア家には案外人がいる。しかも仲は良好。

 メイド一人一人仲が良い為、雇用がしやすかったりする。


 メイド長のメリーと、執事長のセバスチャン、コック長のロッテル、庭師長のナーセルに聞いてこよう。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 私は研究室から出て〇〇長という名が付いている計四名を呼び出した。

 四人は「うちらの当主がまた何か厄介事を持ってきたぞ」と言わんばかりの顔で私を見る。

 悪かったな。


「この老いぼれに何用ですかな?」

「突然呼び出された時はビックリしましたよ…」

「セレア様が又もや面倒事を持ってきたようですな」

「セレア様、面倒事に私達を巻き込もうとしていませんか?」

「一旦その軽蔑するような目を向けるのを止めて、当主の言葉に耳を傾けようよ!」


 この四人は私が幼い頃から使えている古参だ。そのせいで親みたいな感覚で私に接してくる。


「実はね、文明祭でお化け屋敷をする事になったんだ。廃墟を借りようと思っているんだけど、学園内でも生徒会の計六名だけでお化け屋敷を回すには人手が足りなくて……」

「だから、メイドや執事、庭師やシェフのみなさんを使ってお化け屋敷を運営したいということですね」

「そういう事だ…どう?皆に呼びかける事って出来るかな?」

「俺は問題ないです。他の庭師の皆にも花だけでなく様々な事に挑戦してほしいですから」

「私達、メイドも問題はないでしょう。逆に喜んでやると思います」

「俺らは料理ぐらいしか特技が無いですが…お化けが居そうな雰囲気を作ることは出来ると思いますぞ」

わたくし共も、執事として力仕事は出来ますからね。老いぼれと言ってもまだピチピチですぞ!」


 どうやら皆は協力的なようだ。よかった…。これで人手不足は大丈夫として、後は廃墟問題と私の魔道具アーティファクト問題を解決しなければな。


 テレビはモニターを作ったことがあるし、作り方は別だが、似たような感じだしいけるだろう。

 人の声とかに関してはうちの屋敷の人を使えば問題ないな。


 よし!先が見えてきたぞ。

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