42 夏焼 季節の終わりに

「いやー! めっちゃくちゃ緊張したなぁ」

 俺が笑って誤魔化しながらクラスに戻ると何人かが声をかけてくれたから、バンドやってよかったなって思った。


 焼きそばの屋台はとっくに解体されていて、機材を業者に返却したところみたいだ。俺たち有志の参加者は体育館の清掃参加が必須だからクラスの片付けにはあまり協力できなかった。なんか、あっという間に終わっちまったなぁ。


 俺は藤間先生が机を運ぼうとしているのを見つけて駆けつけた。藤間さん、おっさんだからな。腰悪くしたら困るだろ。


 手伝ってからクラスに戻ると、打ち上げの話になった。行く人は屋台があった場所に集合らしいけど、俺は帰んなきゃ。叔父さんは「今日くらい遊んできなさいよ」って言ってくれたけど、俺は自分の決めた当番をちゃんとやりたかったから。

 雅也とか梢たちは、そりゃ行くよな。あれ?


「冬川は打ち上げ行かないのか?」

 少し意外だった。最近、冬川が山本だけじゃなくて雅也とか小林とも喋るようになって俺、嬉しかったから。俺が聞くと、冬川は肩をすくめた。


「僕は大人数の集まりって苦手だから行かない。夏焼こそいいの?」

「ああ、今日当番だからな」

 俺はそう返事をして、クラスのみんなに「またなー!!」って声を掛けた。雅也も、山本も、小林も、田口さんもみんなキラキラしてて、俺、それ見てるだけで超楽しいよ!


 なんとなくの流れで、俺は冬川と駅に向かった。風と夕焼けが眩しかった。俺はその眩しさに、さっきのライブを思い出して、ふふふと笑ってしまった。

「さっきさ、緊張して足震えちまったよ」

「嘘だあり得ない」


 冬川はバッサリと否定してきた。俺は思わず向き直ってしまった。

「俺だって人間だぞぉ! でも冬川がガンバレって叫んでくれたから、ちゃんと全部弾けたぞ! ありがとな!」

「あぁぁ、やっぱり心の声が出てたのか」

「それ、自覚ないのか……?」

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