39 夏焼 改めて よろしくな

「映画の世界って現実に起こるんだな」

「映画って言うのは、だいたい現実をモトに作られているからねぇ」

 闇鍋会が終わった後、俺と叔父さんはススキノの路地に腰掛けて夕焼けに染まる空を見ていた。まだ雲が高い位置にあるけど、夏の終わりを感じさせる匂いがする。


「ま、弁護士とのやりとり終わるまで、しばらくウチで過ごしなさい」

「ほんとに迷惑じゃないの?」

 俺は叔父さんを見上げてきいた。叔父さんはクスッと笑った。

「ないない。叔父さん迷惑なんて感じてない」

「ありがとうございます……」

「急にどうしたのよ」

「ううん。俺って結局子供なんだよなって」

「あはは、自覚があるだけマシよ。じゃ、帰るわよ、カイト」

「はーい」

「私の愛の巣のルールを説明してあげる」

「パンツ脱ぎっぱなしにするなとか?」

 俺が冗談半分でそう聞くと、叔父さんは急に真顔になった。

「……もしそんなことをしたら……」

「しません。絶対」


 そんなこんなで俺は叔父さんの家で過ごすことになった。名前は今の所変わらず、夏焼海斗だから、よろしくな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る