4 夏焼 十五分休み

 は~! 

 二時間目から体育ってめっちゃ腹減るけど、やっぱ身体動かすの最高だよな。試合は負けちまったけど、俺はなかなかいいチームワークだと思ったぞ。……冬川の顔面にボールぶつけちまったのは、悪かったって思ってるよ。うん。


 制服に着替え終わった俺はネクタイを緩めて、うちわで仰ぎながら教室へ戻った。生ぬるい風が首筋を撫でていく。

 なんか、こう。ぬるいってのは落ち着かないな。


 俺は教室に真っ直ぐ戻るのを止めて、階段を駆け下りてエントランスに向かった。今は中休みだから次の授業まで十五分余裕がある。ちょっとコンビニに行って冷たいドリンクを買いに行こうと、足を速めた。次第に駆け足になってしまう。


 朝より熱量を増した太陽が、校舎を飛び出した俺の肌を焼いていく。そうだ。週末はプールに行きたい! 誰を誘っていこうかな。やっぱ雅也達かな。でも俺が声かけて、あいつら来てくれるのか? 


 コンビニでキンキンに冷えた麦茶と、ついでに棒アイスを買った。うちわは背中側のベルトに差込んでおく。ちょっと祭り気分でなんだか嬉しかった。急いで食べないと溶けちまうってことで、俺はまた早足で校舎に戻った。アイスってさ、購買に置いてないんだよ。置けばいいのにな。


 エントランスに戻る途中だった。既に形の崩れかけた棒アイスと格闘していた俺の視界に、駐車場側に歩いていく冬川が入り込んだ。他に見慣れない奴らが三人。違うクラスっぽいな。なんせウチの高校、クラスが十四もあるから三年間いて顔と名前の一致しない奴なんてたくさんいる。


 そのどこの誰かわからない奴が、ウチの冬川に何の用だろうって、俺は少し気になった。だってあいつ、どこかよそよそしかったし。あいつの友達とか知らねぇけど、この十五分休みにわざわざ教員しか使わない駐車場に行くってさ、怪しいじゃん。


 これであいつが無双して、漫画みたいにワルたちが泣きながら逃げてったら超おもしろくね? あいつ俺より背も低いし、運動部とかじゃ無いからなんか細っこいし。そういうやつが喧嘩強いって最高じゃん。……その逆だと困るから見に行くんだけどな。決して好奇心とかじゃないぞ! 同じクラスの一員として、心配だから見に行くんだ。次の授業、視聴覚室で藤間先生の地理だから遅刻したくねぇし。

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