隣人は壁から挨拶を
アスタ
第1話 出会い
ドンドン ドンドン ドンドン バタバタ
ドンガラガッシャーン
隣の部屋から音がする しかも結構大きな音
‥付け加えるなら人が転ぶ音と物が落ちる音
何度も 何度も 何度も
耐えかねて、俺は目を開けた
「‥うるさいなぁ‥ 何時だと思ってるんだ
隣の人」
ベッドに置いてあるスマホを手に取り見てみると午前2時だった。
彼の名前は花形周人(はながた しゅうと)
春から大学生になる18歳である。
明日には大学の入学式が控えている周人は、春から始まる大学生活の準備をしていた。
引っ越し、事前課題、SNSでの同じ大学に通う人との交流etc‥
慣れないことばかりをした心身は悲鳴を上げ
睡眠を求めていた
(こっちは大学の準備で疲れてるから寝たいんだけどなぁ でも夜中の2時にこんな
うるさい音を出す人に音出すなって注意するとめんどくさいことになることは明白だ、、大分ストレスにはなるが我慢しよ‥)
そう考えた周人はもう一度目を閉じて夢の世界に歩みを進め‥ようとした
違和感
なにかがおかしい
ふと音のする方に首を向ける
ベットの置いてある壁側から音が聞こえる
まだ音は聞こえる ドンドン バタバタ
ドンガラガッシャーン
そう、いるはずのない隣人の部屋から
大学入学に伴いこのマンションに引っ越しをした周人、最寄りの駅まで徒歩十分 大学からも商店街からも近い 周人にとってはこれ以上ない優良物件であった。
そのため、高い家賃であることを覚悟したが、考えていたより安い家賃で済んだ。
周人が今住んでいる部屋だけが異様に安かったのだ。
他の部屋はこの好条件ならば標準的と言える程度の家賃であった。
「なんでこんなに安いんですか?」
その理由を不動産屋、大家に聞いたが目を逸らすだけで何も答えてくれなかったが、
あるいは答えたくなかったのかは知らないが
事故物件ではないと保証してくれたため、
家賃の安さに惹かれ、深く考えずにこのマンションに引っ越してきた。
そのことを深く後悔することになるのだが
周人の背中に冷たい汗が流れる。
(‥‥いやいやいや 勘違いだろ 幽霊とか
ないない 科学的にありえないし
ないないない 大丈夫 大丈夫!
大家さんが勘違いして隣は居ないとか
言ったんでしょ! 事故物件ではないって
不動産の人も言ってたし
だから寝よう!!今すぐ寝よう!!!)
ドン!!!
「ぴぇぇぇぁぁ、、」
一際大きな音が壁から鳴った
すると女の声が聞こえてきた。
「あ〜、やっべ 壁に穴空いちった
怒られるかなぁ 怒られるよなぁぁ
まぁでも隣の人居ないって大家言ってたし
大丈夫大丈夫! カレンダーで隠して‥
もし隣のやつが来たらそいつを口封じ
すれば‥イケル! イケるぞ! さすが私
我ながら天才と褒めてやりたいわ」
「よし!そうと決まれば隠さねば
ふんふん〜🎵カレンダー🎵 カレンダ〜🎵
カレンダ〜で隠しちゃお〜」
馬鹿みたいな歌をご機嫌にやりながら空いてしまった穴にカレンダーを貼ろうとする女
いわゆる汚部屋といえる程度には汚れている女の部屋、その床にペットボトルが転がっていることは必然であり、ペットボトルを踏んでしまいバランスが崩れることも容易に想像できるだろう。
「うわっっとぉぉ!??」
結果的にどうなったか
空いた穴から女の上半身が周人の部屋に出てしまっていた
「いったたた‥‥あ」
2人の目が合う 気まずい瞬間である
最初に口を開いたのは女の方であった
「えーーっと‥‥‥
こんばんは 怪しい者じゃないよ?」
「怪しすぎるだろうが!!!!」
隣人は壁から挨拶を アスタ @ken317
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