第2話
翌朝、
飛び起きてみると、約束通りメールボックスの下に、3つのブリキ製容器が置いてある。
苦労して運び込み、蓋をとってみると、赤、黒、青の絵の具が並々とそれぞれの容器に満たされていた。
昨日中に仕上げた下書きへ、早速筆を走らせる。
ドロッとした感触の液体が視界を埋めていく。
こんなに筆が滑らかに滑るのはいつぶりだろう。
久しぶりに長時間集中したせいか、いつの間にか夕暮れになっていた。
締め切りまではまだ日数があるというのに、随分早く終わってしまいそうだ。
深夜2時くらいだろうか、
描きあげた絵の目の前であぐらを描き、見上げる。
3色で塗り上げられた、単純ながらもおぞましい気持ちを掻き立てられる俺の絵画。
ふんだんに眺め終わった後、慎重に窓際に置いた。
あちらこちらに絵の具が飛び散っているが、今夜はここで寝たほうがよく寝れそうな気がする。
適当に道具を押し退けてスペースを作り、段ボールを枕がわりにして眠りについた。
意識が落ちる寸前まで、脳裏には首吊りの女が只々左右に揺れ動いていた。
ベタついた感触が頬にこびりつく。寝返りを打った際に絵の具がついたのだろうか。
ただでさえ日当たりの悪い窓から漏れてくる淡い光が、昼過ぎだということを知らせてくれる。
もう一眠りするかと目を閉じかけた時、わずかな隙間から赤い旗が立っているのが見えた。
まさか、
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ありがとうございます、
ですが、もう少し油絵のように、絵の具を重ね塗りしてください。
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自分の作品にケチをつけられるのは腹たつが、まあこれは依頼主の趣味の範囲だろう。
依頼を受けた以上、依頼主の要求を満たすことを優先するべきだ。
太めのブラシを手に取り、青色の絵の具を根元までどっぷりとつけ、橋の上を塗りたくった。
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