第4話
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ありがとうございます。
昨日ので最後でした。
今日の昼までに、今まで私が送った手紙をメール箱に入れてください。
その後最終確認のため、なるべく早くヌーヴの橋の下へ来てください。
明後日頃、絵画を受け取りに伺うでしょう。
あなたを必要としたものより
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終わったんだ。
右手に持つ手紙と、左手に乗せた最後の札束。
全体がドス黒い色で染まってしまった。
ふと自分の窓を見ると、死体があちらこちらに散らばった絵が、ガラス越しに見えた。凄惨な絵にも関わらず、俺は達成感を感じた。
リビングへ急ぎ、お金の横に積み重なった手紙の束お無造作につかんだ。
大丈夫、昨日までは枚数を確認していた。今日の分を合わせて全部だ。
再び外へ出て、メール箱の中へ押し込む。
後は待ち合わせだ。
最後まで依頼主の要望に応えることまでが仕事だ。
気前が良ければもっと報酬をもらえるかもしれない。
もつれそうな足で、指示された場所へ向かった。
さあ、もう何日も睡眠不足で、人間としてもぎりぎりの生活を送ってきた。
体力も限界に近い。
だが、いくら待てど、依頼主は来なかった。
使いの一人すら寄越してこない。
もう立っていることすらままならなくなってきた俺は、諦めて帰路へついた。
貰うべき金はもらっているし、些細なことなら絵画を渡す時でいいだろう。
そこからどう家へ戻ったのかはよく覚えていない。
メール箱を確認すると、手紙はもう残っていなかった。
リビングに入ると、途端に異臭に気がついた。
何日も放っておき、腐った食べ物、カビや絵の具の匂いが混ざり合い、充満している。よく考えれば、自分もシャワーを長い間浴びていない。
しかし、アトリエはともかく、リビングもこんなに散らかっていただろうか。
今まで気にも止めず、まるで感じなかった不快さが一気に襲ってきた。
だが、もう呼吸する気力もない。
ゆっくり休んでからじっくり掃除や報酬の用途を考えよう。
数々の作品に囲まれたまま、赤黒いアトリエで気絶するように眠った。
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