第3話 冒険前の下ごしらえ
いきつけのよろず屋に来た、何せアタシの防具は僧侶服。言わば布のローブだからね、前衛に付くならこの防具じゃ不味い。
このよろず屋は品揃えは悪くないし価格も良心的だから安心。お店の店主こと綺麗なケミィさんも人の良さそうな人だったと思うし、いや人の良さそうなラミア族か。
以前にギートが商品に意味不明なイチャモン付けたら、ビンタされて店の外にぶっ飛ばされたもんなぁ。
それからこのお店に来ると腰が低くてワロタ。
最近はあまり来れてないけど前は、何度か来たことあるから覚えててくれてると嬉しいな。
アタシは回避技術はそんなに高くないし、今はソロだもん。
ダンジョンから帰る度にモンスターから受けた傷で服がボロボロ、エロ僧侶って言われちゃうよ。前はモンスターの攻撃は、ほとんどタンクのロイが引き受けてくれてたけどそうはいかなくなった。
お金に余裕があれば他の冒険者を雇うとかあるんだけどねー……おほほ。
「すみませーん」
「はーいって……あら? アナタは確かクソギートのところのお嬢ちゃんじゃないかしら?」
「はい、元ですけど覚えててくれてたんだ」
「そりゃ一度だけじゃなく何回も来てくれてたもの、お得意様のようなものよ」
紫髪のショートヘアーに上半身は薄いシャツを着てて、下半身は立派な蛇の『ラミア族』であるケミィさんが迎えてくれた。
さすがケミィさん、商売人の鑑だよ。アタシは事情を説明すると笑われた、ってか笑いすぎだよ。そりゃ回復魔法使えなくて今頃、僧侶から泣く泣く戦士に転職ってのは笑いどころかもしれないけどさ。
とりあえず防具を変えたいとは伝えたけど。
「いやー……アナタ面白い子ねぇ、気に入ったわ。そこのビキニアーマーで良ければ安くしとくわよ」
目に溜めた涙を手で拭いながらケミィさんは指差した、アタシはその方角を目で追うと確かに良さげなビキニアーマーが壁に立て掛けてあった。深紅の赤色でなにか凄みを感じる。歴戦の防具感がすごい、呪われてなさそうでよかった。
「う、うーん」
「なーに? 不満かしら?」
「そうじゃなくて……恥ずかしいかなって」
「そう? この辺じゃ結構な性能を誇るんだけどね」
「マジで?」
「えぇ……ホントよ、ダンジョンでの掘り出し物でね。人族専用で小柄な人向けだから中々買い手がつかないのよね」
装備品には稀だけど種族が限定されてる装備品がある、他の種族が装備しようとすると何故か上手く付けれないんだよね。付けても異様に重たいとかさ。
このビキニアーマー、実際に触って調べてみたけど確かに性能は良さそう問題は見た目かな。
実際にこういう格好した人族は居ないとはいわないけど一部でみんな他の種族とか、あとはオーガみたいな女性か筋肉ガールしか着けてないんだよねぇ。
アタシのスタイルは悪くない方だと自負してるからやらしくなっちゃうよ、自信過剰だって? ありがとう。
いや、もちろん他の装備してる女性達も似合ってて素晴らしいとはおもうけどさ、なんか種類が違う気がする。
「なーんか……押し付けようとしてない?」
「ま、まさか、いやねぇこの子は……あはは」
アタシがジーっと見つめるとケミィさんは先程の笑いとは違って苦笑しながら目線を逸らす、コイツは嘘つきの反応だ。
これは交渉の余地ありと大幅な値下げを要求してやった。
こんな際どい物、人族にいつ売れるかわかんないよ?
アタシに売っときな、ってか売ってください。
「やれやれ、お嬢ちゃんの勝ちね。わかったわ、じゃその値段で手を打ってあげるわ。 新しい冒険のお祝いってことでね」
「ありがとう、ケミィさん。 あとついでにだけどさ」
「なぁに?」
「手に付けれる小盾みたいなのある?」
「ちょっとまってて」
ケミィさんが店の奥に行ってしばらくすると戻ってきた、手には鉄製の小盾を持って。
さすがのアタシも皮製の小盾から、もうワンランク上げたいのが本音かな。これから前衛職になるんだし、少しでも防御力は上げておくに越したことはない。
「どうかしら? 鉄だけど見た目より軽いし頑丈よ。今のお嬢ちゃんが付けてる盾よりはグレードが上がると思うわ 」
「そりゃすごい」
ケミィさんから小盾を受けとると試しに付けてクルっと回ってみる。うん、悪くないね。
問題は値段だ値段、コレは高そう。
「コレはいくらするの?」
「コレはさっきのビキニアーマーみたいに値下げは無しよ」
そう言って提示された金額は、中々なお値段。
でも手持ちと昨日貰った金貨でギリギリ買えるみたいだ。
袋から金貨を出して数えると店のカウンターに置いた、ケミィさんがしっかり数えて頷く。
「まいどありぃ」
購入したビキニアーマーを装備すると不思議と力が湧いてくるような感覚がするし、とても体が軽い。
めっちゃ恥ずかしいけど根性で耐える。
店を出るアタシに愛想良く手を振ってくれるケミィさん、なんだかんだサービスしてくれたのでこれからもご贔屓にはしたい。
でも収納袋をくれるとは思わなんだなぁ。
革で出来た見た目は普通の袋だが見た目以上の物を収納できる優れもの、容量はバラバラでアタシが貰ったやつは沢山入りそう。
武具屋に置いてある打撃系の武器はアタシが持ってるメイスより良いものは無いと言われたので収穫無し、モーニングスターとか欲しかったな。
ん?剣じゃ駄目なのかって?
いやー……こんなこと言うと凶暴とか言われそうだけど、斬って倒すよりも殴り倒す方が好きなんだよねぇ、あの打撃で敵を仕留める感覚が何とも言えない。
武器の強さやレア度などはダンジョンでドロップする方が性能が良いことが多く、絶対とは言わないがほとんどがその傾向にある。
その代わりドロップする確率が低く、ドロップアイテムの中には売れば一生暮らせるほどのレアアイテムもあるとか。
道中ですれ違う人達から割りとビキニアーマーを見られて、やっぱり恥ずかしかったけどなんとか慣れたぜ。
幾らでも見ておくれ。
街の門を出て槍を持った門兵のおじさん達に挨拶。
一応、門の入口には二人組の門兵が居ることが多くてこの街もそれにあてまはる。
「やぁ、ダンジョンに行くのかい?」
「うん、そのつもりだよ」
「そうか、ん? んー……」
門兵のおじさんの一人が片手に顎に手を当てて何やら考えてるような仕草、アタシの噂でも思い出したのかな? でも服装が違うしその可能性は極めて低いと感じる。
「君は……戦士だよね? 」
「そのつもりだけど? 」
こんな格好したのなんて戦士以外ほとんど居ないでしょうに。おじさんはそれを聞くと残念そうなリアクションをしてて、何? 踊り子とでも言えばよかった?
「行き違いだな、ついさっき獣人の子達のパーティーが門を出たんだ、戦士が欲しいとか言っててね」
言い忘れてたけど、この世界には様々な種族が生きてる。
ドワーフ、エルフ、猫人族、犬人族、竜人族、他にも沢山居るが忘れたので割愛。
彼等と人族は仲良くやっていってるようで今のところ種族同士の大規模な争いとかは起きてないらしい。
マジかー。朝ギルドに行った時はボードの募集は無かったのに、商店行った後にもう一度ギルドに行けば良かったな。
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