第8話 オタクはどこにいるか

よく昔子供の頃ってさあ、田んぼとか土手とか入って、ザリガニとかダンゴムシとか捕まえたりして遊んだじゃん。


なんでそんな話するかと言うとさ、今日も倉庫作業で、珍しく物凄い残業だったから、11時まで働いてたのよね。いつもなら9時45分に帰るんだけどね。


そしたらさ、僕と似たり寄ったりのモテなさそうな男性が数名集まってんだよ。僕が初めて見る、11時からの世界だよね。その時間には、深夜勤務の人たちが集まって仕事をしているようだけど、どう見ても僕と似て、河原の石を裏返したらいるような大人しい虫のような男たちばかりなのさ。


それで思い出したんだよ。そういやさ、身体の弱い弱者である虫たちはさ、石の裏に隠れてよく生息していたなあって。


僕たち陰キャはさ、こう、夜勤の大人しい仕事をして、目立たないように生きていかないと、昼間元気に遊んでいる陽キャの迷惑になるじゃない?だからさ、僕たちはさ、どこにいるかと言うとさ、夜行性の人間として生きているんだよね。


同志がそこに生息していてびっくりしたよ。でも、最近発見したのは、その夜の仕事だけじゃないんだ。もっと面白い生息地があったんだよ。


兵庫県神戸市三宮の駅前にね、【さんプラザ】と【センタープラザ】という古い商業施設があるんだよ。ここに僕は楽器屋があるから散策してたんだけども、びっくりしたよ。側溝の奥の方をのぞき込んだ様な世界だったよ。


カードゲームが好きなモヤシみたいな男たちや、フィギュアが好きな肥満の男性たちが、そこにはイッパイいて、盛況していたんだよ。美人もイケメンもそこにはいず、ただただ敬愛する漫画のキャラクターを信奉する鏡を見ない僕たちのような生き物がそこにはただただ沢山いたよ。


僕は何だろうな、こういうと変なんだけど、安心したよ。僕はね、友達が少なくて、孤独なんだけど、こんなところに仲間と言うか、自分に似た人間がいる!とびっくりしたよ。嬉しかったよ。


だからね、寂しかったらね、みんな、側溝の奥をのぞき込んだり、大きな石を裏返してみるような冒険をしてみよう。きっと、自分に似た人たちがいる。面白いよ、発見は。

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