20 冬川 心当たりの場所へ

 次の日は雨だった。それで暑いからムシムシしている。やだなぁ、暑さとペタペタ感っていうの? 電車の中じゃ他人の濡れた傘がひっつくし、雨の日は学校休みにしようよ。面倒くさい……。


 教室に入ると、シトシト雨のせいかどことなくみんな静かだった。そして僕は自分の席についてギョッとした。隣の席に、鞄がかかっている。


 え? なにあいつ、学校来てるの?


 僕が驚いてると、雅也と山本くんがやってきた。夏焼の鞄を見下ろして、僕と同じくらい神妙な顔をした。

「あいつどしたの? いつも以上にうざったく登場したと思ったらすぐどっか行っちまった。 冬川なんか知ってる?」

 雅也が首を傾げて言ってくる。こわいんですけど。っていうか僕と夏焼が仲良しみたいになってるの嫌なんですけど。


「風邪らしいけど、え? こいつ学校来てるの?」

「うん。ジャージ抱えて出てった。"今日はサボる!"って言って、鼻たらしながら」

 山本くんが半眼で告げた。「なにしてんだか」と雅也が続けた。

「たぶんだけど……、ちょっと見てくる」


 僕はそう言って席を立った。昨日の今日でしかもこんな天気で、わざわざジャージに着替えて朝から運動なんて風邪引いた奴がするわけない。図書室にジャージで行く必要は無い。軽音部の練習場になってる第二音楽室は鍵が必要だ。じゃあきっとあそこだろうな。


 僕は足早に廊下を進んで一階に向かった。そして校舎の隅にひっそりとある保健室のドアをそっとあける。

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