傷だらけの騎士を手当てしたら、惚れられ、連れていかれ、そして溺愛されました。お願いですからやめてください!?
第15話、目を覚ました男はちょっとめんどくさいので、黙らせてもらっても大丈夫ですかクラウス様?
第15話、目を覚ました男はちょっとめんどくさいので、黙らせてもらっても大丈夫ですかクラウス様?
朝日が、とてもまぶしいと感じてしまったのは、多分自分だけなのかもしれない。
いつもの夢を今日は珍しく見なかった気がしたルーナが目を開け、欠伸をして交互に視線を向ける。
隣に居るクラウスは気持ちよさそうに眠っており、何故かルーナの服の袖を掴んで離そうとしていない。
振り払ってみようかなと思ったルーナは行動を移してみたのだが、クラウスの力は予想以上に強かった。
呆れた顔をしながら、今度は反対側の、ケガをしている方に視線を向けてみる。
ルフトと呼ばれている男のケガの確認をし、熱が出ていないか確認。
「……うん、これなら後少しで目が覚めそうだな」
自分の事を天使だのなんだの言っていたこの男のケガはなんとか大丈夫と確認したルーナは起き上がりながら身体をゆっくり伸ばし、骨をうならせる。
二人を起こさないようにしながら軽く体の運動をしていると、それに気づいたシリウスが欠伸をしながら起き上がった。
「よう、早い目覚めだなルーナ」
「おはようクソ神父……良く眠れた?」
「だいぶな……鎮痛剤もどきみたいなやつはあるか?」
「作れば数分で出来るけど、やっぱ少しケガしてたの?」
「ああ……この男、腕は良かったからな」
ため息を吐きながら寝ているルフトに視線を向けながら、ルーナが作る薬を要求してくるシリウス。
ルーナはシリウスを手招きし、近くに座らせると、軽く身体をチェックする為にに触り、擦り傷などを確認する。
「神父がうまく隠してきていたし、遠目だったからボクも気づかなかったけど、腹部のここと、足のここ、打撲してるね。痣が出来てるから数日痛いよ?」
「そうしなきゃ、止められなかったからな」
「……強いのはわかっていたけど、ボクが知る限り、こんな感じになる神父は新鮮かもね。それぐらい、ルフトってやつ、強かった?」
「……トワイライト王国っつーのは、昔は武力を力を入れている国だったという事は知っている。俺の姉さん……姉貴がよく話してた」
「……一度でいいから、クソ神父のお姉さんに会ってみたかったな」
「……」
シリウスには姉がいる――いや、居たと言って良い存在だ。
ルーナはシリウスの姉がどんな人なのか、全く聞いた事ないのだが、その事を話すと必ず黙ってしまうからである。
言葉がなくなってしまったシリウスにこれ以上何を問いかけても絶対にその件については話す事はない。長年一緒に居た仲だからこそ、知り尽くしている事だ。
「服めくって。とりあえず、塗り薬はしとく」
「ああ、頼む」
「頼んだのはボクだからね、気にしなくていいよ」
向こうに行くように仕向けたのはルーナだからこそ、少しだけ負い目がある。
服をめくったシリウスの打撲痕に塗り薬を簡単に塗った後、すぐに飲めるように用意してある約束で鎮痛剤もどきの飲み薬を完成させた。
「それ飲んで今日は一日安静。お酒も運動もダメ」
「……酒もだめ?」
「ダメ」
飲酒がダメだという事に少しだけ落ち込んでしまったシリウスの姿に、ルーナはフフっと笑いながら彼の肩を軽く叩き、クラウス達がそろそろ起きるだろうと思って視線を向け、硬直した。
そこには、膝をついて神に祈るような体制をしているルフト・コンティネイトが姿を見せたのである。
驚いた顔をして硬直しているルーナと、同じようにその姿を見て驚いているシリウスは固まったまま目をそらす事が出来ない。
と言うよりこの男は何をやっているのだろうかと、まず問いかけたいぐらいだ。
「え、えっと、あの……」
どうしたら良いのかわからず、とりあえず声をかけながら返事を待とうとするのだが、うまく言葉が出なかった。
慌てるように手を軽く振り回していた瞬間、突然大きな手がルーナの手を鷲掴みにするように掴んできたので、ルーナ、そしてシリウスの二人は驚いた顔をして目の前のルフトを見る。
彼の顔はすごく、輝いていたと言って良いだろう。
「て、天使様!!」
「「……は?」」
突然、ルーナは目の前の男に天使様と言われてしまい、返答が出来なかった。
やはりこの男はどう見ても怪しくて、そして胡散臭い匂いがするのは、自分たちだけなのだろうか、と。
しかし、曇りなき瞳が輝いているので、間違いではないと思いたい。
青ざめた顔をしながら一歩後ろに下がりたかったのだが、目の前の男はルーナの手を強く握りしめており、下がらせないようにしている。
これは非常にまずい状態ではないだろうかと、青ざめた顔でルーナは隣に居るシリウスに視線を向けたのだが、そこにはシリウスの姿がない。
めんどくさい、と言う気持ちになったシリウスはルーナに任せて逃亡したのである。
(あ、あのクソ神父ゥ!!)
ルーナは改めて、育ての親である男、シリウスに恨みを持ったのである。
「やはり、夢ではなかった……あなたは、天の使いである天使、様なのですよね!?」
「……ええー」
「傷を治し、優しく私に笑いかける姿は、とても素敵で、綺麗で、可愛らしくて……私の心はあなたに鷲掴みにされてしまいました!!どうか天使様、この哀れな私をお許しください!!」
「……」
何を言っているのか全く理解できないルーナは思わずクラウスが寝ている方向に視線を向けると、クラウスは既に起きており、そしてルフトの姿を見てドン引きしている姿があった。
ルーナはクラウスに問いかける。
「……あの、クラウス様」
「……なんだ、ルーナ」
「……黙らせてもらっても、大丈夫ですかこの人?」
笑いながらそのように発言したルーナに肯定したクラウスは拳を握りしめ、そのままルフトを容赦なくぶん殴る光景があったのだった。
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