第40話 日に日に増していく愛

 テストの時間になった。

 この世界のテストは日本とほぼ一緒だ。高校の定期テストと言っていいだろう。


 科目は多いわ、問題は難しいわで私は前世の事もあり高校をまたやり直している感覚だ。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


 テストも無事?終わり、私は昼食を持って生徒会室に行く。

 リリアナとは生徒会室で食べる約束をしているからな。


「リリアナ、テストはどうだった?」

「難しいですが解けなくはなかったです。お兄様に勉強だって教えてもらってましたし」

「教えるのはリオンの方が上手いからな。私は人に何かを教えるのは苦手だ」

魔道具アーティファクトについては説明がとても上手ですよね。本業だからでしょうか」

「それだとリオンの本業が教師になってしまうよ」


 リリアナとそんな雑談を挟みながら、持ってきた弁当を開ける。

 私は料理が皆無な為、学園の食堂で食うか、弁当ならシェフに任せるのだが…今回は珍しく自分で作ってみたのだ。


 料理が全く出来ないからサンドイッチだけど。にしても、リリアナの弁当は美味しそうだ。

 私のものとの差が目に見えて分かる。流石はセントラ伯爵家、弁当も一流か。


「リリアナの弁当美味しそうだね。シェフも一流なら弁当もか…」

「え?これは、私が作ったんですよ?」

「…え?マジで?」

「はい!セレア様とせっかく昼食を共にするんですから、私をお嫁にしたくなる所を見せねばなりませんから!」


 ふんす!と意気込んだリリアナの言葉に私は唖然とする。

 リリアナってゲームのときも思ってたけど滅茶苦茶女子力高いんじゃないんですか?

 自分で何でも出来るなんて…対して私の弁当は何だ!


 ただのハムとキャベツとマヨネーズを組み合わせて作ったサンドイッチじゃねぇか!

 格差がひどいよ!お嫁?こんな夫に嫁いでくれるんならいつでもカモン!ですよ!


 前世も自炊なんてしてこなかったし、いつももやしでお金を奮発した時はカップラーメン…底辺の底辺だよ。

 自宅に帰ることもそうそう無かったし…。


「セレア様のお弁当も美味しそうですよ。いつも、サンドイッチなんですか?」

「いや、いつもはシェフが作ってくれるか、食堂で食べるかだから…」

「てことは今日は一体誰が……?」

「………………………自分です……………」


 恥ずかしさMAXな中、私は沈黙に紛れて小声で自分だと告げる。

 リリアナはそれを聞いて硬直した。


 そうですよね。皆言うもん、セレアは何でも出来るって、そんな事無いよ。人はできない事のほうが多いんだから。


 リリアナも私が料理できると思っていたのかもしれないが、私は出来ないよ!


「…これを、セレア様が?」

「うん………。幻滅した?そうだよね、私は今まで料理が出来ないなんて一言も言ってこなかったんだから、私が作れるのは材料を切ってパンに挟むだけのサンドイッチだけだよ」

「……………セレア様、交換しませんか?」

「はい?」


 真剣な眼差しでリリアナは私にそう言う。

 交換?圧倒的にそっちの方が美味しそうだけど交換するんですか?

 もしや米よりパン派?


「それは何故?美味しくないと思うんだけど…」

「セレア様が作ったんですよ?当然、食べないと♡そんな謙遜しないでくださいよ。セレア様が作ったと言うその事実だけでいいんです。どれだけ不味かろうが美味かろうが私にとってはセレア様が作った物が食べたいんです!」

「本当に良いの?味はあまり保証できないよ?」

「セレア様が作ったのならどうだって良いです。だって好きな人が作ったものを食べるんですよ?それは私の体が好きな人に作り変えられていくという事…私の体がセレア様が作ってくれたものになるんです♡」


 圧倒的な早口と長文で思考が追いつかないが、とにかくリリアナが私の料理が食べたいという事だけは理解した。

 不味かったら本当に食べなくても良いんだけど…。


 リリアナが私の料理を一口一口深く味わう様にして食べ進める。

 私はリリアナの料理を食べる。

 感想はもちろん―――


「美味い!お肉だけど脂っぽくないね。リリアナは料理の腕もいいんだね」

「えへへ?そうですか?セレア様に褒められると照れてしまいます♡」

「本当に美味しい…毎日これでも良いかもしれないな」

「それは求婚ですか?早くお嫁に来て欲しいといあ暗示…♡」

「落ち着いて、まだ、まだ先だから」


 リリアナは早く王子と婚約破棄したいのか、私と結婚したいのか私が紛らわしい言葉を言う度に反応する。

 ゲームの王子はこんな気持ちだったのかな。


 ゲームでは王子はリリアナの事を好いてなかったけど、私はリリアナの事を好ましく思っているからな。


 違いはそこかな…こんな可愛い子に求婚とか言われると照れてしまうのは普通だけどな………王子はやはり、普通じゃない?


「はぁ…♡セレア様のサンドイッチ美味しすぎます。セレア様、次から毎日作っては頂けませんか?セレア様が作った物で私が作り変えられる…♡」

「………時間があったらね…」


 リリアナの言葉に私は戸惑うが、リリアナがそんなに美味しいと言うなら作ってこよう。

 いつも早起きはしないタイプだが、推しの為とあらば早起きをするとしよう。


 休日は目が早く覚めるが、平日はそうでもないんだよな。

 リリアナがさっきからウネウネしているが、見てないふりをした方がいいのだろうか。


 まぁ、見なかった事にしとこう。

 リリアナの愛の重さと言うかヤンデレ度というか…日に日に増していっている気がする。


 結婚後とかどうなるんですか…。

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